2 / 25
物語の始まりと終わり
sideA 中編
しおりを挟む
中学に入ると、私たちは初めて離れ離れを経験した。あいつは親の進めで私立中学に入学した。
私はそのまま地元の公立中学へと進学した。
あいつはサッカー部、私は吹奏楽部に入部し、お互いに忙しくなるとだんだんと会える機会も減って行った。
スマホは2人とも持たせてもらっていなかったし、今まではほぼ毎日あっていたので、連絡手段など必要なかった。だから、会えなくなると途端に距離が離れる。
それでも、たまに時間を見つけては家の前で立ち話をしたり、近所のコンビニまでデートしたりと僅かであるが付き合いは続いていた。
中学時代で特に記憶に残っているのは中学2年生の冬。
私たちは同じ月に生まれたけれど、私の方が5日誕生日が早い。
雪国の極寒の冬の日。日も落ちて、真っ暗な中にしんしんと雪は降り続けていた。
部活からの帰り道、私の家へと続く曲がり角に人影が見えた。
不審に思って警戒しつつ通り過ぎようとした時、目に飛び込んできたのは頭と肩に雪が積もり、耳が真っ赤になったあいつだった。
「どうしたの?!」
私は叫んで駆け寄った。
「どうしても渡したいものがあって」
あいつはそう言った。
「これ」
目の前に差し出されたのは赤いリボンでラッピングされた白い袋。
「1日早いけど、誕生日おめでとう」
予期していなかった出来事に私が固まっていると、あいつは照れたように言い訳を並べ立てる。
「ほら、俺一応彼氏だし、1番にお祝いしなきゃと思って、そしたら部活帰りのタイミングしかないと思ったけど、なかなか帰ってこないし。明日は朝から練習試合だからーー」
「開けていい?」
あいつの言葉を遮って私は聞いた。
あいつが頷くのを見てリボンを解くと、中にはデニム生地にブルーの花が付いたカチューシャと白地にハート柄のシュシュが入っていた。
私が小学生の頃好んでいたものに思わずふっと笑みがこぼれる。
今はもうこういったデザインのものは使わないけれど、私が好きだったものを覚えていてくれた事が嬉しかった。
私が笑ったのを見て、プレゼントを気に入って貰えたと思ったのか、あいつはクシャッと笑った。
私が1番好きなあいつの笑顔だった。
あの時貰ったカチューシャとシュシュは今も私のジュエリーボックスの中で眠っている。
翌日は部活が休みだったため、私はショッピングモールに行き、タオルを買った。ブルーとレッドの2色。サッカーを真剣に頑張っているあいつが部活で使えるようにと思って選んだ。
これが、あいつとすごしたラストの誕生日だった。
それからお互いに部活や勉強が忙しくなり、だんだんと会う頻度は減って行った。
翌年、私は親の仕事の都合で、中学卒業と共に東京へ引っ越した。
中学3年生の誕生日は、受験で東京にいた。
引っ越す前にあいつの家に母と挨拶には行ったものの、ギクシャクして当たり障りのない会話しか出来なかった。
スマホがメッセージの着信を告げる。
相手は母からだった。
内容はゆみさんとランチに行く日の日程。ちょうど部活が休みの日だったため、即答でOKの返信をする。
ゆみさんと会うのはちょうど2年ぶり。私はこの春、高校3年生になった。
あいつが来るかは分からない。
もし、会うのだとしたら、私たちは何を話すのだろうか。あの甘酸っぱい、恋とも呼べない時を過ごしてから2年。そもそも私たちはいつまで付き合っていたのだろう。
私はそのまま地元の公立中学へと進学した。
あいつはサッカー部、私は吹奏楽部に入部し、お互いに忙しくなるとだんだんと会える機会も減って行った。
スマホは2人とも持たせてもらっていなかったし、今まではほぼ毎日あっていたので、連絡手段など必要なかった。だから、会えなくなると途端に距離が離れる。
それでも、たまに時間を見つけては家の前で立ち話をしたり、近所のコンビニまでデートしたりと僅かであるが付き合いは続いていた。
中学時代で特に記憶に残っているのは中学2年生の冬。
私たちは同じ月に生まれたけれど、私の方が5日誕生日が早い。
雪国の極寒の冬の日。日も落ちて、真っ暗な中にしんしんと雪は降り続けていた。
部活からの帰り道、私の家へと続く曲がり角に人影が見えた。
不審に思って警戒しつつ通り過ぎようとした時、目に飛び込んできたのは頭と肩に雪が積もり、耳が真っ赤になったあいつだった。
「どうしたの?!」
私は叫んで駆け寄った。
「どうしても渡したいものがあって」
あいつはそう言った。
「これ」
目の前に差し出されたのは赤いリボンでラッピングされた白い袋。
「1日早いけど、誕生日おめでとう」
予期していなかった出来事に私が固まっていると、あいつは照れたように言い訳を並べ立てる。
「ほら、俺一応彼氏だし、1番にお祝いしなきゃと思って、そしたら部活帰りのタイミングしかないと思ったけど、なかなか帰ってこないし。明日は朝から練習試合だからーー」
「開けていい?」
あいつの言葉を遮って私は聞いた。
あいつが頷くのを見てリボンを解くと、中にはデニム生地にブルーの花が付いたカチューシャと白地にハート柄のシュシュが入っていた。
私が小学生の頃好んでいたものに思わずふっと笑みがこぼれる。
今はもうこういったデザインのものは使わないけれど、私が好きだったものを覚えていてくれた事が嬉しかった。
私が笑ったのを見て、プレゼントを気に入って貰えたと思ったのか、あいつはクシャッと笑った。
私が1番好きなあいつの笑顔だった。
あの時貰ったカチューシャとシュシュは今も私のジュエリーボックスの中で眠っている。
翌日は部活が休みだったため、私はショッピングモールに行き、タオルを買った。ブルーとレッドの2色。サッカーを真剣に頑張っているあいつが部活で使えるようにと思って選んだ。
これが、あいつとすごしたラストの誕生日だった。
それからお互いに部活や勉強が忙しくなり、だんだんと会う頻度は減って行った。
翌年、私は親の仕事の都合で、中学卒業と共に東京へ引っ越した。
中学3年生の誕生日は、受験で東京にいた。
引っ越す前にあいつの家に母と挨拶には行ったものの、ギクシャクして当たり障りのない会話しか出来なかった。
スマホがメッセージの着信を告げる。
相手は母からだった。
内容はゆみさんとランチに行く日の日程。ちょうど部活が休みの日だったため、即答でOKの返信をする。
ゆみさんと会うのはちょうど2年ぶり。私はこの春、高校3年生になった。
あいつが来るかは分からない。
もし、会うのだとしたら、私たちは何を話すのだろうか。あの甘酸っぱい、恋とも呼べない時を過ごしてから2年。そもそも私たちはいつまで付き合っていたのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
君の声を、もう一度
たまごころ
恋愛
東京で働く高瀬悠真は、ある春の日、出張先の海辺の町でかつての恋人・宮川結衣と再会する。
だが結衣は、悠真のことを覚えていなかった。
五年前の事故で過去の記憶を失った彼女と、再び「初めまして」から始まる関係。
忘れられた恋を、もう一度育てていく――そんな男女の再生の物語。
静かでまっすぐな愛が胸を打つ、記憶と時間の恋愛ドラマ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
もうあなた達を愛する心はありません
賢人 蓮
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。
差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。
理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。
セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる