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第三章 異世界の馬車窓から

道中〜ネイ団長との話 1〜

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翌日は次の場所へ出発の日だ。

この国は…牧さんとの衝撃的な出会いに始まって、魔物の方々から囲まれて……ちょっと真面目な話をしたと思ってたら…………波乱万丈だったなぁ。

「このままここに居てもいいんだよ」
「いや、遠慮します」
「なんだよ~、同じ時間帯から来た仲間だろ」
「いや、結構です」

ここに居たら身の危険を感じる。
そのうち魔物の人にマジで攫われそうだよ。
今も見送りに集まっている人達の視線が……。

それにまたいらぬ事で責められたり、女性を斡旋されたりしそうだし………。

「そう言えば秋彦さんは?」
「ああ、アッキーは神出鬼没だからね」
牧さんが寄ってきて耳元で囁く。

「スイスイに見つかったら怒られるから逃げるって」
成る程、納得です。

「気が向いたらまた遊びに来て下さいね」
ロリさんに言われると無下に出来ないけど、
「……善処します」
としか答えたくない。

ほら、今も【俺の嫁】さん達の手がワキワキしてるし……。

「じゃあ曾祖父ちゃん、またな」
軽く手を振ったニトの背中にスイの拳が……。

「ゴホン……それではユウ様、失礼致します。
ラグノルにいらした時は、是非うちにもいらしてください」
言い直したニトに、満足気に頷くスイ。

「それでは失礼致します」
スイも優雅にお辞儀をして、僕達は馬車に乗り込む。


とても濃い5日間だった。
取り敢えずこの国で暮らすと言うのは無いな。

この国だと、年がら年中身の危険を感じなきゃあいけないだろうから。
うんうんと頷いていると、スイが声をかけてきた。

「あの…ウチ様、先程聞き間違えかも知れませんが……」
「あ?秋彦さん?昨日来てたよ。
3人で話をしてたんだ」
スイの聞きたいだろう事を先に答える。

「何やってんだあのクソジジイ」

「「ええ⁈」」
スイの呟きが聞こえてしまった僕とニトの声が揃う。

今の聞き間違えじゃないよね?

思わずニトに視線を向けると、ニトがうんうんと頷く。
そーっとスイに視線を戻したけど、何かありましたか?とばかりに、いつものポーカーフェイスが有るだけだ。

やっぱりスイは秋彦さんに対しては地が出るみたいだ。

そして僕達は馬車に揺られて野宿をしながら、ラグノルの北、国境の町【オワリ】に向かった。


*****


オワリへ向かう道中、話を聞くために団長さんにも馬車に乗ってもらった。

オダ・ラト・ネイ、軍務大臣のオダ・モト・ラトさんの息子さんだ。

団長さんとはあまり話をしたことがない。
今回の道行きでも、団員さんとは割と話をしたけれど、団長さんとは挨拶くらいしかしてないな。

んん?それより団長さんがスイ以外と話してる姿を見ていないような?

「団長さんって他の団員さんに距離を取られているとか?」
隣に座るニトに小声で聞いてみたけれど、狭い馬車の中、他の二人にも聞こえていたようだ。

「ウチ様、そんな事は有りませんよ」
スイが言うのを引き継ぎニトも言う。

「そうだな、逆に好かれ過ぎる事はあっても、嫌われるって事は無いな」
「そんな事は有りませんよ、上の者は疎まれるものですから」
本人はそう言うけれど、疎まれているとは思えないな。

団長さんは強いだろうし、見た目だけでも人を惹きつける感じだし。

一重で切れ長な目、鼻筋は通っていても高過ぎず低すぎず、全体的に和風な顔つき…古い言葉で言うと醤油顔?

ストレートの長髪を後ろで一つに縛っているし、持ってる武器も日本刀と言うのも事も併せて、美麗の剣士って感じ?

イケメンなんて言葉だと軽く感てしまう、同じ黒髪美形のスイとは趣きが違う、少し色気のある美形だ。

ニトは普通にイッケメーンって感じだし、三人が三人とも見た目が良い。

きっと山田さんとか見たら飛び上がって喜びそうな状況だ。

…………うん、秋彦さんや牧さんの言うように、これは何だか普通じゃない感があっても仕方ないかな。
美形の男ばかりに囲まれているのが当たり前となる前に、女性成分補給したい…。

などとくだらない事を考えながら、向かい側に座っている団長さんを見ていてふと気になったんだけど、微妙に視線がずれてる?

「それで、何をお話しすれば良いのですか?」
視線をずらしたまま団長さんが聞いてくる。
「あ、そうですね、オワリの町ってどんなところなのですか?」
前もって情報を得て、心の準備をしておきたい。

「そうですね、ラグノル国の一番北に位置する町です。
防衛の意味も有りますね。
近隣国とは友好関係を結んでいますが、北方の大国の動きがわかりませんので」

北方の大国…人至上主義の国だったよな?
でも、山脈の向こう側なんだよね。
まあ、山越えして来る事もあるだろうから、警戒は怠らない方がいいよね。

「初代様…オダ家の始祖様が、功績を認められて、領地を拝領する事になった時に、国の護りの意味も兼ねて、この土地をいただいたそうです。
その時に一緒に召喚されたトモ家と共に何も無い場所を開拓し、町を築き発展させたと言う話です」

昔の西洋で言うなら、辺境伯みたいな感じかな。

「他の方々が町を築いた場所は、元は他の小国や、砦のあった場所を再利用したのが殆どだそうですよ。
何も無い場所を開拓するのは大変な労力が要りますからね」
スイの補足の言葉だけど、確かに、ヤギ家も砦跡地で、その砦をそのまま使ってたよな。

「何も無いからこそ、好きに町を造れたと聞いています。
オワリはこの国……この大陸では異質ですから」
異質?何だか不穏な感じがするんですけど……。

「城から馬を飛ばしても一日以上かかるし、馬車なら3日近くかかるからね、もうラグノルの町の一つと言わずに、一つの国と言っても良いと思うんだけどね」
「そう言われた事もあるそうですけど、初代様のお考えはわかりません」

そうだよね、そんなに遠いい上に、異質とか言うのなら、マモランドみたいに国にしても良かったのでは?
その辺りも書を見せてもらえればわかるのかな?

話をしながら、旅は続く。





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