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子供達の事
しおりを挟むさて、子供達が生まれて7ヶ月過ぎた。
そろそろ目を逸らしてばかりはいられないよなぁ………。
とりあえず息子。
ジルはスクスク育ってますよ。
そろそろ「あうあう」喃語を言ってるっぽい。
目も見えてきたのか、近くに人がいたり、動くものがあるとそちらを見る。
半年過ぎにして、小さかった体は人並みになったかな。
このまま大きくなって、リズヴァーンに負けない立派な身体つきになって欲しい。
至って普通に成長しているようだ。
一方の娘だが……。
まずおかしいなと思ったのが、一月を過ぎた頃かな?
気づけば兄とリズヴァーンの声に反応していた気がする。
その二人がオムツを替えようとすると、火がついたように泣き出すくせに、抱っこをされると大喜び。
思わず『0歳児にして男好き?』とか思ったけど、二人以外には至って普通の態度だ。
あと、基本的に泣かない。
オムツを替えて欲しい時と、お腹空いた時だけは泣くけど、人が来るとすぐに泣き止む。
知らせるためだけに泣いてるっぽい?
3ヶ月を過ぎて周りから「夜泣きはノイローゼになるよ」なんて脅されていたのに、夜泣きもしない。
ジルが空腹やオムツで泣いたついでにプリシラを見ると、オムツがびしょびしょだったり、スッゴイ勢いで乳を飲んだりで、どうも我慢しているみたいなんだよね。
喃語も……どうなんだろう、兄を見つけると「アゥー」リズヴァーンを見つけると「いぅー」って顔を見て言っているように見えるんだけど………。
目が見えるようになってからは、兄とリズヴァーンをガン見だし、俺と目が合うと、握った手を振り上げるんだよ…親指立てて………。
ニヤリと笑ったりする事もあるし……。
ジルが泣きだすと、まるで「困った子ねぇ」ってな感じであうあうと話しかけて(?)いる。
手足をまるでラジオ体操のように、決まった順番で動かしていたり、発生練習のような抑揚の喃語を喋っているような。
これってさぁ……普通じゃないよね?
生前子供居なかったし、身近な赤子って言うと、盆と正月に会うくらいの従兄弟の子くらいだったから、普通の基準がわからないけど、ジルと比べて全然違うんだけど。
なのに周りの人達はおかしく思わないようで、
「女の子だからおしゃべりなのね」
とか、
「元気が良いから、きっと丈夫に育つよ」
とか、
「プリシラは僕の事ちゃんとわかっているんだね。
こんなに小さいのになんて賢い子なんだ」
とかとかとか……。
身内贔屓でフィルターがかかっているのか、全然俺の言う事をわかってくれない。
リズヴァーンも
「天才か」
って親バカ全開で、この子が普通と違うって思う俺の方がおかしいのではないのかとおもってしまう。
もしかして…と思って、日本語で話しかけてみた……。
「〈平成生まれ?それとも昭和?もしかして令和生まれだったりして〉」
「い~、い~」
「〈平成?〉」
「あい~」
「〈あい~ってタラちゃんかよ!〉」
「うきゃ~!」
……会話になってないか?これ。
ナニコレ、転生した俺の子供が転生者?
いや、もういいよ、そんなに設定ぶち込まなくても。
てか、そんなに転生者がゴロゴロしてていいの?
いや、ゴロゴロしててもいいけど、一家にまとめるなよ。
冒険した先で出会うとかじゃないの?
ヒロインと悪役令嬢が両方とも転生者とかならまだしも、何故に親子なんだよ。
お腹いっぱいだよ。
まだ会話ができないから確定したわけじゃないけど、十中八九転生者だよなぁ。
会話ができるようになってからが怖いんだけど。
ストレス溜まるわー。
しかも相談なんてできるのは、クリスティーナにだけだし。
でも、彼女も店が忙しいから、俺のプライベートのことで、煩わせるのもよくないし。
そんなこんなで鬱々していたら、リズヴァーンに気付かれた。
最初のうちは、何もないって逃げていたんだけど、自分は男だと思っているのに、妊娠、出産、育児、それも双子、その双子の片割れがどうやら自分と同じ世界からの転生者。
煮詰まって煮詰まって、爆発してしまいました。
とうとうリズヴァーンに全て打ち明けてしまいましたよ、これが。
もう、本当にいっぱいいっぱいだったから、クリスティーナにも言わなかった、ゲーム内世界だと思われる事、リズヴァーンも兄もクリスティーナの攻略対象者だった事、洗いざらい全てぶちまけたよ。
全ての話を黙って聞いたあと、「乙女ゲームとは」「転生とは」「いつから意識が変わったのか」「大和の国の文化と元の世界の文化の共通点」「魔法のない世界について」などなど、思いつく質問をしてきて、それに一つずつ答えていたら、丸一日かかった。
二人で部屋にこもり、たくさん話をした。
俺の話を聞いたあと、納得したように一つ頷き、俺の変化に対するリズヴァーンの心の変化を聞かせてくれた。
たくさん話をして、たくさん話を聞いて、俺たちはやっとお互いを理解し合う事ができたんだと思う。
子供もいるのに、お互いがどこか成り行き感ってのがあったんだけど、今回のことで初めてキチンと向かい合えたと思う。
俺の意識としては【俺】なんだけど、【キャスティーヌである】と言うことが、心の中にキッチリと嵌まり込んだ気がする…いや、【俺であってキャスティーヌである】のは元からだったんだろうけど、そのことをやっと頭と心の両方で理解できた。
なんだろう、二人で一日中籠もっていた部屋から出た時、世界が違って見えた。
今までどこかお客さん感覚だったのが、「ああ、俺はこの世界の人間なんだ」って理解(わか)った。
うん、これからこの世界で、家族と友達と、子供達とリズヴァーンと、ずっとキャスティーヌとして俺は生きていける。
存在全てで理解できたんだ。
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