転生した世界で深愛に触れる

ゆら

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卒業

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 卒業式のあと行われる卒業パーティ。卒業生は親しい人──婚約者や兄弟、時には父親がエスコートを勤め、共に参加するのが通例だ。
 当然アルファやオメガであれば番や番候補と共に参列することが多い。

「ユーリ」

 ローレンツに手を差し出され、そっと自身のそれを添える。
 会場に足を踏み入れると、わぁっと歓声が沸いた。
 ローレンツと婚約したことは公にしてはいなかったが、耳の早い貴族達の間では周知の事実となっていたのだろう。パチパチと拍手で迎えられた。
 どことなく気恥ずかしさを感じながらも、嬉しさに口元が緩む。
 その後に入ってきたのはカロリーナだ。
 目が合うとヒラヒラと可愛らしく手を振って幸せそうに見える。
 オリオールに手を引かれ嬉しそうに破顔するカロリーナは、会場中から意外だと視線を集めていた。
 カロリーナの今までの行動を考えると、わからなくもない。
 しかしそれ以上に注目を浴びていたのはアレクシスとジェークだった。

「え!?あの2人って……」

 驚きのあまり声に出てしまった。
 周囲も声を潜めながらだが、驚きを隠せない様子で2人を見ている。

「アレクシスの粘り勝ちってところだな」
「そうなの!?」

 事情を知っていたのだろう、ローレンツは大して驚いた様子を見せない。
 ざっくり聞いた内容では、アレクシスはジェークの妹と婚約していたが、それを解消しジェークを選んだという。
 開いた口が塞がらないとはこの事だ。
 ずっと2人は犬猿の仲だと思っていたが、いつの間にそんな仲になったのだろう。

「ローレンツ、ユリウス」

 周囲の目を気にしてないのか、喧騒の中2人がやってきた。

「卒業おめでとうございます」
「ありがとう。ユリウスも卒業おめでとう」
「ありがとうございます。それにしても驚いたよ。2人はその、いつから…?」

 余計なお世話だとわかっていても、つい好奇心が前に出てしまう。

「あー、驚かせて悪かった」

 やっぱり突っ込まれたか、と淡いブルーの瞳を細め、ジェークが決まり悪そうに頭を掻いた。

「秋季休暇の時にやっと、だな。それまで散々ふらふらされたが、もう離してやらない」
「ッ、それは……悪かったよ」

 ジェークの腰を引き寄せながら、アレクシスが目を細めた。愛しいものを見るその目はジッとジェークを捉えている。ジェークだけを映す濃紺の瞳。いつかもそんな目を見た気がする。

「ミリーは大丈夫だったのか?」

 ローレンツの言葉にハッとし顔を上げた。

「そういえば婚約者が」
「彼女にはきちんと話をして婚約を解消してもらった。聡明な子だから納得してくれるのも早かったよ。まぁ、うちの両親は納得してないがな」

 アレクシスが苦い笑みを浮かべる横で、ジェークは申し訳なさそうに顔を伏せてしまった。
 あまり突っ込んでいい話ではなかったようだ。

「ごめん、僕」
「気にしなくていい。俺が選んだ事だ。ジェークもこれ以上気にするな。これは俺なりのけじめでもある」
「あぁ…」

 頷いてはいるがどことなく歯切れが悪い。
 ミリーはジェークの妹だ。いくら納得してくれたからと言っても、割り切れない何かがあるのかもしれない。

「卒業パーティとはいえ国王陛下が主催するパーティだ。この場でエスコートする相手が家族以外となれば、当然婚約者という認識をされる。なら、俺の横に立って欲しい人物はジェーク以外考えられない」

 キッパリと言い切るアレクシスに、ジェークの頬が赤く染った。

「し、仕方ねぇな」

 ぶっきらぼうな言い方だが、ジェークの表情はどこか嬉しそうに見える。

「2人は卒業したらどうするの?」
「俺は今回の件で廃嫡になるかな」
「えっ!?」

 ジェークの言葉に思わず声が大きくなってしまう。周囲から向けられる好奇の目が更に増した。
 ローレンツに顔を向ければ、知らなかったのだろう。珍しく目を丸くしていた。

「大丈夫なのか?」
「ああ、元々外交官になりたいわけじゃなかったし、侯爵家にも未練はないしね。夢だった騎士団に所属出来ることになったし、しがらみが無くなって逆に良かった」

 どこか清々しい様子でにかっと笑った。

「ジェーク、騎士になるんだ?すごい!」
「まあ、剣術はまだまだこれからだけどな」

 裏庭でローレンツと模擬戦をしていたことを思い出す。ローレンツの剣を受けることなど素人には出来るはずない。きっと今までもずっと努力を続けていたのだろう。

「アレクシスはどうするんだ?ジェークのことを公爵に反対されているんだろ?」
「反対はしてるが、今のところ苦虫を噛み潰しながら領地運営を教えてくれている」

 アレクシスは一瞬苦笑いを浮かべたが、直ぐにさっぱりとした顔に変わった。

「まぁ、今後廃嫡されたとしても文句は無い。ジェークがいてくれれば俺はそれでいい」
「……アレクシスらしいな」

 そんな話をしていれば音楽が流れ始める。ダンスの時間だ。

「ダンスの時間だな」

 それぞれのパートナーに手を引かれ、ホールの中央へ足を進める。
 煌びやかな光の中、ローレンツと目を合わせれば柔らかな笑みが待っていた。

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