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第三章 異世界の馬車窓から

スローライフってやつかな

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「タタンジュは危険な魔獣なのに……」
スイの嘆きの呟きは、聞かなかった事にした。

……聞かなかった事にする事が多い気がするけど、きっと気のせいだよね。

うん、気のせい気のせい。


*****


ヤギ家の農地は広大だ。
日本なら東●ドーム幾つ分とか言うのだろうけど、あれって東京近郊に住んでないと、全然イメージわかないよね。

あ、話が逸れた。

ラグノルから南西にかけての土地で、その場所に合った作物を育てている。

一番土地を使ってるのが麦、続いて芋類、後は季節ごとかな。

そして米。

この世界では元々パン食だし、今でもパンや麺類が中心だ。
けれどやはり日本人には米!って訳で、英雄家系の人達や、たまには違うものを…と言う人達の腹を満たしている。

「この世界の米は田んぼではなく、麦と同じ様に畑で育つんだ。
実は米って呼んでるけど、正確には違うんだけどね」

案内してもらった米畑は、一見普通の田んぼだけど、近寄ってみると、成る程畑だ。
水が張られていない。

稲だと思った物も良く見ると、ススキに近いのか?
農作物はよくわからん。

「これを見つけたのはトモ家の初代と言われている。
初代様が米を食べたいと言った言葉で、野山を駆け巡り見つけたのがこれだそうだ」

ふーん、トモ家って確かオダと同じ時代の家臣とか言ってたけど、主君の要望にキッチリと応えたって感じか。

家臣って言うと、も●、柴●、徳●、丹●、羽●、明●、松●とかしか浮かばないよな。
まあそこまで詳しくないんだけど。

「元々は雑草として扱われてたものなんだけど、今ではウチの爺さんが改良して、他の国でも需要が増えてるんだ」
案内してくれてるのは、ベエさんの息子さんの、ヤギ・ベエ・コセさん。

ベエさんが馬車で言ってた様に、見た目年齢で言うと、ベエさんと同じ年、下手すれば年上に見える。
近々息子さんに跡を任せて隠居する予定だそうだ。

「しかし広いですねえ」
「まぁ…爺さんが頑張って来た証だな」
シワシワの顔をくしゃくしゃにして誇らしげに笑う。

ああ、なんだろ、本当に良いな、ヤギ家の人達って。

大自然の中で楽しそうに働く人々、サポートする動物に妖精。
仕事だから嫌々にとか、やらさせてる感は一切無く、皆生き生きしている。

夜は皆集まって一緒に食卓を囲み、お風呂に入った後は、座敷に布団を並べて就寝。
あー思い出すなぁ、小学生の夏休みに遊びに行ったじいちゃん家。
ただこちらは藁葺き屋根の日本家屋じゃなくて、外観は西洋のお城だけどね。

それとケモミミの方々が居て、必要以上にペタペタされるんだけどね。
でもトータル的には、田舎に行った時と同じ様に和むんだよなぁ。


翌日からは僕も農作業の手伝いをした。
いかんせん幼児体型、本当に【お手伝い】の範囲だけど、雑草を抜いたり、食べ頃のとまとの収穫を手伝ったり。

重宝されたのが、農作業を補助する牛や馬の世話の補助。

洗ったりブラッシングなどは無理だけど、僕が機嫌をとってその間に他の人が世話をすると。
僕が構うとどんな動物でも仔猫ちゃん状態だからね。

成長して身体が大きくなったら、動物の世話もっと出来るのに、この幼児体型は本当勘弁して欲しいよな。
あー、なんだろう、もうこのままここで暮らしたいなぁ。


滞在四日目にはタタンジュが到着したので、ピアに間に入ってもらい、交渉完結。
害獣対策もバッチリで、充実した日々を過ごした。






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