不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.68 ご褒美は攻略後らしい

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 夕食が済むと自室に戻るデシリアだけど、あとを追って声を掛ける。

「あの、さっきのことだけど」

 デシリアの部屋の前で振り向いてきて、またも頬を赤く染めるデシリアだ。少しばつが悪そうな感じで「な、何? 有言実行だからね」とか言ってるし。なんか無理してそうだし、周りに急かされて口を衝いただけだと思う。
 ここはフォローした方がいいんだろう。

「えっと、その、無理はしなくていいから」

 あれ? 幾らか口がへの字になった。機嫌を損ねるようなことは、言ってないと思うんだけど。

「抱きたくないんだ」
「え」
「ふぅん。そうなんだ。ガサツで魅力ないもんね、あたし」
「え、あの、違くて」

 ヤバい。なんか違う風に受け取られた。
 ガサツだなんて思ってもないし、魅力が無いわけないし、好きだと思う気持ちは強い。許されるならデシリアと、なんて思うこともある。ただ、まだそこまでの関係性は築けてないと思うから、何も言い出せないし手も出せないわけで。
 違うな。勇気がないだけ。

「いいよ、別に。ヘンリケとやれば?」
「ち、違うって」
「ヘンリケ、魅力的だもんね」
「違うっての。俺が好きなのは」

 女子って、こんなに面倒な存在なの? 経験が無いから分からなかったけど、やっぱり手の掛かる存在ってことなのか。
 元の世界でも面倒臭いから恋愛なんて、と思っていたけど。だから一線を越えた付き合いは一切しなかった。いや、ここで見栄を張っても意味無いな。恋愛対象として見られなかっただけだと思う。
 でも今は違う。

「デシリアのこと、愛してるし、いつだって抱きたいと思ってる」

 言ってしまった。己の内に秘めた欲望を。
 さっきにも増して顔全部真っ赤。ふるふると小さく震えてる感じだ。たぶん俺も自らの言葉で、顔が熱いのを感じてる。
 悶絶しそうな程に恥ずかしい。でも誤解は解かないと。

「変態」
「え」
「でも、愛してるって言った」
「あ、えっと」

 視線も態度も落ち着かない感じで、俺を見たと思ったら抱き着いてきて「あたしは、いつかこの気持ちを失うかもしれない。でもイグナーツが強く想い続けてくれれば、きっと気持ちは蘇ると思うんだ」と言って、キスしてきた。
 唇が離れると「アヴスラグの攻略が済んだら、お互いの気持ちを確かめようね」と言う。

 そうだよ。黒魔法を使えばリスクはある。俺が傷付けばなりふり構わず使うだろう。
 だからこそ、俺が強くデシリアを愛していないと。また気持ちが燃え上がるように。何度でも同じ相手を好きになれると思うから。根拠は無いけど。次は好きにならないかもしれないし、また同じように感情を抱くかもしれないし。
 まあいいや。その都度一からやり直し、かもしれないけど。でも、それでいい。
 俺の気持ちは変わらないと思うから。

「あたしがイグナーツを守るからね」

 そう言って自室に入ってしまった。今も実力は無いに等しく、守られる存在でしかないのか。いつか俺がデシリアを守れる存在になりたい。

 あ、そう言えば「戻ったら」が「アヴスラグの攻略が済んだら」になってたような。当分お預けってことか。いいけど、焦るようなことじゃないし。
 先は長そうだ。

 翌日、いつもと変わらないデシリアが居る。
 密着度合いも変わらずアヴスラグに向かう際も、しっかり腕を絡めて歩いてるし。

「荷物、重くない? 歩きづらいとか動きにくいとか」
「大丈夫」
「無理しないでね」
「まだ余裕あるんで」

 余裕があるとは言い難い。さすがに重量オーバー気味。腰とか膝に来る。鍛え方が足りてないな。この程度で音を上げていたら、スカラリウスは使えない、を証明するようなものだ。いざとなれば前衛を二人、担いで歩けるくらいにならないと。
 心配するデシリアを他所に、思いっきり強がって見せておく。
 
「攻略再開だけど、今日こそ五十階層に到達しようね」

 五十階層に至れば魔法陣で行き来できる。お金は掛かるようだけど。
 四十九階層分をスキップできれば、無駄に時間を浪費しなくて済むから。一階層から向かってたら最下層には辿り着けないよね。
 デシリアの絡む腕とは反対側に、ヘンリケが寄って来て耳打ちしてる。

「戻ったらするの?」
「いえ」
「あら、昨日のは」
「アヴスラグ攻略後です」

 少し呆れ気味なヘンリケが居て「じゃあ、あたしが先に」とか言ってるし。聞こえていたようで「ちょっかい掛けないで」だって。
 それに対して「デシリア、いつまで経っても放置してるじゃない」って、そうじゃないと思う。

「放置してない」
「あたしなら今夜にでも」
「爛れた関係になる気は無いから」
「爛れてないけど。普通でしょ」

 この二人って。でもヘンリケはそうやって背中を押すんだろう。見ててもどかしいのかも。

 アヴスラグに潜ると浅い階層は順調に進む。荷物にも慣れてきた。
 十三階層で別のパーティーと遭遇。かなり苦戦していたようだけどモンスターを排除した時点で、俺たちに気付いたようだ。こっちは後方で戦闘を見ていただけ。
 モルテンを見て「あ、シルヴェバーリだ」なんて言ってるし。遭遇したのは若手探索者パーティーのようだ。デシリアが「エンサムオルンってパーティー」と教えてくれる。孤高の鷲って意味だけど。鷲とか鷹のような猛禽類って、気高そうに見えるから憧れもあるのかな。
 軽く挨拶を交わし先へと急ぐと言うと「荷物持ちって必要?」だって。

「必要だ」
「浅い階層しか知らないと、重要性には気付けない」
「でも、戦闘で邪魔になるでしょ」

 呆れ気味にエンサムオルンのメンバーを見る、うちのメンバーだけど。

「まあ、いずれ理解する」

 そう言うと先へと急ぐようモルテンがうちのメンバーに促す。
 さっさと歩みを進めると「後ろから見ると荷物が歩いてる」なんて言ってるし。

「気にしなくていいんだよ」
「全然気にしてない」
「そう? あんなこと言ってる連中は、すぐに行き詰まるから」

 三十階層を超えた辺りから物資不足に悩まされる。各個人が物資を持ち戦闘を熟すのは、浅い階層でしか通用しないから。
 武器だって消耗するし水や食料だって不足する。結局、地上に戻らざるを得なくなり、深い階層にはいつまでも辿り着けない。
 分かっていそうだけど荷物持ちを使いたくないんだろうな。自分たちより圧倒的に下の存在。びた一文支払いたくないだろうし、自分たちの命運を握られる、と思わされるのも嫌なんだろう。攻略の優先度よりプライドが優先するんだ。

 先へと急ぐと十八階層で、またも他のパーティーと遭遇した。
 女性だけのパーティーのようで、デシリアが「ソルロスフリッカだね」と教えてくれる。意味がなあ、ひまわり娘だ。陽に向かって笑顔を絶やさない、そういう意味を込めているのだとか。

「あ、デシリア」
「ねえ、ひとり増えた?」
「次期リーダー」
「え。荷物持ちだよね」

 さすがに次期リーダーは無い。デシリアがリーダーで俺は荷物持ちでしょ。

「荷物持ちをバカにしちゃ駄目だよ」
「でも戦闘できないでしょ」
「できるよ。武器さえあれば」
「うっそお」

 冗談としか受け取らないよね。暫しデシリアと話をする女子たちだけど、やっぱり荷物持ちを下に見るようで「足引っ張られるよ」なんて言ってるし。確かにそうだけど。でも多少は役に立ってると思う。

「いずれ分かるよ」
「そう? まあでも、シルヴェバーリだし、デシリアは生き残るね」
「荷物持ちは死ぬと思うけど」
「逃げる時に邪魔になるもんね」

 散々な言いようだ。機嫌の悪そうなデシリアが居る。
 こっそり「機関銃で蜂の巣にしちゃえ」とか言ってるし。殺人はしないから。クリストフたちの頭を銃で撃ち抜いて、なんて考えたこともあるけど。
 考えただけで実行はしない。

 モルテンやアルヴィンを見ると、哀れみを感じてるようだ。
 ヘンリケが「凄いのにね」と言って股間を見てるし。そこじゃなくて背中でしょ。股間は凄いとは言い難い未使用品だ。
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