ヴォクセル・プロジェクト

ゆら

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都市国家ヴァルムス

自警団



 自警団の宿舎は1階に団員が自由に使えるホールがあり、あとは来客用の応接間と団長の私室。2階3階は団員の個室が構えられている。
 暇な団員は大抵ホールか自室で過ごしているが、巡回に出る前はホールが溜まり場になる為この時間だと──。

「よぉ、ジーク!もうメシ残ってないぞ」
「~~~ッ!?やっぱり…」

 ホールに入った瞬間聞こえてきた言葉にガックリと肩を落とす。

「お前、寝すぎなんだよ」
「ジェシカちゃんのサラダ美味かったのになー」

 ぐうの音も出ないとはこの事だ。完全に寝坊した方が悪い。揶揄するような言葉にすら言い返す気力も出てこず、せめて水くらい、ととぼとぼカウンターへと歩く。

「ほらよ」
「ッ!?」

 飛んできた物を反射的にキャッチする。
 パンだ。
 飛んできた方へ顔を向けると、養護院時代からの幼馴染が得意そうな笑みを見せていた。

「1個貸し、な」
「ディータ……サンキュ!」

 感謝を口にしながらパンに齧り付き、給水タンクから水を出す。朝食の時間が終えたせいか、タンクの中も残り少ない。

「ん……ジェシカ、タンクの水無くなりそうだぞ」

 齧り付いたパンを飲み込みながら厨房へと顔を覗かせる。すると小柄な女性が頭に乗せた布巾を取りながら厨房から出てきた。

「あ、ごめんごめん。ちょっと待ってね」

 ジェシカが手をかざすと、タンクと手の間が薄らと光り始めた。光るとともにタンクの中にゆっくりと水が湧き始める。何度見ても不思議で神秘的な光景だ。

「おぉ…」
「これで夕方までは持つかな」

 言いながらジェシカが手を離す。空に近かったタンクの中は新鮮な水で満たされていた。

「やっぱいいよなぁ、異能力。俺も何か使えたら良かったのに」

 同じ光景を見ていた団員が呟く。その呟きにジークは苦い笑みを浮かべた。
 この世界に住む者の中には少数だがジェシカのような能力を使える者がいる。
 異能力者と呼ばれるその者達は基本的に重宝され、都市中心部の中央区へ集められることも多い。強制ではないと言われているが、能力によっては高い報酬が与えられるためそれと引き換えに移住する者が殆ど。それほど貧困にあえぐ者が多いという事にもなる。
 それを表すように所々に治安の悪いスラム街が点在しているのが現状だ。
 中には生活が立ち行かなくなり子供を手放す親もいて、その保護先を養護院が担っている。
 かくいうジークもその養護院の出身だった。


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