不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

文字の大きさ
20 / 80

Sid.20 モンスターの倒し方を学ぶ

しおりを挟む
 モンスターには必ず弱点となる急所がある。
 どれだけ強固な鎧を纏っていても、必ず攻略可能な急所が存在するのだと。

「弱点を的確に射抜けば、威力の低い銃でも倒すことができる」

 今回相手をした四つ足のモンスターは、喉と耳の穴。目も同じく弱点となる。
 鋼の如き体毛に覆われ鋭い牙や爪がある。また、頭蓋骨も硬く剣は疎か銃弾すら弾いてしまう程。

「喉の部分にある体毛は柔らかいんだよ」

 常に頭を低い位置にした態勢を取るのも、弱点を隠すためだそうだ。そもそも喉の体毛が硬かったら、体を丸めることができなくなる。背中側に丸くなることは無いが、腹側に丸くなるのだから、体毛が硬いと自らに刺さってしまう。
 頭さえ上に向けてしまえば、銃であれば効果を充分に得る。そして倒れたら耳の穴に銃弾をぶち込む。耳の穴の奥は脳に繋がる。楽に頭の中身を破壊できると言うことで。

「生物の形態を取るモンスターは、必ず生物として設計されているからな」

 しっかり観察し弱点を素早く見抜く。それができれば深い階層のモンスターであっても、容易に倒すことが可能になるそうだ。

「とは言っても生物の形態を取らないモンスターも居る」
「それってなんですか?」
「ゴーレムだな。素材が土や石ならいいが、金属だと手に負えない」

 金属系のゴーレムも居るんだ。って言うか、ゴーレムなんてのも居るんだな。そんなのに遭遇したことも無かったし、出現しそうな深い階層に潜ったこともない。
 クリストフのパーティーは十階層辺りで、それ以上進もうとしなかった。アヴスラグで初めて十階層以降へ進んだくらいだ。どこで自信過剰になったのやら。
 でも、そうなると金属系のゴーレムはどうやって倒すのか。

「倒せるんですか?」
「時間が掛かるだろうな」

 逃げながらも魔法で熱を加え、なおかつ急速冷却を繰り返すと、金属が熱疲労を起こすらしい。
 そうなれば脆くなっているから衝撃を与えれば破壊できると。
 金属のヒートショックって奴か。

「まあ、どれだけ掛かるか分からないが」

 だよなあ。そう簡単にヒートショックなんて起こさないし。
 じゃあ倒す術がないのか。

「聖霊士の奇跡の光や聖法術ならば倒せる」
「じゃあ、金属ゴーレムが出てきたら」
「ヘンリケの出番だな」
「あたしの召喚でも倒せるよ」

 デシリアが横から口を挟んできた。

「勘弁してくれ。あれを出すと周りも巻き込む」
「あの、どういうことです?」
「強酸を吐き出す奴や、超高温で溶かす奴だな」
「距離があれば大丈夫だってば」

 モルテンが何度か死にそうになったとか言ってる。アルヴィンもヴェイセルもヘンリケまでも死ぬからやめろと言われてるし。
 いずれにせよ倒せるけど、周りへの影響が大きすぎるのか。どんなものを召喚してるんだろう。

「黒魔法でも上級であれば倒せるな」
「使える人は?」

 デシリアにメンバーの視線が向くから分かった。

「魔法も使うんですね」
「召喚魔導士って召喚術と黒魔法を使うから」
「なんか凄いんですね」
「でしょ? もっと褒めていいんだよ」

 モルテンが「正直な話」として魔導士や召喚士が居ないと、ラビリント攻略は不可能らしい。階層主を倒せなくなるからだとか。
 単純な物理的攻撃手段は、中層までの階層主にしか通じない。
 ライフル銃が通じるのも五十四階層くらいだそうで。それより深い階層ではライフル銃は通じない。他所のラビリントで得た知見だそうだ。
 ゆえに重機関銃が必要なのだとか。

「一度に同じ箇所に何十発と叩き込めるからな」

 それであれば倒すことも可能かもしれないと。試したことは無いから確証はないらしい。
 今まではラビリントに持ち込むことができなかった。結果、デシリアやヘンリケに頼ることになっていたそうだ。

「モルテンも戦えるでしょ」

 モルテンは魔法剣士だから剣に魔法を纏わせることで、魔法プラス物理の特殊な効果を得ることができるとか。

「けどな、それをやると」
「だよね。だからイグナーツ」
「そうだ」
「頼りにしてるよ」

 替えの剣を大量に持参してもらえれば、モルテンも戦力になると言うことだそうで。
 深くなると階層主は単純な物理的攻撃を受け付けないのか。
 他のパーティーはどうやって倒してるのだろう。召喚士やら法術士が居るのか?
 気になって聞いてみると。

「召喚士は貴重だな」
「聖法術が使える人も殆ど居ないね」
「え、じゃあ」
「シルヴェバーリはメンバーに恵まれた」

 聖霊士も極端に数が少ない。現時点で探索者として知られているのは五人だけ。希少な存在だから知れると争奪戦になることも。
 召喚士は百人にひとりの割合。召喚魔導士になると千人にひとり。
 聖法術の使い手は二千人にひとり。シルヴェバーリは希少な人材が集まったそうだ。

「探索者って、この国に何人居るんですか?」
「三万八千二百人くらい、と言われてるな」

 召喚魔導士は三十八人。聖法術で十九人しか居ないのか。
 つくづくシルヴェバーリは凄いパーティーなんだな。俺なんかが居ていいパーティーなのだろうか。
 ただの荷物持ち。ちょっとは銃も扱えるようになってきたけど。
 せめて足手纏いになるのだけは避けよう。

 十六階層から十七階層へ進むと、ここからは俺の知らない世界になる。気を引き締めて挑まないと。
 周囲を警戒しながら進むとデシリアに「気負わなくていいから」と言われてしまった。

「警戒するのは悪くないけど、気負い過ぎても疲れちゃうよ」
「え、あの」
「分かるんだけどね。でも大丈夫」

 こんな浅い階層であれば怪我を負うことすらないそうだ。

「イグナーツはまだ守られる存在」
「そうよねえ」

 ヘンリケも今は守られていればいいと。階層主相手に気張ってくれればいいそうで。
 ろくな戦闘経験がないのだから、地道に経験を積むことが最優先。
 危険が及ばないよう周りの仲間が守ると。

 少し進むと二足歩行のモンスターと遭遇した。
 駆け出すモルテンとアルヴィンが居る。後方に視線を向けるのはヴェイセルだ。
 俺に視線が向くと「まずは見ておけ。モンスターの行動と弱点をな」と言われ観察することに。

 向かってくるモンスターは足が異様に細い。でも、その足はまるで昆虫のようだ。
 体は節があって鎧で覆われているような、節足動物系のモンスター。頭も昆虫みたいな。でも二足歩行。

「うわっ! 跳ねた」
「あれはね、跳ね回るから」
「体が軽いみたいね」

 デシリアとヘンリケがモンスターのことを教えてくれる。

「体は硬いけど節に強度が無いの」
「それって」
「関節を攻撃すれば楽勝」

 体を覆う殻とは異なり、可動部分は動かすために強度が不足する。もし、間接まで硬い殻で覆っていると動きに影響を生じる。俊敏な動きができない、もしくは動かせない。
 節足動物のような存在は関節を狙うのだそうだ。

「ほら、すぐ終わった」

 体から四肢を捥がれ床に転がるモンスターが居る。身動きが取れず藻掻いているだけ。

「イグナーツ。止めを」
「あ、はい」

 モルテンに呼ばれ側に行くと「狙いは首関節」と言われる。ダガーを突き立てると最初は硬く抵抗があるも、すぐにザクザク切り進められた。
 そして転がる首。

「頭も胴体も暫くは動くからな。頭は注意した方がいい」

 噛みつかれるそうで。

「魔石を取る時だがな」

 外骨格の隙間からダガーを刺し込み、切っていくと中身を取り出せる状態になる。
 まあ中身ってのは内臓だったりするわけで。最初の頃は気色悪かったけど、今はすっかり慣れたな。
 魔石回収が終わりさらに先へ進むと、またも外骨格を持つモンスターと遭遇。

「この階層は主にあの手のになる」

 銃弾が通じにくいから剣で応戦することになる。
 それでも重機関銃であれば足を吹き飛ばせるそうだ。

「使うのはもっと下層だな」

 ここで弾薬を使うのは勿体無いそうで。
 駆け出すモルテンとアルヴィン。二人とも動きが早い。そしてすぐケリがついて魔石回収になるわけだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...