生まれる前から隣にいた君へ

紫蘭

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物語の始まりと終わり

sideI 中編

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 あいつと付き合い始めて少しだった頃、両親から私立中学に通わないか?と打診された。
 1番に聞いたのはあいつと一緒に通えなくなるのか。あいつの家はどうやら中学受験は考えてないようだった。
 迷っている俺にあいつは「変わらないよ」と言って笑った。
「徒歩5分圏内に住んでるんだし、会おうと思えばいつでも会える。それに、サッカーやりたいんでしょ?」
 受験予定の中学はサッカーの名門で、俺の憧れている選手を何人も輩出した学校だった。
「おまえはどうすんの?中学」
 公立の中学に通うなら、答えは一択のはずだった。
「あざみ野中に行く」
 帰ってきた言葉は完全想定外の学区外の学校だった。
「私もやりたいこと、出来た。音楽がやりたい。だから吹奏楽部の強いあざみ野中に行く」

 こうして、俺たちは別々よ中学へ通うことを決めた。
 私立受験が決まった俺は、塾通いが始まり、あいつは習い事が忙しくなった。
 放課後にデートに行ける回数も次第に減っていった。
 それでも、近所のショッピングモールにたまにデートに行くのが楽しみだった。

 中学に入ると、会えない日々はより増えていった。
 入学したての頃は、新しい環境に慣れるのに必死だった。
 ようやく慣れてきた頃に、部活が本格化した。
 ヘトヘトになって家に帰ったら爆睡。そんな生活をしているとテスト期間がやってきて、どんどん難しくなっていく勉強に悲鳴を上げていたらあっという間に日々が過ぎ去っていく。
 たまにあいつに会えても立ち話をするぐらいの時間しか取れなかった。
 でも、あいつの情報は親を通して入ってくる。
 吹奏楽部でクラリネットを始め、休日もないぐらいに部活1色の毎日らしい。
 2人ともスマホは持っていなかったから、帰宅時刻がたまたま被らなければ、話す暇さえない。
 中学1年生の時にデートに行けたのは、お正月とお互いの誕生日付近の2回だけだった。

 中学2年生になると、部活でも主要メンバーとなり、より時間は減った。
 それでも、あいつの誕生日だけはと部活帰りに寄り道をしてプレゼントを買いに行った。
 あいつが好きそうなものを探してショッピングモールを歩き回り、あいつがよくカチューシャをつけていたことを思い出した。
 あいつの好きな色は、海のようなブルー。
 昔好きだと言っていた勿忘草に似た花が付いたカチューシャを見つけ、「これだ!」と思った。
 レジに持って言ってから、最近髪が伸びていたことを思い出す。
 もともとショートヘアだったのが肩ぐらいまで伸びていた。カチューシャより可愛いゴムとかの方がいいのだろうか。
 迷った末に、レジ横にあったあいつに似合いそうなシュシュとカチューシャの2つをラッピングしてもらった。

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