不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.57 作業に慣れてきたようだ

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 途中で引き返した翌日、装備を整え直し三十階層より下を目指す。
 三脚にセットした重機関銃を一挺、食料や飲料に応急処置セット。寝袋までは持参しないけど、弾倉は六個に増やして潜る。他にライフル二挺とクリップを十個。
 シルヴェバーリが強い理由は、慎重さがあるからだと思う。無闇に深い階層へと進もうとしない。準備も入念だし各々の適性を理解し、状況に応じて最適な行動を心掛けるからだ。
 それがあって国内最強レベルの探索者パーティーなのだろう。

 十階層で軽く休憩を取りサクサク進み、二十階層でも軽い休憩を取ると、二十一階層から訓練として重機関銃を展開し、ヴェイセルに引き継ぐことに。
 二十一階層でも過剰な戦力だけど、俺が慣れる必要があるからだ。

「準備できました」
「よし。あとは任せろ」

 背中に背負った重機関銃を下ろし、三脚を広げ展開したのち、ヴェイセルに引き継ぐとバースト射撃を繰り返す。
 タタタンと小気味良い音がして、いや煩いのは煩いけど、即座に排除されるモンスターだ。

「もう少し早い方がいいかもしれん」
「工夫してみます」

 浅い階層なら現状でも問題は無いが、深い階層だと手際の良さが求められる。
 モンスターは待ってくれないし、数も纏めて出てくるからだ。もたもたしてると前衛に掛かる負担が増す。前衛が疲弊すると後衛が危険に曝される。
 前衛が疲れない内に、攻撃に加われないと足を引っ張ることに。
 かと言って三脚を開いた状態で移動は無理。ラビリント内の壁や床に引っ掛かるし。

「本来なら、俺が持って移動できればいいんだが」
「重いですから」
「まあ、イグナーツくらいだな。持って撃てるのは」

 重さだけではなく反動も大きい。抱え持って撃つなど一般には不可能。撃とうとして自分が吹っ飛ぶだけだから。
 どうして俺にここまで力があるのか。これが技能なのかもしれないけど。でも、何の感覚もない。分かりやすくステータス画面でも表示されればな。ゲームじゃないんだから、そんなの表示されるわけ無いけど。

 二十二階層から二十四階層までは、少々時間を掛けながらも対処できた。
 二十五階層の階層主を秒で倒し、昼食を摂り少し休憩したら二十六階層へ向かう。

「まだ過剰だな」
「そうですね」
「ねえ、あたしにも少し」
「何を?」

 デシリアが撃たせて、とか言い出した。暇を持て余してるようで、試し撃ちしてみたいらしい。
 ヴェイセルを見ると「固定されてるから、素人でも撃てるだろうが」と。
 渋い顔をしてる。

「前衛が蜂の巣になりかねん」
「駄目かなあ」
「やめた方がいい」
「あ、じゃあ浅い階層で」

 譲らないのか。

「モルテンやアルヴィンに当たったら即死だぞ」
「大丈夫。避けるから」
「そういう問題じゃない」
「だって、暇なんだもん」

 だったら黒魔法を使わせろと言い出すし。意外にも戦闘狂。
 外側を破壊する黒魔法が通用する階層なら、デシリアにも出番はあるけど、多くは内側から破壊する黒魔法しか通じない。それを使うとデシリアの感情は失われてしまう。だから俺とヴェイセルの二段構えなんだけどな。後付けの理由ではあっても。
 後衛に強力な火力があれば前衛の負担を減らせる。

「デシリアは三十一階層から三十四階層だ」

 そうだった。あの階層間は外側からの攻撃が通用する。飛行タイプには特に効果が大きいから。
 対価が効果を下回るからデシリアも活躍できる。

 二十六階層に足を踏み入れると、早々に重機関銃の出番となった。
 展開して使える状態にし引き継ぐと、即座に前衛が下がり重機関銃による掃射。バタバタ倒れるモンスターが居て、狙いの正確さもあるのだろう。俺より効率よく倒してる。

「ヴェイセルさんって、やっぱ凄腕だ」
「技能持ってるからだよ」
「技能の有無でこんなに違う」
「大丈夫。イグナーツは技能無くても別格」

 確実にヴェイセルを上回る、なんて言ってるけど何を根拠に、とは思う。
 技能持ちに技能無しが並び立つなら、技能ってなんなのってなるし。しかも上回るとなれば技能の意味が無いでしょ。
 こんなことは口にはしない。期待してるのだろうから。

 二十六階層が済むと二十七階層へ進み、ここでも重機関銃の掃射で圧倒する。
 キャリアや技能の差は埋め難いんだろうな。俺はあそこまで正確に撃ち抜けない。ならばせめて少しでも役立てるよう、使える状態にする速度を上げる。
 工夫も何も無いけど、即座に展開して攻撃態勢に移行できるよう、上手く熟して行くしかない。

 弾倉が空になると交換が必要になる。
 その際には前衛に踏ん張ってもらうわけで。しかもモンスターは前からだけじゃなく、横からも後ろからも来るから気は抜けない。
 スムーズな弾倉交換にも慣れておく必要があるわけで。進弾口にベルトを通し射撃態勢が整うと、掃射が始まりモンスターが片っ端から倒れる。

「手際が良くなったな」

 二十九階層でヴェイセルから褒められた。
 ここまで弾倉は一個半消費してる。現在装着してる弾倉には残弾百二十二発。六個持参してるから帰りの分も考慮して一個。
 三十四階層まで行けるかどうか。階層主相手の戦闘を避ければ、多少の節約はできるだろうけど。

「あの、残弾数が」
「そんなに減ってるのか?」
「帰還分も考えると」
「そうか。ならば少し節約しよう」

 ヴェイセルに言うとモルテンが「ならば前衛も少しは倒そう」となった。
 モルテンが倒すとなると、ほぼ全滅するんだよね。魔法剣を使うと威力が大きいし、相手が何であれ倒しきってしまう。
 物理プラス魔法の組み合わせって、相当強力なんだろうな。
 銃にも同じことができないのかな。ファンタジーで時々見る、銃弾に魔法を籠めたような奴。もっと効率が良くなりそうだけどな。

 三十階層の階層主は重機関銃をセットだけして、使わずにモルテンとアルヴィン、ヴェイセルがライフルで撃ち抜き倒してしまった。
 何ひとつ苦労せずに階層主が倒れてしまう。相手が弱いわけじゃない。このパーティーメンバーが強いから。他のパーティーだと苦戦間違いなしだろうし。

「よし、休憩するぞ」

 モルテンの号令で短時間の休憩に入る。
 飲料をみんなに手渡して、壁に背を預け腰を下ろすと、肩が触れる位置にデシリアが腰を下ろす。

「慣れてきたね」
「さすがに何度もやれば」
「ねえ」
「何?」

 俺を見つめていたと思ったら目を逸らし「あたしに気を使わなくていいんだよ」と言ってる。
 魔法の件だろう。

「感情を対価にしてるけど、今までこれでやってきたから」

 でも、それは惚れた相手が居なかったからだよね。あれ、でも恋愛感情が無ければ、他の感情を持って行かれるんじゃ?

「れ、恋愛感情が無い時は何を?」
「好きになった人は居たんだよ」
「え」
「あ、心配要らないよ」

 手も繋がない相手。淡い恋心を抱いただけで、遠目に見ていただけの存在。
 近付こうという気も無かったと。ただ憧れだろう。その淡い感情は一回の黒魔法行使で消えたそうだ。
 好きになった記憶はあっても、その相手を見ても何も感じなくなった。

「他はね、怒り、悲しみが多いかな」

 ラビリント攻略に参加していると低い対価しか発生しない。

「低い対価って?」
「感情の高ぶりがね、少ないものばっかり」

 怒髪天を衝くような怒りや、沈み込んでしまうような悲しみは、ほぼ発生しない。
 メンバーが強いから常に平常心。強く心が揺さぶられる感情は、やはり恋愛感情なのだとか。
 対価としては大きいから強力な魔法を放てる。

「中層ラビリントくらいなら、低い対価でも問題無く熟せてた」

 中層ラビリントとは四十から五十階層程度を指すそうだ。記録上は八十階層のラビリントがある。ゆえの中層。
 でもここはもっと深いと予測されてる。そうなると今の気持ちを保持できるかどうか。
 奪われてしまったら復活しないのか。それも分からないらしい。

「でも、気遣いは無用だからね」

 無理。もっと力を。
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