【完結】瀧華国転生譚 ~処刑エンド回避のために幼い病弱皇子を手懐けようとしたら見事失敗した~

飛鳥えん

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先生と生徒(1)

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「罰を?そ、そんなのだめです!」

慌てて手を振り回した拍子に、蘇芳の手を払いのけてしまった。
あ、っと思ったときには遅く、花鶏は惜しいことをしてしまったと落ち込んだ。

「それくらいしなくては、殿下の信を得るという私の願いは叶いません。殿下は今から私を厳しく採点してくださらなくてはいけませんよ」

蘇芳はふと首を傾げるようにして、面白いことを思いついたようにくすりと笑った。

「採点、とは我ながら良い案です。殿下、私の先生になってくださいませんか?」
「せんせい……?」

蘇芳はにこにこしている。自分の思い付きに機嫌がよくなっているのか、饒舌で表情も明るい。
花鶏の方はといえば、さっきから突拍子もないことばかり言われて、頭がついていかない。

(おっと。「先生」ってこっちの世界で言うと、目下になんのかな?)
蘇芳は少し躊躇してから、いや、と思い直した。
「師」はいくら皇帝であろうと、師弟関係で言えば上の存在だ。中華ファンタジーなら、世界観の土台は儒教だろう。知らんけど。

「ぼくがあなたの先生?」
「はい、先生」

蘇芳がまじめな顔で返事すると、花鶏はきょとんとして、やがてぷはっ、と噴き出した。
泣き顔のまま、くすくす笑っている。変なツボに入ったのか、ちょっと不自然なくらいくすぐったそうに笑っている。

「先生、おかしいですか」
「う、やめて、ふふっ」
「先生、蘇芳をそんなに笑わないでください。悲しいです」
そう言いながら泣き真似をして、布団の上、ちょうど花鶏の伸ばした足の上にがばっと突っ伏してみせる。
「あはは」

とんだ茶番だが、花鶏は堪らない風に笑い続けた。
(笑った顔、初めて見たな。こどもの笑い声って、こんな風だっけ)

ぱっと顔を上げると、
「先生」
「っ、もういいです!……僕があなたの先生なら、何を教えてあげることができるんですか?僕はもの知らずなのに」
「それはもちろん、殿下のことを教えてください」
「……僕?」
「ええ。だってこれから、先生は私を採点しなくてはなりませんから。私が良い点が取れるように、先生が何を好きで、何が嫌いで、どんな時に楽しいのか、悲しいのか。知っておかないと、生徒はどうしたらよいか困るでしょう。ですから生徒が落第しないよう、教えてください」

花鶏はどぎまぎした。なにか、とてもすごいことを言われているような気がして、頬が熱い。耳の奥がじんじんする。
(やっぱりなにかの病気かも……)

「まあとはいえ、期限は決めておきましょうか」
そうとは知らない蘇芳が、ぽんと手を打つ。あっさりした言い方に、花鶏はちょっと梯子を外された気分になった。

「期限、ですか……先生と生徒の?」
(つまりそれが終わったら?)

「無論、私は生涯を賭して殿下を臣下としてお支えする所存ですが」

花鶏の不安を読み取ってか、早口に添える。
「しかしやはり殿下からのお許しは欲しいのです。生徒としても、先生から満点をもらって試験合格をしたいですし。ですから、この時までと、期限を定めていただけたらありがたいのですが……」

駄目でしょうか、というように上目にこちらを伺うのを見ると、はい、としか言えない。
(これ、もう試験なんてする意味がないのでは……)

花鶏はなんだか情けない気分になってきた。
「いつまでにしたら?」
「でしたら、殿下が後嗣の儀を無事に終えるまで、というのはいかがですか?」
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