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新たなる日常①
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初めてりつが時の館へ行ってから1カ月が経った。
心地よかった春の風も、だんだんとジトっとしたものへと変わっていく。
長袖だったりつの服装も、半袖へと変わり、袖口からりつの白くて細い腕が伸びている。
すっかり放課後に時の歌を歌うのも日常となった。
とっくの昔に楽譜なしで歌えるようになり、耳になじみすぎた結果、ついうっかり口ずさんでしまわないように気を付けるようになった。
この1カ月でりつの中で大きく変わったことと言えば、毎日が楽しみになったこと。
クラスメイト達と同じように放課後を心待ちにするようになったこと。ただ、クラスメイト達と違うのは休日が嫌いなこと。
ずっと平日であればいいのにとりつは思っている。
それから、自分の生活を豊かにしようという心持になったこと。
りつの母が仕事で朝いないのは一緒だが、以前みたいにトーストもしていないパンをかじるだけの朝食は辞めた。
朝起きるとまず、お湯を沸かして食パンをトーストする。
その間に顔を洗い、身支度を済ませる。
伸びっぱなしだった髪の毛がなんだか気になるようになり、パソコンで動画を見て、見よう見真似でヘアアレンジをするようにもなった。
最近では編み込みもできるようになり、髪型を見たクラスメイトにも声をかけられた。
身支度が終わると、母が作っておいてくれた朝ごはんを温め直し、紅茶を入れる。
紅茶はレーゲルに貰ったものだ。
時の館でいろいろな紅茶を試した結果、アッサムのミルクティーがりつのお気に入りになった。
時の館のようなティーカップは残念ながらないので、ぽってりとしたマグカップに紅茶を注ぎ、ミルクティーを作る。
トーストには、たっぷりのバターとレーゲルお手製のジャムを塗る。
これだけで味気のなかった朝食が一気に華やかになる。
焼きたてのトーストを嚙みしめると、じゅわっとバターのしょっぱさといちごジャムの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
1人のご飯は味気なくてつまらないとりつはずっと思っていた。
でも、それは自らつまらなくしていただけだ。
確かに誰かと食べるご飯のほうが美味しい。この紅茶もジャムも時の館とレーゲルとリートと食べた時の方が格段に美味しかった。
でも、ちゃんと工夫すれば、1人のご飯も少しは楽しいものになる。
自分の生活をモノクロにしていたのは自分自身。そのことにりつは気づいてから、りつは自分の生活を少しずつ変えていった。
朝食を食べ終えると食器を洗い、学校へ向かう。
編み込み、お団子、ポニーテールなど日替わりで違った髪型をするようになってから、クラスの女子との会話が増えた。
教室に入ると、「今日は編み込みなの?」と言った声がかかる。
時間があるときはクラスメイトの髪をいじることもある。
りつが教室の端で本を読んでいるだけだったことを心配そうに眺めていた担任の先生は、りつがクラスメイトと交流するようになってほっとしているようだった。
でも、りつがクラスメイト達と話すのはあくまで学校でのみ。
最優先は時の館なので、放課後に遊びに誘われても断っていた。
土日に遊びに行くほど仲良くなった子は、まだいない。
心地よかった春の風も、だんだんとジトっとしたものへと変わっていく。
長袖だったりつの服装も、半袖へと変わり、袖口からりつの白くて細い腕が伸びている。
すっかり放課後に時の歌を歌うのも日常となった。
とっくの昔に楽譜なしで歌えるようになり、耳になじみすぎた結果、ついうっかり口ずさんでしまわないように気を付けるようになった。
この1カ月でりつの中で大きく変わったことと言えば、毎日が楽しみになったこと。
クラスメイト達と同じように放課後を心待ちにするようになったこと。ただ、クラスメイト達と違うのは休日が嫌いなこと。
ずっと平日であればいいのにとりつは思っている。
それから、自分の生活を豊かにしようという心持になったこと。
りつの母が仕事で朝いないのは一緒だが、以前みたいにトーストもしていないパンをかじるだけの朝食は辞めた。
朝起きるとまず、お湯を沸かして食パンをトーストする。
その間に顔を洗い、身支度を済ませる。
伸びっぱなしだった髪の毛がなんだか気になるようになり、パソコンで動画を見て、見よう見真似でヘアアレンジをするようにもなった。
最近では編み込みもできるようになり、髪型を見たクラスメイトにも声をかけられた。
身支度が終わると、母が作っておいてくれた朝ごはんを温め直し、紅茶を入れる。
紅茶はレーゲルに貰ったものだ。
時の館でいろいろな紅茶を試した結果、アッサムのミルクティーがりつのお気に入りになった。
時の館のようなティーカップは残念ながらないので、ぽってりとしたマグカップに紅茶を注ぎ、ミルクティーを作る。
トーストには、たっぷりのバターとレーゲルお手製のジャムを塗る。
これだけで味気のなかった朝食が一気に華やかになる。
焼きたてのトーストを嚙みしめると、じゅわっとバターのしょっぱさといちごジャムの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
1人のご飯は味気なくてつまらないとりつはずっと思っていた。
でも、それは自らつまらなくしていただけだ。
確かに誰かと食べるご飯のほうが美味しい。この紅茶もジャムも時の館とレーゲルとリートと食べた時の方が格段に美味しかった。
でも、ちゃんと工夫すれば、1人のご飯も少しは楽しいものになる。
自分の生活をモノクロにしていたのは自分自身。そのことにりつは気づいてから、りつは自分の生活を少しずつ変えていった。
朝食を食べ終えると食器を洗い、学校へ向かう。
編み込み、お団子、ポニーテールなど日替わりで違った髪型をするようになってから、クラスの女子との会話が増えた。
教室に入ると、「今日は編み込みなの?」と言った声がかかる。
時間があるときはクラスメイトの髪をいじることもある。
りつが教室の端で本を読んでいるだけだったことを心配そうに眺めていた担任の先生は、りつがクラスメイトと交流するようになってほっとしているようだった。
でも、りつがクラスメイト達と話すのはあくまで学校でのみ。
最優先は時の館なので、放課後に遊びに誘われても断っていた。
土日に遊びに行くほど仲良くなった子は、まだいない。
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