転生した世界で深愛に触れる

ゆら

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暗澹

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 強制的に起こされたヒートは3日程で治まりをみせた。
 その間抱かれ続けた体はすっかりローレンツの愛撫と形を覚えてしまった。
 強引なのに触れる手の優しさ。体を貫く熱。欲を孕んだ目。
 思い出すだけで重たい体がぞくりと震える。

「ユーリ、体を拭こう」
「んッ…」

 暖かいタオルで体を拭かれるだけで反応し、声が漏れた。

「……あまり可愛い声を出すな」
「出して、ッ」

 番を決めたはずのローレンツがどうしてこんなことをしたのか。
 聞かなくてはいけない。だが聞くのが怖い。
 番を見つけたアルファが愛人を持った、と貴族お得意の世間話で耳にしたことはあるが、ローレンツがそんなタイプだとは思いもしなかった。
 ローレンツの父である辺境伯爵も愛人を持たず、夫人一筋の人間だ。勇猛果敢な騎士といった風体で色慾に溺れるタイプではない。
 だからこそローレンツもそうだと思っていた。いや、今だってそう思っている。あの情事が何かの間違いなのだと。
 だがその間違いの為に愛人として迎え入れようとしているのなら、結ばれない方がマシだ。

「ユーリ…」

 柔らかな眼差しがユリウスに向けられる。
 恥ずかしくなり思わず視線を逸らした。
 楽しそうに体を拭いていくローレンツはご機嫌だ。
 それに反してユリウスの体は満たされたはずなのに、心は乾いたまま。
 ローレンツが好きだ。だから求められれば嬉しいし、拒むことなんて出来ない。ユリウスが拒まなければ、ズルズルとこの関係が続いてしまうのだろうか。
 囲われるように愛人になっていく未来が頭を過ぎる。
 その後も着替えを手伝ったり、ベッドまで食事を持ってきたりと甲斐甲斐しく世話をされるが、その優しさが余計に悲しさを助長させた。


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