48 / 161
第三章 異世界の馬車窓から
熊澤さんとブージェ
しおりを挟む「いや~、待ってたよ!」
僕はヤギ家の居間で寝転がって居たところを取り囲まれて、飛び起きた。
「ホントホント、家に来るって聞いて、今か今かと待ってたんだよ!」
どうやら熱烈大歓迎を受けている。
「本当によく来て下さった。
ずーっとここに居てくれて良いからね」
そう、思いもよらぬ大歓迎だ……
「ささ、こちらへ来て下さい」
「クマザワサン!」
熊澤さんが、ね………。
*****
農家にとって、厄介な害獣が居る。
小さくて素早しっこく、頑丈な歯で木箱も土壁も穴を開け、収穫した作物だけではなく、刈り入れ間近な野菜や、下手すると果実の実った樹木さえ倒してしまう、ブージェと言う小動物の事だ。
めっちゃアゴの強いネズミみたいなものか?
勿論辺り一面のブージェを退治してからここを農地に切り拓いたのだけど、最近何処からかやって来て、畑を荒らすそうだ。
「ブージェは一匹居たら30匹居るって言われてるからな」
ゴキブリかよ。
「頭が良いから罠にも掛からないし、毒入りの餌を撒いても食わないし」
「他の動物けしかけても返り討ちになるだけだし」
「そこでこのタタンジュ様よ!」
ずずずいっとヤギ家の人達が詰め寄って来る。
「素早くて小回りが利き、本体スリムだから狭い隙間も大丈夫!」
掃除機の宣伝か何かですか?
「ささ、パパっと追いかけて、その鋭い爪でバシッとやって、カプッとやって毒でコロリと。
その後は俺らがチャチャっと回収しますから」
擬音だらけだな。
「さぁさぁ、タタンジュ様、宜しく頼みますよ」
目をギラギラ……キラキラさせた、鼻息の荒いおじさん達がさらに距離を詰める。
怯えた熊澤さんが身をすくめる……首に巻きついて居るから、必然的に首が締まるんどけど……。
苦しいよ熊澤さん。
首から取り外して抱っこする。
あー、凄い期待されてるけど、言わなきゃダメだよね……言いづらいなぁ………。
「なーに無茶な事言ってんだ、そりゃあタタンジュはブージェの天敵だけとな」
へー、そうなんだ。
「タタンジュの即効性の神経毒が有れば、ブージェ被害を防げるじゃないか」
「だがクマザワサンはウチ様のペットだぞ、貸してもらえる訳無いだろ」
ベエさんが家族の人達に諦めるよう説得してくれてるけど、
「あのー、そのブージェってタタンジュの毒が有効なんですか?」
ハイって右手を小さく挙げて聞く。
「ああそうさ。
タタンジュの毒は効きが早いからな」
あー、やっぱりハッキリ言わないといけないよな。
「すみません、熊澤さん毒抜きしているので、毒を期待してるなら無理だと思います」
僕の言葉におじさん達の目から、キラキラが消えたけど、僕悪く無いよね?
*****
熊澤さんは無理だけど、困っているのは放っておけない。
僕はピアを読んで熊澤の通訳を頼んだ。
こちらの要求はブージェを退治して欲しい事。
それと人は襲わない事。
熊澤さんからは、人がタタンジュに危害を与えない事。
捕獲したブージェはタタンジュ達の食糧とする事。
ブージェが居なくなったら解放する事。
それが守れるなら同族に、ここでブージェ退治をする様に頼んでくれると。
ヤギ家はこの条件に更に、ブージェが獲れようと獲れまいと、毎日の食事、さらには退治終了後に報酬として肉を渡す事を上乗せした。
本当に困って居たようだ。
これに了承した熊澤さんから頼まれて、音の子にタタンジュの生息地へ飛んでもらい、熊澤さんが間に入る事によって、交渉は成立した。
良かった良かった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あけましておめでとうございます。
元旦早々読んでいただきありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。
2
あなたにおすすめの小説
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる