41 / 48
新たな日常
しおりを挟むタウンハウスに戻ってからユリウスは早速筆を取った。
宛名は父ルーサーだ。
花祭り後、新学期が始まることもあり、ローレンツとの事を直接話す機会がもてない。そのためプロポーズを受けたことを手紙で伝えようと思ったのだ。
返ってきた返事は、「この前帰省した時にローレンツからプロポーズすることは聞いていた。ユリウスの気持ちもわかっている。2人が幸せな道を選んでくれて嬉しい」というものだった。
確かにノヴァーリス領へ向かう前、ローレンツがルーサーと2人で話していたことがあったが、この事だったのか、と今更ながらに知る。
「言ってくれればよかったのに」と拗ねてみせれば、悪い、と眉を下げられた。
「だけど、プロポーズは花祭りの日に絶対あのバラ園でするって決めてたから」
そう微笑まれると、顔を赤くするだけで何も言えなくなってしまった。
恋人になって始まった学園生活。幼馴染の頃と変わらないようで、やはりどこか違う。雰囲気が甘くなったと言うより、ローレンツの態度だ。
あからさまに腰に手を回したり、頬に口付けたりと、今までない態度をとるようになった。
もちろんクラスで堂々と、というわけではないが、ランチに向かう途中だったり、2人でガゼボでまったりと過ごしたりする時はそっと手を握られたりと、慣れない触れ合いに日々顔を赤くしていた。
最近は裏庭で剣術練習をするローレンツを見守ることが日課になっている。
汗を流しながら剣を振る姿はまさに勇敢な騎士だ。
「あれ?また先越された」
その声に振り返る。ふらふらっとやってきたのはジェークだ。
「またお昼寝しに来たの?」
「んー?そうそう。ローレンツが鍛錬中なら諦めるか」
ポリポリと頭を掻きながらジェークが踵を返そうとした時。ユリウスの目の前を茶色い何かが飛んだ。自然と目が追い、飛んで行った先で、ジェークが「痛ッてぇ」と顔を顰めながらそれを受け止めている。
木剣だ。
なんの前触れもなく投げられたそれを、難なくキャッチしたジェークを瞠目する。
ジェークの父であるランベリン侯爵は外交大臣の役に就いており、ジェーク自身も文官気質……というより汗水垂らして剣を極める程の情熱は見受けられない。飄々とし、程々の加減で要領良く生きて努力とは無縁といった風なのに、剣を受け取った際の所作があまりにスムーズなのだ。
「相手しろ」
「えぇ……ローレンツに適うわけないだろ」
「いくぞ」
カッ、カッ、と木剣同士のぶつかる音が辺りに響く。
剣術と無縁なはずのジェークは何故かローレンツの剣を受け、時には打ち返している。ローレンツが弱いということは決してない。領地で幼い頃から剣術を学び、学園に入ってからもその腕を磨いていた。その実力は並大抵の騎士にも負けない。
それに比べジェークは剣術のけの字も知らないはずなのに、そのローレンツの剣を受けて、剣術を習った並の学生以上に渡り合っている。侯爵家は文官気質だと勝手に思っていたが違ったのだろうか。いや、だがジェークの兄は頭脳明晰で聡明だと有名だ。剣術を習ったなど聞いたこともない。
「はぁぁぁッ!」
「く……ッ」
ガッという大きな音と共にジェークの握っていた剣が弾かれた。剣技に押され地面に座り込んだジェークが一瞬悔しそうに唇を噛む。が、すぐさま「さすがローレンツ」とヘラッと笑って見せた。
「す……凄いジェーク!剣術も出来たんだ!」
「いやー、やっぱ辺境伯領で鍛えてるやつは違うな」
「ジェークもいい太刀筋だった」
差し出された手を掴みジェークが立ち上がる。
「……気が向いた時でいいんだが、また相手をしてくれ。なかなか相手がいないんだ」
「ッ……まぁ、気が向いたらな」
どこか嬉しそうに頬を緩め、そしていつものようにヘラッと笑った。
44
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
第三章 完結
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる