40 / 67
第1章
40 守り人の一族 Ⅴ
しおりを挟む帰り支度をしていると、ラオス達が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま……、もしかして、もう帰るのか?」
「うん、だからみんなも準備して」
「分かった」
ラオス達は自分の荷物を取りに部屋へと消えていく。
「こんにちは! ─シャウ、もう帰っちゃうって本当?」
玄関の扉を開けたと同時に話しかけてきたミスリーに、シャウは頷いた。
「そうなんだ」
「えー、寂しいよー。もう一泊くらいしていけばいいのにー」
「そうしたいけど、街でも治療士不足しているし、魔物も出て退治しなきゃいけないから長居は出来ないんだ」
「そうなんだー。街も街で大変なんだね」
「うん。いつか魔物がいなくなるようになったらいいね」
「だねー。そうしたらわたしも街に遊びに行けるかも!」
「あはは。そしたらたくさん遊ぼう」
シャウもミスリーもそうならないことは現状では理解していたけれど、湿っぽくなるのは嫌なのでいつかの話をして明るく別れたかった。
ミスリーと話していたら、みんなの準備も終わったみたいで全員が集まっていた。
「じゃあ、行くか」
父さんのかけ声で全員家を出る。
お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、マークル叔父さんにミスリーも外塀の所まで見送ってくれるみたいだった。
全員で外塀に向かいながら、シャウはあらためて村を見回した。
ここにいる人全員で街の人達を護ってくれている。
それがとても有り難くて、うまく言葉には表せられないけれど、いつか恩返しが出来ればいいと思った。
村を見ているうちに外塀の扉に着いた。
マークル叔父さんが初めて会った場所まで案内してくれるとのことなので、言葉に甘えることにした。
この村までの道は迷路のような木々が覆い繁っていて、しばらく離れていた母さんも迷うかもと言っていたからとても助かった。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、会えてとても嬉しかった」
「こちらこそ、シャウちゃんに会えて嬉しかったわ」
お祖母ちゃんとお祖父ちゃんに順番に抱きついて別れの挨拶をする。
母さんもシャウと代わりばんこに抱き合って別れの挨拶をしていた。
最後にお祖父ちゃんが言ってくれた言葉がとても嬉しかった。
「また、来い」
「はい! また来ます」
「ほんとにまた来てね!」
「うん、またね」
ミスリーの言葉に元気よく返事を返した。
「それでは、お邪魔しました。失礼します」
父さんの言葉に全員が頭を下げる。
そして、外塀の扉を潜った。
「じゃあね」
「またね」
扉の中と外で手を振って最後の挨拶をすると、扉が閉まった。
シャウが寂しく思っていると、母さんが抱きしめてくれた。
「また、来ればいいわ」
「そうだね」
母さんと笑い合ってから、一度深呼吸した。
ここから先は魔物が棲む森。
油断していたら、命を落とす事だってあるかもしれない。
だから、気を引き締めて帰らなければいけない。
シャウの気持ちの変化に父さんは肯くと、マークル叔父さんに話しかけた。
「すまないが途中まで道案内よろしく頼む」
「気にしないで下さい。結界を見回るついでですから」
マークル叔父さんのおどける言い方に、見回る方がついでなのだろうと思った。
そして、僕たちに気を使わせないように歩き始める。
迷路のような木々が覆い繁る道なき道を進む。
そうして、昨日マークル叔父さんと出会った場所まで到着した。
「それでは、皆さん気をつけてお帰り下さい」
「マークルも気をつけてね」
「ありがとう、姉さんも気をつけて」
そして、マークル叔父さんはお辞儀をすると森の中へ消えていった。
ここまで運良く魔物と出会わなかったけれど、帰りも絶対にそうだとは限らないのでシャウは気を引き締めた。
周囲の気配を探りながら、気になっていたことを父さんに聞いてみた。
「父さん、魔物が変質した理由わかったの?」
「いや、マジルダ殿も分からないと言っていた」
「そうなんだ」
「ああ、マジルダ殿も魔物の変質については気になっていたらしいので理由を探してみると約束してくれた。そして何か分かったらマークル殿が知らせに来てくれるらしい」
「そっか、何か分かるといいね」
「そうだな。俺達も俺達で原因を調べるしかない」
父さんの言葉で魔物の変質については振り出しに戻って自分たちで調査して行くしかないのだと分かった。
どこから、何から調べればいいのだろう。
父さんの厳しい表情からも難しい事が窺える。
シャウが少し考え事をしていたとき、耳元で《シュッ》と音がした。
と同時にルティスに抱えられて横跳びされた。
シャウの目の端に映った黒い物体に身体が本能的に震えた。
視線の先に魔物が5体、音もなく出現していた。
その内の1体が鞭のように枝を伸ばして攻撃してきたようだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる