不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.58 移動中には会話が多い

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 休憩を終えると三十一階層へと進む。
 ここで三脚に据えた重機関銃の弱点が露呈した。

「固定すると飛ぶ奴に当たらない。自在にするとぶれる」

 反動の大きさがゆえに通常銃架は固定して使う。でもそれだと飛行タイプは狙いづらい。だから自在状態にして撃つけど、今度は反動のせいで銃口の向きが定まらず。
 銃架や三脚が使いづらいんだ。適度に抵抗があって動かせる状態ってのが無いから。少し緩めた状態で撃つと、反動によりさらに緩んじゃうし。元の世界の重機関銃がどうだったかは分からない。でもこの世界の技術だと、これが限界なんだろうな。
 ヴェイセルが苦労しながら射撃をして「イグナーツのように持って撃てないと無理だな」と言ってる。
 やっぱり重機関銃より軽機関銃だよ。ヴェイセルがそれを手にすれば、向かうところ敵無しになると思う。早く開発されないかな。

「じゃあ、あたしの出番だね」
「已む無しだ」

 この階層から三十四階層までは、見た目が派手な魔法で対処できるから、デシリアの感情を犠牲にしないで済む。
 嬉々として魔法をぶっ放すデシリアが居て、時々ヘンリケも参戦し聖法術で排除してる。
 この二人もまた、浅い階層だと過剰だと思う。
 撃ち漏らした飛行タイプはモルテンやアルヴィンが倒す。俺とヴェイセルはここではあまり役に立たないか。でもヴェイセルなら這って向かってくるモンスターなら、ライフルで対処できる。俺には難しい。

 モルテンの剣がヤバそうだから、交換しますと言って折れそうな剣を受け取り、新たに予備の剣を渡す。同様にアルヴィンの剣も受け取り予備の剣を渡しておく。

「どこでタイミングを見てるんだ?」
「前のパーティーでの経験、だと思います」

 パーティーに参加した当初、何度怒鳴られ殴られたか。剣が折れてからだと「タイミングを見てねえのかよ」と言われたし。折れる前に気付けと。
 戦闘に参加できず荷物しか持てないなら、せめて剣の交換のタイミングくらい把握しろ、と言われてた。
 あの頃は殴られたくなくて、必死にタイミングを見極めようとしてたし。
 素材は鉄だし刃の薄い剣や厚い剣、様々にあって凡そだけど、タイミングが掴めるようになったのが一年前くらい。
 以降は別のことで文句を言われ殴られてたけど。
 経緯を説明すると、みんなが揃って「理不尽だ」と言ってる。

「でも、お陰でこうして役立てます」
「感覚を掴ませる上で殴る必要は無いだろ」
「そうだな。口頭で言えば済む話だ」
「使ってる本人が分かってれば問題無いと思うけど」

 あいつらには折れるタイミングなんて分かってない。力任せに剣を振ってるだけ。ハルバードだって使ってれば壊れる。でも、いつ壊れるかは理解してない。
 振動や衝撃を幾度も加えていれば、手元に伝わる感覚でヤバそう、なんて分かりそうなものなのに。全部丸投げだったな。
 それにしても簡単に折れる剣だとは思う。魔法を纏わせて折れるのは、何となくだけど分かる気もするけど。もしかして靭性が不足してるのかな。元の世界だと中世中期くらいの西洋剣は折れ曲がる、ってのは聞いたことあるけど。折れてるんだよね、こっちの剣。

「あの、剣ってなんでこんな簡単に折れるんです?」

 なんか驚かれてる気がする。

「折れるものだろ?」
「え」
「折れにくい剣を一本持つより、使い捨ての方が効率がいい」

 頑丈な剣であっても長く使っていたり、敵次第ではガタが来る。だから予備を複数持って、不測の事態に備えるのが、ラビリント攻略には欠かせないのだと。
 鎧を纏ったかの如きモンスターも居れば、柔いのも居るし、金属を腐食させるモンスターも居る。攻略中に破損するのであれば、強度を考えるより数で勝負なのだそうで。

 こんな話をしながら三十一階層から三十二階層へ進み、魔法剣とデシリアの黒魔法で先へと進む。

「デシリアさん。感情、無くなったり」
「愛してるよん」

 照れるってば。思いっきり笑顔で言うし。

「あ、イグナーツから愛の囁き、聞けてないなあ」
「えっと」
「聞けると嬉しいし、もっと頑張れるんだけどな」

 その言葉を口にするのは難易度が高い。でも言うべきなんだろうな。そんな経験すら無いけど。女子に告白だってしたこと無いし。
 デシリアを見ると期待してるよね。言え、って圧が凄そうな気もするし。
 これは言わざるを得ないか。

「えっと。デシリアさん」

 わくわくって感じで見てるし。

「す、好き」
「イグナーツ。それじゃない」
「あ、えっと。あ、愛してる」

 口元が緩んだデシリアが居る。でも言ったのに「もっとスムーズに口にして欲しいな」と、要望されてしまった。

「イグナーツ。頑張れよ」
「さっさとベッドに押し倒せば、スムーズに出るようになるぞ」
「ベッドで囁くともっと効果的なのよ」
「そうだな。ここじゃなくてな」

 周りに揶揄われる始末だ。ベッドとか、年取ると平気で口にするんだよ。俺にはハードルが思いっきり高いんだけど。
 当分、今以上の付き合いは無理な気がする。積極的なデシリアだけど俺が尻込みしちゃうから。もっと頑張ろう。デシリアの感情を無くさないためにも。

 なんだか緊張感に欠ける攻略だよね。みんなそれだけ余裕があるんだろうけど。こうして話をしていても周囲への警戒はしてるし。モンスターと遭遇すれば即座に対応できるし。キャリアの違いは大きい。

 三十二階層もクリアすると三十三階層へ出る。
 地を這うモンスターが大量に出てくる場所だ。重機関銃が役立つ場面でもあるんだろう。
 会敵したら重機関銃をセットし、ヴェイセルに引き継ぐと片っ端から排除してる。撃ち漏らしも殆ど無く確実に仕留めてるし。さすがに数が多いことで弾薬の消費量も増えるけど、予備を考えると好き放題ってことはできない。
 きちんと理解してるモルテンやアルヴィンが、残敵を丁寧に排除し第一弾は終了した。

「やはり機関銃があると楽だな」
「数が多くても負担は少なくて済む」
「あとはあれか。弾薬の数を」
「ああでも、イグナーツに無理させる気は無いからな」

 荷物の量を極端に増やす気は無いんだ。持てるだけ持てば戦闘にも支障が出そうだし、その辺もきちんと考えてくれるようだし。
 と言うことだけど、まだ余裕はあるから弾薬は充分に用意して持参しよう。

 三十四階層まで来ると例の蜘蛛だ。頭胸部を狙い撃てば一撃で葬れる。
 ここでは数で押してくるわけじゃない。だからヴェイセルも重機関銃を使わず、ライフルで一匹ずつ確実に倒して進むようだ。
 そして三十五層の階層主戦だけど、ヘンリケの聖法術で倒してしまった。
 使ったのは水流。高圧の水流を発生させ階層主にぶつけ、そのまま溺死させてたようだ。水の中に取り込まれたことで、身動きが取れなかったみたい。水生昆虫じゃないから、そうなるよね。

 三十五階層で休憩を取り引き返すけど、ラビリント内に居ると時間の感覚が、どうしても少し狂ってくる。外光が無いから昼なのか夜なのか、分からないってのが。
 地上に戻る際も場所によって重機関銃を使い、モンスターを排除しながら進む。

 とりあえず重機関銃を試して、納得の表情を見せるヴェイセルだ。
 明日は弾薬を仕入れに行くそうで。深く潜るとなると大量に必要になる。だからだろうけど、俺には無理をさせないとは言ったけど、無理してでも運ばないと不足するよね。

 何度も戦闘を熟し地上に帰還した頃には、すっかり日が暮れていて守衛が帰る頃だった。

「シルヴェバーリが珍しいな、こんな時間まで」
「いろいろ試していたからな」
「もう少しで門を閉じて帰るところだったぞ」
「少々遅くなった」

 守衛との会話を済ませホームに戻ると、明日はヴェイセルの都合もあり休養日に。
 モルテンは家族の下に帰る際に、探索者ギルドに寄って換金するそうだ。

「あの、デシリアさん」
「明日だけどね、編み物するから」

 デートに誘おうと思ったのに。
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