生まれる前から隣にいた君へ

紫蘭

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物語の始まりと終わり

side I 前編

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 生まれる前から、あいつは俺の隣にいた。
 俺より5日早く生まれたあいつと俺は、本当に兄弟のように育った。
 2人とも早産だったせいか、体は小さくて、特に俺より予定日が遅いはずだったのに俺より先に生まれたあいつは、本当に小さくて、「俺が守ってやらないと」なんて思っていた。
 実際には、俺より歩くのも話すのも早くて、どちらかというと俺が手を引いてもらっていたらしい。
 それでも、「女の子には優しく」と母親から教え込まれたおかげか、俺にとってあいつは守らなければいけない人だった。
 同じベッドで眠ったことも、一緒にお風呂に入ったこともある。
 俺よりも小さくて俺よりも弱いのに、俺よりも活発で小さな体でくるくると走り回るあいつは、俺の人生の全てだった。
 あいつといるといつも楽しくて、幼稚園に入っても、小学校に入っても、あいつの隣は俺の定位置だった。
 同級生の間でもそれが当たり前に見られていた。そのはずだったのに、小学校高学年になるにつれて、「付き合ってるん時でしょ」とか「公認カップル」という扱いをされるようになっていった。
 からかわれて、訂正するのにも嫌気がさしてきて、それでも仕方の無いことだと耐えていた時、俺がいないところでいつも以上にからかわれて、傷ついた表情をしているあいつをたまたま見かけた。
 このままじゃダメだと思った。
 でも、今更距離をおけるほど、俺たちの関係は浅くない。

 放課後、あいつを近所の公園に呼び出した。物心着く前から、何百回と通った公園。
 何も言わずに2人でブランコに腰かける。
 あいつはゆらゆらとブランコを揺らしながら、じっと地面を見ていた。
 なんて切り出すか考えながら、俺もゆらゆらとブランコを揺らす。
 何も変わらない。そう自分に言い聞かせる。
 ただ、俺たちの関係を表す言葉が変わるだけ。俺たち自身は、何も変わらない。
 それに、「世界で1番大切な女の子は誰?」と問われたら、迷いもなく答えられる。
 それはもう、そういうことではないのか。

 覚悟が決まった時には、空はもう茜色に染まっていた。
「なぁ、いっそ俺たち付き合わないか」
 その言葉を待っていたかのようにあいつは顔を上げた。
 ブランコから降りて、あいつの正面に立つ。
「俺、いろいろ考えたけど、お前と距離を置くとか考えられないし、付き合うならずっと隣にいたお前がいい」
 頬を赤く染めて笑ったあいつは、やっぱり世界で1番大切な女の子だった。
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