ヴォクセル・プロジェクト

ゆら

文字の大きさ
1 / 6
都市国家ヴァルムス

目覚め



 ポコッ………ポコッ……ポコッ…。
 耳に直接聞こえてくる音に瞼を震わせる。微睡む重たい瞼をゆっくりと持ち上げるが、思ったほど開いてくれない。
 視界はまるで水の中にでもいるように不鮮明だ。ふわふわと揺蕩う感覚にまだ微睡みの中にでもいるようで、それでもなんとか目を凝らしてみる。
 暗い視界の中、僅かに青白い光が見えた。
 あれは何だろうか。
 そんな疑問も抗えず閉じゆく瞼とともに薄れていった。
 次の瞬間──。ドンッドンッドンッとけたたましい音にパチッと目を覚ます。
 重たかったはずの瞼はすんなりと開き、視界をクリアに映している。
 映し出された天井をぼんやりと眺め、何か夢を見ていた気がすると記憶を探るがどんな夢だったのか思い出せない。

「ジーク!」

 大声と共に再びドンッドンッと扉を叩かれ、慌てて体を起こした。
 部屋を見渡す。空気を入れ替えるための窓と寝るためだけのベッド。テーブルに置いたままになっている手入れを終えた短剣に、服が無造作に詰め込まれた箱。部屋にある家具と呼べる物はそれだけなのに、宛てがわれた部屋は手狭に感じる。

「ジーク・ロルトッ!今日養護院に行く日だろ!?下で団長が待ってるぞ!」
「っ!」

 その言葉に漸く思考が動き始めた。
 自分の部屋にいることを認識するのに妙に時間が掛かったが、今はそんなこと気にしてる暇はない。
 慌ててベッドから飛び出ると、箱に入っている服を無造作に掴み慌てて身につけた。
 狭いこの部屋はジークが所属する自警団の宿舎だ。
 街の巡邏やボランティアを主とする警備部隊と貴族からの生臭い仕事を請ける傭兵部隊に分かれており、自警団の主な収入源が傭兵部隊に対する報酬になっている。それを警備部隊が街のために働き循環させる事で自警団は成り立っていた。
 当然貴族からの依頼が無くなれば収入も無くなってしまうのだが、どうやら貴族というものは欲深いらしい。次から次に依頼がやってくるため、人手が足りないと団長が漏らすこともしばしばだった。
 かと言って依頼を受けないと収入が無くなり、警備に回すお金が無くなってしまう。
 団員の中には警備部隊と兼任して傭兵部隊に所属してる者もいるらしいが、傭兵部隊は言わば裏の顔。警備部隊に所属している者にはその構成員が誰なのか知らされることは無かった。

「俺をフルネームで呼ぶのはやめろッ」

 服を身につけ扉を開くと、そこに立っていたのはアラン・ダールクヴィスト。ジークがこの自警団に入った頃からの先輩で、ジークのフルネームを知る数少ない人物だ。

「時間になっても起きてこない方が悪い。もう朝飯無くなるぞ」
「え!?早く起こせよ!」
「だから起こしてやっただろ」

 荒っぽいが面倒見がよく、自警団に入って約4年が経つが今でもこうして気にかけてくれる。ジークにとってはいい兄貴分だ。
 食いっぱぐれてはたまらないと慌てて階段を駆け下り、1階にある食堂兼雑談場となっているホールへと向かった。後ろからは呆れたような溜め息が聞こえたが気にかける余裕など無い。飯は何より争奪戦なのだ。


感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。