ヴォクセル・プロジェクト

ゆら

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都市国家ヴァルムス

養護院からの依頼①



 縦格子の塀に囲まれた教会。その裏に養護院はある。
 開かれた門を潜り荘厳な教会を裏手へ回ると、賑やかな声が聞こえてきた。

「お前は向こうに行けよ!」
「やだ、私もお兄ちゃんの手伝いする!」

 先月ぶりの振りの訪問だが、子供たちは変わらず元気そうで、キャッキャ言いながら洗濯物を運んだり畑で野菜を収穫したりしている。その光景を微笑ましく、そして懐かしく見ていると、子供たちが「あ!」と声を出して駆け寄って来た。思わず笑みが漏れる。塞ぎ込むことなく朗らかな子供たちを見れば、大切にされているのは一目瞭然だ。

「ディータだ!団長さんもいる!」
「ジーク遊ぼう!」
「こら、手伝いはいいのか?」

 手伝いそっちのけでやってきた子供たちを窘めると、「だってぇ」と拗ねた様子を見せる。

「遊ぶのは手伝いが終わってからだ。ほら、差し入れもあるぞ」

 親しげにジーク達を呼び、差し入れだとパンを渡すと子供たちは大喜びでそれを受け取った。
 この養護院にいる子供の大半は孤児だ。親に捨てられたか、貧困で親を亡くしたか……中には奴隷として売られようとしていた子もいる。
 それでもこうして笑顔を見せてくれるのは養護院の環境のお陰だろう。

「ユーリー院長は?」
「ジーク、ディータいらっしゃい。イラリオーノ団長も、よくおいで下さいました」

 柔らかな笑みで迎えたのは、中年と呼ぶには若く見える男。だが見た目に反して年齢はそこそこいっている。なにせジークがこの養護院に保護された時から見た目が変わってないのだ。
 院長を務めるユーリーはジークだけでなく、この養護院で育った人間にとっての恩人と同時に親みたいな存在で、院を出てからも度々養護院に顔を出す者も多い。

「院長相変わらずだな」
「ジークはより青年らしくなりましたね」

 慈しむような優しい目も相変わらずで、やんちゃだった頃を思い出すとむず痒さを感じる。

「さ、中へ。子供たちが手伝いを終わらせる前に話をさせて下さい」

 穏やかな口調で院内へと案内された。
 養護院の建物はもう古く、廊下を歩くたびギシッ…と軋んだ音を立てる。よく見れば壁の木材も剥がれている箇所があり、所々色味が違う板が嵌め込んであった。

「院長……建物の修繕は?」
「やらなければ、とは思っているんですけどね。街の大工に聞いたら修繕費が嵩みそうで…少しずつですけど私が直してるんですよ」
「これだけの建物を修繕するとなったら相当時間がかかるだろう」

 イラリオーノがぐるりと建物内を見やる。子供たちを保護するのだから当然部屋数もそれなりにあるし、年数自体も相当経っているのだ、1人で熟すには何年かかることか。

「イラリオーノ!ならさ、俺手伝ってもいいか?勿論、仕事に支障がないようにするからさ!」

 ついそう口にしていた。ジークにとってはここは実家のようなものだ。困っているなら助けたい。資金的な援助ができる余裕はなくても、体だけは頑丈なのだ。せめて修繕を手伝わせて欲しいと思いイラリオーノに嘆願する。

「コラッ!人前では団長って呼べと言ってるだろ!」
「いってぇッ!」

 ゴンッと勢いよく拳を落とされ、堪らず頭を抑えた。
 その横でディータがサッと挙手する。

「団長、俺もっ!俺も手伝いたい!」
「そうだな…必要な材料もランランのとこに頼めば安く済むだろうし……ユーリーいいだろうか?」

 イラリオーノ少し考えるように顎に手を置き、うんうんと頷くとユーリーへと視線を向けた。

「ご迷惑でなければ、ぜひお願いしたいです。ジーク、ディータ…嬉しい申し出をありがとう」

 眉尻を下げ感謝するユーリーに照れくさくなり、ジークはポリポリと鼻頭を掻いた。


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