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第三章 異世界の馬車窓から

残りの滞在は穏やかだったよ

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秋彦さんとヤシさんは、あのまま旅に出ていて、それを知ったスイは、口では「あの人達は」と言ってたけど、滅多に城から出てこない息子に、母親と会う時間を作ってあげたヤシさんの気持ちは伝わったようだ。

……きっとそうだよね?

本当にビックリさせたかっただけとか、スイに怒られそうだから逃げた、とかじゃないよね?


ヤギ家で畑の手伝いをしたように、トキ家ではお店の手伝いをして過ごした。

「まぁ、こんなに小さいのに計算が早いのねぇ」
とか、
「お手伝いして偉いわね」
など、買い物に来ているオバ……奥様達に過剰に褒められた。

そして皆、
「賢い子には甘ちゃんあげようね」
と、砂糖をまぶしたドライフルーツの【甘物(あまもの)】、通称【甘ちゃん】をくれるのだ。

日本でご年配の女性が「飴ちゃんあげようか」のノリだな。
美味しいけど、甘過ぎて食べきれないので、トキ家の女性陣にお裾分けしてなんとか消費した。

そして暇が出来ればついつい武器屋に行ってしまうのは、男のサガだよね。

僕が店の手伝いをしている間、スイは事務所仕事を手伝っていた。
熊澤さんは食べ物系のお店の手伝いの時は留守番だ。

ニヤ達に世話を頼んでいるので、手間かけてるなぁと思うけど、本人達からは、呼んでもらえないより、役に立つ方が嬉しいから、ドンドン呼んでと言われた。

熊澤さんには、留守番のご褒美として、ちょっと贅沢なお肉をあげているけど、口が肥えたらどうしょう。
ニヤ達のお礼は、本人達のリクエストで
『とうちゃんにくっ付く時間の延長』
だそうだ。
そんなのでお返しになっているのかなあ。

そんな感じで残りの滞在日を過ごした。
スイの色んな顔が見られたのが一番の収穫かもしれない。
……スイには内緒だけどね。


*****


「どうだったよ、トキ家は。
ヒコさんにも会ったんだろ?」
案の定ニトがスイの居ない時を見計らって部屋に来た。

「ニトも秋彦…ヒコさん知ってるんだ」
「勿論。
ヒコさんとうちのひい爺さん仲良いからな。
俺も小さい頃から可愛がってもらってるよ」
「あ~うん、何となくわかるわ。
どっちかって言うと、スイの身内ってより、ニトの身内って言っても納得いく感じだったな」
「だろ~、あの家ってモロ商売人か、自由人ばかりなのに、スイとケチさんだけなんだか違うんだよね」
「分かるわ~」

熊澤さんを膝に乗せて撫でながら、ニトと会話する。
左右の肩にはニヤとピヤが乗っている。
ご褒美?お礼?のサービスタイム中だ。

「次はうちだっけ?」
「いや、外務大臣の家だった筈」
確かキシ家だったよな。

「あー、ルツさんか」
ニトの言い方に引っかかった。
「何かあるの?」
「いや、何があるって訳じゃなくてさ、気性的にはケチさんなんだけど」
真面目って事か。
「でもさ……薄いんだよ」
「薄い…………?」

ニトの言葉に会議室や晩餐会で会ったルツさんを思い出す。
……思い出す………………うん、確かに薄いな。

いや、身体がとか、頭髪がじゃなくて、存在感が薄い。

会話した筈だけど、覚えていないし、何より顔を思い出すのにも時間がかかった。
外務大臣と言うより、隠居した五軒ほど隣のお爺ちゃんって感じだよな。

ヤギ家やトキ家は家業の手伝いをして時間潰したけど、次は何かする事があるのかな?

まぁのんびりと過ごそう。




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