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都市国家ヴァルムス
目覚め
ポコッ………ポコッ……ポコッ…。
耳に直接聞こえてくる音に瞼を震わせる。微睡む重たい瞼をゆっくりと持ち上げるが、思ったほど開いてくれない。
視界はまるで水の中にでもいるように不鮮明だ。ふわふわと揺蕩う感覚にまだ微睡みの中にでもいるようで、それでもなんとか目を凝らしてみる。
暗い視界の中、僅かに青白い光が見えた。
あれは何だろうか。
そんな疑問も抗えず閉じゆく瞼とともに薄れていった。
次の瞬間──。ドンッドンッドンッとけたたましい音にパチッと目を覚ます。
重たかったはずの瞼はすんなりと開き、視界をクリアに映している。
映し出された天井をぼんやりと眺め、何か夢を見ていた気がすると記憶を探るがどんな夢だったのか思い出せない。
「ジーク!」
大声と共に再びドンッドンッと扉を叩かれ、慌てて体を起こした。
部屋を見渡す。空気を入れ替えるための窓と寝るためだけのベッド。テーブルに置いたままになっている手入れを終えた短剣に、服が無造作に詰め込まれた箱。部屋にある家具と呼べる物はそれだけなのに、宛てがわれた部屋は手狭に感じる。
「ジーク・ロルトッ!今日養護院に行く日だろ!?下で団長が待ってるぞ!」
「っ!」
その言葉に漸く思考が動き始めた。
自分の部屋にいることを認識するのに妙に時間が掛かったが、今はそんなこと気にしてる暇はない。
慌ててベッドから飛び出ると、箱に入っている服を無造作に掴み慌てて身につけた。
狭いこの部屋はジークが所属する自警団の宿舎だ。
街の巡邏やボランティアを主とする警備部隊と貴族からの生臭い仕事を請ける傭兵部隊に分かれており、自警団の主な収入源が傭兵部隊に対する報酬になっている。それを警備部隊が街のために働き循環させる事で自警団は成り立っていた。
当然貴族からの依頼が無くなれば収入も無くなってしまうのだが、どうやら貴族というものは欲深いらしい。次から次に依頼がやってくるため、人手が足りないと団長が漏らすこともしばしばだった。
かと言って依頼を受けないと収入が無くなり、警備に回すお金が無くなってしまう。
団員の中には警備部隊と兼任して傭兵部隊に所属してる者もいるらしいが、傭兵部隊は言わば裏の顔。警備部隊に所属している者にはその構成員が誰なのか知らされることは無かった。
「俺をフルネームで呼ぶのはやめろッ」
服を身につけ扉を開くと、そこに立っていたのはアラン・ダールクヴィスト。ジークがこの自警団に入った頃からの先輩で、ジークのフルネームを知る数少ない人物だ。
「時間になっても起きてこない方が悪い。もう朝飯無くなるぞ」
「え!?早く起こせよ!」
「だから起こしてやっただろ」
荒っぽいが面倒見がよく、自警団に入って約4年が経つが今でもこうして気にかけてくれる。ジークにとってはいい兄貴分だ。
食いっぱぐれてはたまらないと慌てて階段を駆け下り、1階にある食堂兼雑談場となっているホールへと向かった。後ろからは呆れたような溜め息が聞こえたが気にかける余裕など無い。飯は何より争奪戦なのだ。
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