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第三章 異世界の馬車窓から

もしかして、僕ってぼんやりさん?

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「我が家の書は不評か~、曾祖父さんに引いてたって伝えとくわ」
「最初の一冊だけで充分だよ」

僕達のやりとりに、中身を見ていないスイが、あまりよろしくない内容だと察して、冷たい視線をニトに送る。

「家系の恥になるような書は封印させた方がいいでしょう」
「いや~、曾祖父さん二冊目からの方がノリノリだからなぁ。
それならこっちはどうだ?」
ワゴンの上に残っていた、他と違う一冊を手渡された。

【異世界の考察】

表紙にそう書かれた古い大学ノート。
うん、日本の良くある大学ノートだ。

今までの書はこちらの世界で作られたであろう、めの荒い紙…わら半紙に近いかな?にペンで書かれていたものだけど、これはどう見ても普通のノートにボールペンで書かれているよな。

「これ、曾祖父さんの私物だけど、見せてやれって預かったんだ」
「ちょっと良いですか」
と、スイが僕からノートを受け取り、パラパラとめくって声を上げる。

「これは…こんなに白い紙を初めて見ました。
それになぜインクがカラルフなんですか?」
覗いてみると、成る程カラーペンだね、赤や青のペンを使って書かれている。
それに変色しているけど、蛍光マーカーでラインを引いただろう箇所もある。

んん?染料は有るけど、カラーインクは無いのか?
文字は黒で、と言うのが常識なら、色付きの文字は驚きなのかな?

「それに…見たことのない文字ですね。
ウチ様の世界の文字なのですか?」
ええ⁈……あれ、確かに普通に日本語で書かれているよな。

あれ?ちょっと待て、今までの書とか、本とか書類とか、店の看板とかってこちらの世界の文字じゃなかったか?
普通に読めてたけど、何で?

「え?何だかビックリした顔してるけど、もしかして文字の違いに気がついてなかったとか?」
ニトに言い当てられて頷く。

「多分祝福の影響だろうけど、後で妖精に聞いてみるといい。
しかし疑問に思っていなかったって方が驚きだよ」
「そう言えば我が家へいらした時も似たような事を、高祖父殿に言われていましたね。
……ウチ様はもう少しこちらと元の世界との違いを理解した方が宜しいかと思われます」

あ~、そうね。
きっと山田さんとか牧さんみたいなオタクの方なら、異世界あるあるとか言いながら、二つの世界の違いに驚いたり、元学者さんとか、元医者とかなら、なぜ違う世界なのに通じるものがあるのか熟考するんだろうな。

何も考えずに受け入れてる僕って……ヤバイのか?
これからはもっと細かい事にも注意を払おう。


*****


大学ノートの内容は、牧さんの覚え書きの様なものだった。
他の英雄の人達と会って話した事柄などを纏めたり、自分なりの考えを書いたりしている。

内容は…
・妖精を取り込む事で波動が変わり世界に馴染む
・異物だった召喚者が世界の一部とみなされる
・取り込んだ妖精の魔法を使える
・取り込む数が多い程使える妖術が増える
・寿命も増える
・感情が伝わる
・妖術は、魔物が使う魔法と別扱いらしいが、詳細不明
・妖精については会話が成り立たないので、解明不能
・日本との間にゲートが有るのでは?
・他国も召喚しているそうだが、成功しないのは何故なのか
・近隣国とのパワーバランス
・北方大国の暗躍?
・魔物の現状
・王家の石…………

書かれている内容が、牧さんから想像つかないんだけど……。

めっちゃ色々考えていたんだね。
ぼんやりと流されてる自分と大違いだ。

そう言えば城で見た歴史書は牧さんが書いたんだよな。
何で牧家の書はあんなのなんだろう……。

それにあのネットスラング?
わざとやってるのか?キャラ作りなのか?
もう一度きちんと話をしたいな。
そう思わすには充分な内容だ





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