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第五章 問題は尽きないようです

いや……スイは反則でしょう…

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そして最後はスイと髭だ。

「閣下、また鍛錬場壊さないでくださいよ!」
「その兄ちゃんも壊すなよ」
「いや、閣下の相手したら壊れるだろう」
「どっちの相手だよ」

下品な笑いと罵声が飛び交っているけれど、スイは平常運転だ。
僕をからかわれた時は、かなり怒っていたけれど、自分の事ならスルー出来るようだね。

流石アラエイ……ゲフンゲフン。


「体格差があり過ぎるなぁ、武器でも術ってやつ使っても良いんだぞ。
なんならハンデをやろうか」
二人とも武器を持っていない。
体術勝負の様だ。

「いえ、私は戦う事を生業としていませんから、武器は使った事がありませんので結構です」
まぁスイが武器を持っているのなんて見た事ないけどね。

髭はスイの返答に楽しそうに笑い、両手を打ち付ける。
「んじゃまあ、お相手してもらおうか」
こう言う人って戦闘狂って言うんだよね、めっちゃ嬉しそうだ。

「………………始め!」
開始の合図があがっても、二人とも動かない。
動かないけれど、戦いは始まっている。

何ていうの?覇気?を飛ばしあっているのがわかる。

いや、見えないよ。
妖精達のお陰で感じ取れるだけ。

スイが凄いのは知ってるけれど、髭もなかなか凄い。
ニヤの視線を借りて見ると、体を包み込むオーラ?ってやつが見える。
それをお互いに向けて飛ばしあっている。

髭も伊達に国のトップじゃあないって事だよな。
しかし普通の人間には、こんな不可視の戦いなんてわからないから、至る所からヤジが飛ぶ。
見えないにしても感じ取れる人は、息を詰め二人の戦いを見ている。

ラグノルの面々は、見えないにしても、妖精との感覚共有で感じ取れているようだ。
凄いだろ、ラグノルの民は!

ドヤ顔でフェンディスの人達を見ていたら、状況は動いたようだ。

髭がスイに走り寄り、上段蹴りを繰り出すが空振る。
身を引きそのまま回し蹴り……その後も、一方的に攻撃を仕掛けている様に見えた。
けれど、よくよく見ているとわかるが、スイは全てをいなしている。

つまり、一撃も浴びていない。
それどこほか、掠りさえしていない。

薄っすら汗が浮き出した髭に比べて、スイは息一つ乱していない。
と言うより、全然力を出していない。

まぁ、いくら強者と言えども、人間相手にドラゴンハーフのスイが力を出せるわけがない。

髭は攻撃をやめ、拳を下ろした。
「ふー、強いと思ってたけど、全く相手にされないとはね。
埒があかないから俺の最高の一撃を出してやる、それを防いだらあんたの勝ちだ。
つーよりも、そいつを防がれちまったら、こっちの手は尽きるからな」

そう言って髭は深く息を吸い込み足に力を溜める。
正しいよな、渾身の一撃って拳の力じゃなく、どれだけその拳に力を乗せられるかだから……なーんてわかった風な事を考えるうちに、髭の拳がスイに向かって繰り出される。

スイはその場で避けもせず、髭の一撃を、左手で受けた……って、そりゃあ無いよ、せめてこう…クロスした腕で受けてカウンターを喰らわすとかさぁ……。
利き手でも無い掌で受けるとか、髭の立場はどうなのよ。

受け止められた髭はニヤリと笑い、
「あー負けた負けた。
勝てると思ってなかったけど、一発も入れられないなんて思ってなかったよ」
負けたのに嬉しそうに笑うとは、脳筋ならではなんだろうね。

「どうする?あんたこの国を治めるかい?」
あー、そうか。この国は一番強い奴がトップになるんだから、今この時点で、スイがこの国の頂点に立つ資格があるのか。

「結構です。
私はウチ様の従者ですから、国なんて要りません」
「んじゃま、俺がこの国のトップ据え置きでいいか?」
どうぞご自由にと、興味無さそうに僕の元へと戻ってくる。

本当にスイだけは怒らせない様にしないとな。





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