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14 食材調達 Ⅰ
しおりを挟む「ルルメさん、町の人達は森で狩りをしているのですか?」
「いいえ。森で狩りをするのは狩人の人達だけです。町にある商会が狩人と契約を結んで肉などを買い取っています」
「ということは狩人以外は森で狩りをしてはいけないのですか?」
「そんなことはありません。町の者は危険を冒すより専門家に任せる方を選んでいるだけですから。狩りつくすような事をするのはいけませんが、食べる分を獲るのは大丈夫です。町でも増えすぎたときは討伐することもありますし」
「そうですか。それでは他に森では何が採れますか? よく女性が籠を持って森へ入っていくのを見かけるのですが」
「キノコや野草を採りに行っています」
「食べられる物ですか?」
「キノコは食べられますが、野草は薬草や香草が主ですから商会へ買い取ってもらうために採りに行っています」
「そうですか。野菜類は購入しないといけないですね」
「ディル様。物々交換が出来ますよ。狩りで獲れた肉を野菜と交換するのです。わたし、野菜を育てている人を知っていますから交換しに行けます」
「本当ですか? それならまずは肉の確保ですね」
ルルメさんに情報をもらって、方針が決まった。
とにかく肉を手に入れないと始まらないみたいだ。
「ディル様。森に行かれるならわたしもお連れください。キノコや香草などもあると美味しくなりますから」
「そうですね。お願い出来ますか」
「はい」
「では、少し待っていてください」
森に行く1人目が決まり、あとはやはり腕の立つ者が必要になる。
狩りをしなければいけないので、男性のしかも剣を扱える人でなければならない。
行商人と言われている男性の集団に近寄る。男性の大半は大なり小なりの剣を腰に携えている。行商して旅をしているのだから護衛もいるはずである。その内の何人かを借り受けることが出来たらいいのだけれど。
「失礼します。私はディルと申します。少しお話宜しいですか?」
「これは騎士様。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私はココエラ商会のトリートと申します。何か御用でございますか?」
「はい。これから皆様の分の食材を獲りに行こうと思っているのですが、狩りに慣れた、もしくは腕のたつ者の手をお借り出来たらと思いまして声をかけさせていただきました」
「さようでございますか。ではここに居る2人をお連れください。ヤンとロロと申します。この者達は護衛も兼ねておりますので、騎士様のお力になれると思います」
「──ありがとうございます」
呆気なく人を借り受けることができて拍子抜けした。
商売人だから、何かしらの見返りや要求などをされると思っていたのに、それもなさそうだった。
「他にも何かございましたら、何でも仰ってください。私どもの商会の代表が今はご挨拶が出来ず、無作法をしてしまい申し訳ございませんが、後ほど挨拶にお伺いさせて頂きます。その際は宜しくお願いいたします」
トリートさんの視線の先にマルロ部隊長と話している男性が2人居る。その内の1人がトリートさんの言うココエラ商会の代表なのだろう。マルロ部隊長と話しているのなら、ディルユリーネのところに来れないのも当たり前のことだ。
「分かりました」
そこに1人の男性が近寄ってきた。
「シグマ殿」
トリートさんに名を呼ばれて近寄ってきた男性はディルユリーネの前で立ち止まる。
そしてディルユリーネに向けて一礼した。
「ディル様。私から紹介をさせていただいても宜しいでしょうか」
「はい」
「こちらの者はザーシラ殿と一緒に各地を行商しているシグマ殿と申します」
「シグマと申します。突然お伺いして申し訳ありません。ザーシラがマルロ部隊長と話をしているため、ご挨拶ができず申し訳ありません。先ほど狩りに行くために腕のたつ者を欲していると聞こえ、ザーシラの指示のもと、宜しければ私も連れて行っては頂けませんでしょうか」
「ディル様。他の行商の者ですが、シグマ殿の腕前は確かでございました。宜しければシグマ殿もお連れください」
「分かりました。シグマさん、宜しくお願いします」
「はい」
トリートさんの援護の言葉もあり、ありがたく手を借りることにした。人手はあった方がいいだろうから。
3人が多いのか少ないのか妥当なのか分からないけれど、私達の両肩に皆の食事がかかっている。
必ず仕留めてこないといけないので、責任重大だった。
「それでは今からでも宜しいですか?」
「「「構いません」」」
「では、参りましょう」
「どのようなご予定ですか?」
「20人分の食材なのでとりあえず大物がいれば3頭くらいで大丈夫だと思いますが」
「さようでございますね」
行商人のヤンさん、ロロさん、シグマさんを引き連れて、マルロ部隊長の所へ寄り、これから狩りに行くことを伝える。
ルルメさんに声をかけると籠を持って待っていた。
「ディル、儂も行くぞ」
天幕を出ようとした時に、ジルヴァンに声をかけられた。
ジルヴァンは瞳をキラキラさせて楽しそうだった。これから遊びに行くような雰囲気を醸し出している。
ジルヴァンをこのまま駐屯地に置いていくのも何をするか分からず恐かったので、予備の剣を渡し一緒に行くことにする。
「期待しているからね」
「おう。任せとけ」
自信満々に言い放つジルヴァンに、つい子供を相手にしているときの気持ちになって微笑ましくなる。
ジルヴァンは何でも楽しもうとするのか、いつも笑っていた。
それがディルユリーネの責任に押しつぶされそうな心を少し軽くしてくれた。
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