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新たなる日常②

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 放課後は一目散に図書室に向かい、時の歌を歌う。
 時の館に着くと、レーゲルとリートとのんびりお茶をして、そのあとピアノを弾く。
 時の館にはりつが持ち込んだ楽譜が置かれるようになった。
 ここに来た頃は全然回っていなかった指も、1カ月もすれば感覚を取り戻し、以前のように弾けるようになった。
 最近は過去に弾いたことのある曲だけでなく、新しい曲にも挑戦してみようと、レーゲルと共に選曲をしている。
 特段発表会の予定もないし、時の館で演奏するだけなので、好きな曲にしようと思い、候補は大好きなドビュッシーの曲に絞った。 

 2時間ほど練習をするとちょうど帰る時間になる。
 日によっては30分程で練習を切り上げ、レーゲルと共にお菓子作りをする。
 一緒に作るようになって、時の館で出てくるお菓子はよりりつの好みに近づいた。
 レーゲルがりつのほんのちょっとした反応に気づき、どんどん改良を加えているからだ。
 りつもブラウニーとジャム、シフォンケーキの作り方は教わった。
 ブラウニーに関してはは1人でも焼けるようになった。
 焼き方や混ぜる材料によって全く違った趣のお菓子になるのが面白く、今度の休日には自宅でも作ってみたいとりつは思っている。
 たしか、自宅の電子レンジはオーブン付きだった。
 昔は料理上手のりつの母親がオーブンを使っていろんな料理を作っていた。
 りつの誕生日にはお手製のケーキを焼いてくれていた。
 今ではなかなか使われる機会もないが、使えない訳では無いはずだ、とりつは思う。
 休日は相変わらず嫌いだし、早くすぎてしまえ、と思っているが、日々の生活がちょっとずつ変わっていっているように、自宅でお菓子作りができるようになれば、また何かが少し変わるような気がした。
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