不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.15 師匠から使用説明と雑談

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 明日のラビリント探索前にヴェイセルから、重機関銃に関して説明を受けることに。
 未使用じゃないかと思うくらい、綺麗な状態の重機関銃だけど、使ったことはあるのだろうか。運ぶ人が居なかったとなれば、ただの置物になっていた可能性も。
 実銃を前に細かく説明し疑問があれば、今のうちに解消しておけと言うことで。

「こいつは銃架に固定して使う。三脚は座射用と伏射用の二種類」

 手に持って撃ちながらの移動は不可能。拳銃程度のグリップがひとつ。あとはレシーバーと呼ばれるバレル下にある、装填・発射準備・発射等の動作を行う機構部分だ。銃の本体とも言える部分があるだけ。
 そもそも重量が本体だけでも十六キロ程。抱え持って撃つのは無理があるわけで。

「銃架は三百六十度回転する。高低の調整も可能だ」

 撃つ時には必ず銃架の固定を忘れるなと。
 座射用三脚には簡易座席が付属し、そこに座って撃つことになるようだ。

「使う際は弾倉から弾薬ベルトを取り出し、レシーバーの進弾口に通しておく」

 キャンバス地の弾薬ベルトだ。中で焦げたりしないのだろうか。

「射撃前にレシーバーの前にある、操作レバーを後方に引き起こす」

 再度、前方に倒すと射撃準備ができて、トリガーを引けば自動で何十発でも発射可能に。勿論トリガーコントロールで短いバースト射撃も可能。
 ただし、連続で発射し続けると薬室内の温度上昇により、不具合が発生するから冷却する時間も必要だと。とは言え、弾倉ひとつ消費する程度であれば、問題は無いらしい。つまり二百五十発分は大丈夫ってことで。

「レバーだけどな、発射される度に前後に激しく動くからな」

 まんまポテトディガーだ。コルト・ブローニングM一八九五と同じってことか。
 なんで異世界なのに同じ構造の銃になるのか不思議だな。どの世界でも初期の頃ってのは同じ発想に至るのだろうか。
 機械だから全幅の信頼を置かず、故障することも頭に入れておけと。
 故障の際にはカービンやリボルバーで対処、ってことだろう。

 ひとつ疑問が生じた。

「あの、重機関銃ですけど口径小さいですよね」
「数で勝負だ」
「えっと」
「小銃や拳銃だと正確に同じ場所は撃ち抜けない」

 できないわけではないが、照準を定め発射するまでに時間が掛かる。
 三脚架に固定された銃であれば、多少のブレはあっても極近い位置に着弾する。
 敵は硬さも増すことで破壊しきれない。できるだけ同じ位置に着弾させることで、破壊することを目的とするそうだ。

「二十六階層に現れるモンスターは、異様な程に硬いからな」

 一発の銃弾程度では撃ち抜くことは不可能。ゆえに数で勝負をすることに。

「探してはいたんだ」
「何をですか」
「君だよ。イグナーツ」
「え、俺ですか」

 正確には力があって武器さえあればラビリントを、ひとりでも移動できる存在。
 運搬賦役協会に声を掛けていたが、希望する人材はヒットせず。暫し三十六階層で足踏みしていたらしい。
 そんな時にデシリアが有望そうな若者を連れて来た。

「しかも無謀なパーティー所属だったからな」

 確実に攻略失敗となり解放されるだろうと。そうなればシルヴェバーリで雇う、と決めていたそうで。

「まさか十六階層から地上に戻れるとはな」

 感心したと。
 一般的な探索者でも、ひとりでは確実にどこかで行き詰まる。十六階層から地上に戻れることはまずないらしい。
 しかも探索者ですらない。スカラリウスが生還した。

「是が非でもうちで確保したい、となった」

 喉から手が出る程欲しい人材だったそうだ。
 なんか照れる。どれだけ高評価なのか。クリストフのパーティーでは、ただのお荷物扱いだったのに。毎回、暴言や暴行に耐える日々だった。
 これが正当な評価、だとすれば期待に応えないと。
 やっぱりスカラリウスは使えない、なんて思われたら、また同じことの繰り返しになる。

「たった一丁の銃で乗り切ったのだから、その力量は俺を上回る」
「それは大袈裟です」
「大袈裟なものか。俺に十六階層から戻れる自信はない」

 銃の初心者でかつ、僅か六十三発の弾薬しか持っていなかった。一階層ごとに五発未満で対処しなければならない。どう考えても無理があるそうで。
 それどころか重い荷物を捨てずに戻った。責任感の強さも信頼に値すると。
 照れるどころか恥ずかしい。単純な理由で荷物を捨てずに戻っただけだし。殴る蹴るの暴行を受けたくない。たったそれだけ。運の良さもあったと思う。
 過剰評価な気もするけど、でも大きな期待を背負ったんだよな。
 好待遇で迎え入れてくれたし。だったら頑張るしかない。

「運が良かっただけです」
「運も実力の内だ」

 謙遜するな、だそうだ。

 重機関銃の説明が終わると、明日の準備をすることに。
 自分用の水と食料。予備の武器弾薬。ひとつずつチェックしながら、バックパックに詰め込んでいく。数を控えておく必要もある。弾薬は使った分だけ金を払う必要があるからだ。パーティーの備品として、纏めて購入しているらしいからな。使ったらパーティーに対して払う。
 側では重機関銃を銃架から外し、三脚を纏めるヴェイセルが居る。

「ああ、そうだ」
「なんですか」
「後日、ダガー程度でも扱いに慣れてもらう」
「え、剣士の技能なんて無いですよ」

 先にも言った通り、機械は壊れることが前提。弾切れにもなる。
 最低限、身を守れるようにダガーの扱いに慣れてもらうそうだ。別に倒す必要は無い。逃げるための隙を作ればいいらしい。

「指導はモルテンがやる」
「なんか怖そうなんですけど」
「怖くない。ただ、指導は半端無い」

 シルヴェバーリのメンバーは、全員がダガーでの戦闘もできるそうだ。
 当然だがリーダーと同じように、とはいかないが、ヴェイセルは元が剣士だったから、かなりの腕前らしい。
 更には全員が拳銃も所持しているから、いざと言う時には多彩な攻撃手段を行使できる。
 それこそがシルヴェバーリの強さの秘訣だそうで。

「仲間の負担にならないよう、各自が自分を守る力を持つ」

 自分すら守れないようでは、パーティーの足を引っ張りかねない。誰かに守ってもらう、などと言った発想はラビリントでは通用しないと。

「デシリアなんて細身なのに、軽やかなステップで敵を倒すぞ」

 道理でクリストフ相手に一歩も引かなかったわけだ。相手の力量を見抜いていたんだろう。

「まあ言っても、イグナーツはひとりで生還したからな」

 誰も心配してないとか言ってる。浅い階層だったからで、深い階層になったら話は別でしょ。
 デシリアと名前が出たからか「呼んだ?」なんて、顔を出すデシリアが居る。

「呼んでない」
「イグナーツのパーティーデビュー戦でしょ」
「そうだ」
「サポートしてあげるね」

 渋い顔を見せるヴェイセルが「お気に入りだからって甘やかすなよ」とか言ってるし。

「違うってば」
「認めてさっさとベッドインしろ」
「し、しないから」
「そんなんだと、イグナーツを他の女に取られるぞ」

 俺を見て「他の女って、そう言えばイグナーツって付き合ってる人」なんて言い出すし。
 居るわけがない。貧乏で最底辺の職だし。どこに魅力を感じてくれる人が居るのか。と言うと。

「過小評価だよ」
「そうだな。シルヴェバーリの若きホープだろ」
「なんですか、それ」
「デシリアは惚れてるぞ」

 顔を真っ赤にして否定するデシリアだけど、本気の否定なのか照れからの否定なのか。俺には分からない。
 好かれれば気分はいいと思う。本気の否定だと、少し傷付きそうな。

「デシリア。本気で否定するとイグナーツが落ち込むぞ」
「え、あ。あのね、嫌ってるわけじゃないから」
「あの、いいです。大丈夫ですから」
「ほら落ち込んだ。責任取ってベッドにでも誘え」

 そう言う話じゃない、と文句を言うデシリアが居て「分かった分かった、今はそう言うことにしておく」だって。
 デシリアって純情だなあ。
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