シャウには抗えない

神栖 蒼華

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第1章

41 魔物と遭遇

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「! ……───────」

シャウは愕然と目の前に広がる光景に驚愕と衝撃を受けて思考が停止した。

「シャウ!」
「っはい」

父さんの鋭い声に反射的に返事をする。

「ミイシアと一緒に少し離れていろ」
「はい」

固まっていたシャウはすぐに意識を切り替えた。
その間に父さんの腕の中にいた母さんが近寄ってきて、シャウは母さんを背に庇いながら魔物との距離をはかる。
母さんはまったく戦うことが出来ないので、この中では1番戦闘能力の低い僕が母さんを護る事になる。

魔物は5体。
対してこちら側で戦える者は父さん、ルティス、ラオス、イラザの4人だけ。母さんを護っているシャウは人数には入れられない。
人数的にとても不利だった。

それでも勝たなければ、死あるのみなのはわかっているので連携が重要な鍵を握る。

目の前にいるのは魔物化した大樹2体、魔物化したトントン2頭、魔物化したコクチョウ1羽だった。
魔大樹は見上げるほどの大樹で魔物化したため根が地面から離れ移動できて枝が鞭のように伸び縮みする。
魔トントンはかなり体が大きい方で人間の大人2人分くらいはあると思う。鼻は硬く大きくなって蹄も硬質化している。
魔コクチョウは爪や嘴が鋭く伸び、羽根が硬質化している。
そして当然のことながら、すべての魔物は呪いで全体が漆黒に染まっている。
魔物に触れれば、もちろんその場所は呪われその範囲が広ければ広いほど身体が動かなくなる。
だからいかに魔物に触れずに倒すかが大切である。

父さん達は腰にいていた真剣を構える。
シャウも真剣を構えた。
そして魔道具を稼働して全身を魔力で覆い、呪いが触れても大丈夫なようにする。
ただ、これも一瞬でも気が抜けたり、意識を失ったり、自身の魔力が尽きれば生身の身体を晒すことになる。


魔物が僕たちを取り囲むように動くのを父さんは鋭い目つきで見極める。

「ユリベルティス殿下、右の大樹の相手をお願いします」
「了解した」
「俺達が大樹を凌いでいる間にラオスは左のトントン、イラザは右のトントンを仕留めろ。絶対にミイシア達に近づけるな」
「「はい」」

父さんの指示に一斉に動き出す。
ラオスとイラザが動き出したのに合わせたように、魔大樹が枝を伸ばして攻撃してきた。
何十本と縦横無尽に迫り来る枝を父さんとルティスが避けながら、ラオスとイラザの邪魔になる枝は切り落とし、シャウ達の方にも届かないように枝を払う。
枝が伸びる隙間をぬって巨体をものともせずに俊敏に動く魔トントンがラオスとイラザに襲いかかる。
魔トントンは鼻と蹄が硬質化しているので受け止めると衝撃で骨が折れるだろう。だから避けて横から頭を落とすしかないのだけれど、避けようと動くたびに魔コクチョウが硬質化した羽根を飛ばしてきて動きが妨げられる。

まずは空を飛ぶ魔コクチョウをどうにかしなければならないみたいだ。
父さんはどうするつもりだろう。

「シャウ、魔コクチョウを撃ち落としてくれるか」
「はい」

父さんは僕に石礫いしつぶてで魔コクチョウを撃ち落とすことを指示してきた。
シャウは剣をしまい足下に転がる石を数個拾うと、母さんに少し離れるように伝える。
そして腕と足を獅子化してから、一度深呼吸した。
シャウの声に合わせて動けるようにラオスとイラザが構える。

「いきます」

声と共に投げた石礫が躱される。
それは予想済みだったので、躱した先を予測して3個石礫を同時に投げる。
それは見事に魔コクチョウに命中した。

(ヨシ!)

魔コクチョウが墜ちてくる時にはラオスとイラザがトントンの横に移動して首を落とした。
ゆっくりと倒れ込むトントンを見ていたとき、墜ちていた魔コクチョウが体勢を立て直して母さんに向かって飛んできていた。
石礫では威力が足りず一瞬気絶させるだけしかできなかったみたいだ。

「母さんっ!」

間一髪母さんに抱きつき母さんは護れたけれど、シャウの肩を魔コクチョウの爪がえぐっていた。

「あ゛っ!」
「シャウ!」

倒れ込んだシャウを母さんが抱きとめる。

「「シャウ」」

シャウの叫び声にラオスとイラザが意識を一瞬逸らした瞬間に魔大樹の枝がラオスとイラザの足に絡みつき2人の身体を空中に浮かす。
それを見た父さんはルティスの所に走り、それに気がついたルティスは手を組むと父さんの足を受け止め空中に蹴り上がる補助をした。
空中に到達した時には父さんの剣は魔コクチョウを捕らえ切り落としていた。

すると魔大樹の足掻きなのか、他の魔物が倒れた事が分かったからなのか、魔大樹が繁らせた葉を一斉に僕たちめがけて降り注いできた。
視界が降り注ぐ黒い葉で埋め尽くされ、葉が張り付き、葉で切りつけられ、そんな中を枝が攻撃してくる。
枝が動く音だけで枝を払っている父さん達の斬り結ぶ音が聞こえてくる。
シャウと母さんの所には葉は降り注いでいたが、枝が届くことはなかったので父さん達がどうにかしてくれているのだろう。

少しすると、ドンと何かが倒れる音が聞こえてきた。
そして砂埃が立ち上り、降り注いでいた葉が地面に落ちていく。
次第に視界が開けると、2体の魔大樹も倒れていた。
そして、父さん、ルティス、ラオス、イラザが立っていた。

父さんとルティスは至る所が黒く葉の形で肌が呪われていた。
ラオスとイラザは魔大樹の枝が絡みついたところが呪いで黒く変色していた。
呪いは受けていたが、大きな怪我などはないようだった。

母さんも葉などで切り傷はあったけれど、魔力である程度覆えていたようで呪いによって黒く変色したところは少なかった。
怪我で言えばシャウが1番酷いと言えるかもしれない。
魔コクチョウに抉られた肩から血が流れ、そこから侵入した呪いが肌を黒く変色させていた。
シャウは魔コクチョウに傷つけられたときから集中力が途切れ魔力で身体を覆えていなかったけれど、あれだけ呪いの葉で身体を埋め尽くされていたのに傷口以外に呪いによって黒く変色しているところはなかった。





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