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第一章
第14話:スタートライン
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結局、 索敵とスライムとの戦闘の試験をクリアして三つ目の試験に進めたのは、オレと女の子の受験者だけだった。
「落ち込んでいる暇はないぞ! 落ちたやつも次回受かりたかったら、合格したこの二人と自分たちで何が違うのかしっかり見極めろ。それができないなら何回受けても受からないぞ!」
「探索者は知識だけでも、腕っぷしだけでもやっていけないからね。せっかく実際に見て学べる貴重な機会なんだから、無駄にしないようにしよう」
項垂れながらも返事をする受験者たちの恨めしい視線を浴びながら、オレも油断しないようにと気を引き締める。
なんせ次は初めて戦うゴブリンだからな。
コボルトには勝てるようになったが、そこまで余裕があるわけではないし、それにメイスもまだ慣れていない。
いくらかレベルが上がっていると言っても、森羅って子みたいに研鑽した戦闘技術もないのだから緊張もするというものだ。
「じゃぁ今からゴブリンのいるエリアまで移動する。ここからは索敵も戦闘も俺たちがやるが、決して油断しないようにな」
「スライムと違って音にも敏感だから静かにね~」
そこから暫くは特に問題なく淡々と進んでいった。
試験官の二人はミニレーダーを表示しているオレとほぼ同じタイミングで魔物を発見しているし、戦闘はすべて一撃で終了させている。
まぁ普段はC級のダンジョンで活動しているそうだから、E級のダンジョンの魔物なんて敵ではないのは当たり前なのだが。
それでも人間の可能性的なものを垣間見た気がしてちょっと興奮してしまった。
それから一五分ほど移動した時だった。
あらかじめ教えられていたハンドジェスチャーで止まれの合図が出た。
どうやらゴブリンが見つかったようだ。
ミニマップを見ても敵影は一匹だけだし、探していた単独のゴブリンだ。
まずは森羅って女の子から戦うことになった。
彼女は指名を受けて軽く頷くと、恐れることなく足を踏み出していく。
すごいな。
コボルトとの戦闘を何度も繰り返しているオレでもちょっと緊張しているのに、実に堂々としている。
これ、なんで前回は不合格になったのだろう?
そんな疑問を抱きつつ見守っていると、ゴブリンも森羅さんに気付いたようだ。
「ギャギャ!!」
獲物を見つけたと奇声を発しながら森羅さんに襲いかかるゴブリン。
しかし、勝負は一瞬だった。
迎え撃つように鋭い踏み込みとともに放った突きが胴に突き刺さる。
ただ、生命力の強い魔物はすぐには倒れない。
それを察した森羅さんは、素早く一度後ろに飛び退くと頭上でくるりと薙刀を回し、その遠心力を乗せた薙ぎ払いの一撃で今度こそゴブリンを葬り去った。
おぉぉ~すげぇ!
流れるような連撃で一瞬で倒した!
これには試験官の二人も驚いたみたいで感嘆の声をあげていた。
「ほう。すごいな。森羅は幼少期から薙刀を習ってるのか? 正直、武器を扱う技術だけなら俺より上だ」
「すごいね! レベルが上がったら、あっという間に俺より強くなりそうだよ!」
「い、いえ。ありがとうございます」
「自惚れることはよくないが謙遜する必要はない。自分の能力を正確に把握することも大事なことだ。というわけで文句なく合格だ。あとで免許が交付されるから窓口で受け取ってくれ」
「はい! ありがとうございます!」
戦闘だけを見れば圧勝だったけど、あれでも緊張していたようだ。
森羅さんは「ふぅ」と息を吐きだしてホッとした表情を浮かべていた。
そして不合格組はとりあえず口を閉じようか……。
驚いて口を開けた表情で固まってしまっている。
彼女はかなり特殊だと思うから自分たちと比較しないほうがいいぞ。
地道に頑張れ……。
まぁそんなアドバイスをいう立場にないから口には出さないし、心の中だけでエールを送っておく。
「じゃぁ最後は霧島だ。間違っても真似しようとなんてするなよ」
「いや、彼女と同じことができるはずないじゃないですか。年の功でがんばりますよ」
「はははは。霧島さん面白いですね! でも、その余裕は悪くないですよ!」
「そこまで余裕があるわけじゃないですよ。ただ、身の程はわきまえてるってだけです」
そんなやり取りをしてから次の獲物を探して移動を再開した。
それから一〇分弱で先頭を行く高森さんからまたハンドサインが出た。
いよいよオレの番か。
指示を受けて前に出る。
ミニレーダーと簡易マップで正確な場所は把握しているが、目視でも確認できた。
そろそろ向こうもこちらに気付くだろう。
どうする? こちらから突っ込むか?
それとも待ち構えて返り討ちにするか?
いや、ここはどちらでもない。
気付かれる所までゆっくり歩みを進める。
メイスの握りを確かめつつ、一歩ずつゴブリンへと近づいていく。
「ギャッ!?」
あと5メートルほどの距離で気付かれた。
「さて、やり合おうか」
オレはそう呟くとメイスを構え、さらに詰め寄る。
さっきのゴブリンと同様、こいつも粗末な棍棒を持っている。
焦ったゴブリンは無策に棍棒を振り回してきたので、オレはゴブリン本体ではなく、武器を持つ手元を狙ってメイスで迎え撃った。
「ギギャァ!?」
粗末な棍棒の持ち手と一緒に手まで破壊されたゴブリンが絶叫をあげて動きを止めた。
得物は同じぐらいの長さだが、相手はオレの体を狙っていたのに対し、オレは棍棒を握る手を狙っていた。
胴体への攻撃は届かなくても手には届く。そんな距離で攻撃を仕掛けたのだ。
それに武器の間合いは同じでも、メイスの方が圧倒的に強度が上だ。
いきなりゴブリンの胴体を狙うリスクをわざわざ負う必要もない。
その後落ち着いて二撃目を頭部に放ち、オレも呆気なくゴブリンに勝利を収めた。
まぁコボルトより随分動きが遅かったし、普段オレが使ってるスパナよりもずっとリーチがある強力な武器を使っている。その重い武器もレベルアップによってあがったステータスで問題なく扱えるとなると、あとは油断さえしなければ負けることはないとは思っていた。
でも、終わってみれば思ってた以上に呆気なかったな。
「いや、霧島さん、本当に年の功って感じで落ち着き払って圧勝じゃないですか! すごいですね!」
「そうだな。その歳になってから探索者を目指すだけあって大したものだ」
あんまり歳だ歳だと言われると泣いちゃうぞ?
「ありがとうございます。で、大丈夫でしたか?」
「あぁ、もちろん合格だ」
よし! これでようやく探索者としてのスタートラインに立てたようだ。
「落ち込んでいる暇はないぞ! 落ちたやつも次回受かりたかったら、合格したこの二人と自分たちで何が違うのかしっかり見極めろ。それができないなら何回受けても受からないぞ!」
「探索者は知識だけでも、腕っぷしだけでもやっていけないからね。せっかく実際に見て学べる貴重な機会なんだから、無駄にしないようにしよう」
項垂れながらも返事をする受験者たちの恨めしい視線を浴びながら、オレも油断しないようにと気を引き締める。
なんせ次は初めて戦うゴブリンだからな。
コボルトには勝てるようになったが、そこまで余裕があるわけではないし、それにメイスもまだ慣れていない。
いくらかレベルが上がっていると言っても、森羅って子みたいに研鑽した戦闘技術もないのだから緊張もするというものだ。
「じゃぁ今からゴブリンのいるエリアまで移動する。ここからは索敵も戦闘も俺たちがやるが、決して油断しないようにな」
「スライムと違って音にも敏感だから静かにね~」
そこから暫くは特に問題なく淡々と進んでいった。
試験官の二人はミニレーダーを表示しているオレとほぼ同じタイミングで魔物を発見しているし、戦闘はすべて一撃で終了させている。
まぁ普段はC級のダンジョンで活動しているそうだから、E級のダンジョンの魔物なんて敵ではないのは当たり前なのだが。
それでも人間の可能性的なものを垣間見た気がしてちょっと興奮してしまった。
それから一五分ほど移動した時だった。
あらかじめ教えられていたハンドジェスチャーで止まれの合図が出た。
どうやらゴブリンが見つかったようだ。
ミニマップを見ても敵影は一匹だけだし、探していた単独のゴブリンだ。
まずは森羅って女の子から戦うことになった。
彼女は指名を受けて軽く頷くと、恐れることなく足を踏み出していく。
すごいな。
コボルトとの戦闘を何度も繰り返しているオレでもちょっと緊張しているのに、実に堂々としている。
これ、なんで前回は不合格になったのだろう?
そんな疑問を抱きつつ見守っていると、ゴブリンも森羅さんに気付いたようだ。
「ギャギャ!!」
獲物を見つけたと奇声を発しながら森羅さんに襲いかかるゴブリン。
しかし、勝負は一瞬だった。
迎え撃つように鋭い踏み込みとともに放った突きが胴に突き刺さる。
ただ、生命力の強い魔物はすぐには倒れない。
それを察した森羅さんは、素早く一度後ろに飛び退くと頭上でくるりと薙刀を回し、その遠心力を乗せた薙ぎ払いの一撃で今度こそゴブリンを葬り去った。
おぉぉ~すげぇ!
流れるような連撃で一瞬で倒した!
これには試験官の二人も驚いたみたいで感嘆の声をあげていた。
「ほう。すごいな。森羅は幼少期から薙刀を習ってるのか? 正直、武器を扱う技術だけなら俺より上だ」
「すごいね! レベルが上がったら、あっという間に俺より強くなりそうだよ!」
「い、いえ。ありがとうございます」
「自惚れることはよくないが謙遜する必要はない。自分の能力を正確に把握することも大事なことだ。というわけで文句なく合格だ。あとで免許が交付されるから窓口で受け取ってくれ」
「はい! ありがとうございます!」
戦闘だけを見れば圧勝だったけど、あれでも緊張していたようだ。
森羅さんは「ふぅ」と息を吐きだしてホッとした表情を浮かべていた。
そして不合格組はとりあえず口を閉じようか……。
驚いて口を開けた表情で固まってしまっている。
彼女はかなり特殊だと思うから自分たちと比較しないほうがいいぞ。
地道に頑張れ……。
まぁそんなアドバイスをいう立場にないから口には出さないし、心の中だけでエールを送っておく。
「じゃぁ最後は霧島だ。間違っても真似しようとなんてするなよ」
「いや、彼女と同じことができるはずないじゃないですか。年の功でがんばりますよ」
「はははは。霧島さん面白いですね! でも、その余裕は悪くないですよ!」
「そこまで余裕があるわけじゃないですよ。ただ、身の程はわきまえてるってだけです」
そんなやり取りをしてから次の獲物を探して移動を再開した。
それから一〇分弱で先頭を行く高森さんからまたハンドサインが出た。
いよいよオレの番か。
指示を受けて前に出る。
ミニレーダーと簡易マップで正確な場所は把握しているが、目視でも確認できた。
そろそろ向こうもこちらに気付くだろう。
どうする? こちらから突っ込むか?
それとも待ち構えて返り討ちにするか?
いや、ここはどちらでもない。
気付かれる所までゆっくり歩みを進める。
メイスの握りを確かめつつ、一歩ずつゴブリンへと近づいていく。
「ギャッ!?」
あと5メートルほどの距離で気付かれた。
「さて、やり合おうか」
オレはそう呟くとメイスを構え、さらに詰め寄る。
さっきのゴブリンと同様、こいつも粗末な棍棒を持っている。
焦ったゴブリンは無策に棍棒を振り回してきたので、オレはゴブリン本体ではなく、武器を持つ手元を狙ってメイスで迎え撃った。
「ギギャァ!?」
粗末な棍棒の持ち手と一緒に手まで破壊されたゴブリンが絶叫をあげて動きを止めた。
得物は同じぐらいの長さだが、相手はオレの体を狙っていたのに対し、オレは棍棒を握る手を狙っていた。
胴体への攻撃は届かなくても手には届く。そんな距離で攻撃を仕掛けたのだ。
それに武器の間合いは同じでも、メイスの方が圧倒的に強度が上だ。
いきなりゴブリンの胴体を狙うリスクをわざわざ負う必要もない。
その後落ち着いて二撃目を頭部に放ち、オレも呆気なくゴブリンに勝利を収めた。
まぁコボルトより随分動きが遅かったし、普段オレが使ってるスパナよりもずっとリーチがある強力な武器を使っている。その重い武器もレベルアップによってあがったステータスで問題なく扱えるとなると、あとは油断さえしなければ負けることはないとは思っていた。
でも、終わってみれば思ってた以上に呆気なかったな。
「いや、霧島さん、本当に年の功って感じで落ち着き払って圧勝じゃないですか! すごいですね!」
「そうだな。その歳になってから探索者を目指すだけあって大したものだ」
あんまり歳だ歳だと言われると泣いちゃうぞ?
「ありがとうございます。で、大丈夫でしたか?」
「あぁ、もちろん合格だ」
よし! これでようやく探索者としてのスタートラインに立てたようだ。
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