軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸

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第一章

第16話:憧れてない

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 ちょっと雰囲気を掴むだけのつもりだったのに、あっけなく探索者になれてしまった。
 いや、探索者試験に向けてしっかり勉強もしてたし、軽トラダンジョンでレベル上げも行って準備万端だっただけだから「あっけなく」ってのも違うか。

 でもそう感じてしまうぐらい上手くいったのは、すべて軽トラダンジョンのお陰だ。
 軽トラの荷台にダンジョンゲートが現れた時にはどうなることかと思ったが、今となっては絶対に手放せないものになっている。

「ははは。しかしオレが探索者か~」

 オレが小中学校の頃は、探索者を題材にした漫画やアニメが流行っていたのもあり憧れてはいたが、それは夢の話であり、まさか本当に自分が探索者になるとは思ってもみなかった。

 それは十数年前までは今以上に危険な職業だったことが大きい。

 今でこそ探索者養成学校でノウハウを学び、ある程度まで安全にレベルをあげてから探索者になる仕組みが出来上がっているが、それまでの探索者一年目の死亡率はとても高く、大人に近づくにつれ現実が見えてくると、その数字を目にして諦める者がほとんどだった。

 もちろんオレもその一人だ。

「それがまさか三〇も折り返しになる歳になってから探索者になるなんてな」

「ばぅわぅ!」

「だいふく、おまたせ~」

 免許の交付が終わってこっそり軽トラダンジョンに入ったオレは、時間の流れる早さを元の一〇倍に戻してからだいふくを迎えに向かった。

「ばぅ!」

「ほうら。おやつ食……」

「ばふん!!」

「うか……って、あれ?」

 なんだ? おやつをあげようと思って袋から出したのに、いつの間にかおやつが消えているんだが?

「……落とした?」

 でも、その割にはだいふくが反応していない。
 おやつを落としていたらこいつが気付かないはずがない。

 オレは疑問に思いながらも袋からもう一つおやつを……。

「ばふん!!」

「………………」

 間違いない。首を傾げて「おやつまだ~?」みたいな顔をしているが……。

「だいふく……。ちょ~っと口を開けてみようか?」

「………………」

「あれ~? どうして後退りしているのかな~?」

 ごくん。

「飲み込んだ!!」

「ばぅぅ!?」

 その後、だいふくとしばらく追いかけっこした。
 あれ? こいつこんな速かったかな?


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 探索者免許を取得した翌日。
 昨日は引っ越しの荷下ろしも管理者倉庫のお陰で一瞬で終わったので、今日はさっそく浅井ダンジョンに行くことにした。

 まぁ翌日といっても、軽トラダンジョンの中でみっちり一日かけてダンジョン探索の注意点などを復習しておいたので準備は万端だ。もちろん休息も十分。

 今回は最初からだいふくを軽トラダンジョンに入れて時間の流れを調整してから向かっている。
 ネットで調べた感じでは普通ダンジョンの中の流れる時間のズレは、三倍前後までのことが多いらしい。
 だからよほどのことがない限り、もし数時間ほど浅井ダンジョンを探索しても、だいふくが待つのは短い時間で済むはずだ。
 まぁダンジョンの中の時間の流れの早さは確認できるので、もし五分の一とかになっていれば日を改めでもしよう。

 最終的にはダンジョン探索に慣れてきたら、作業部屋を使って連れて行ってもいいかとは考えているんだが、まだしばらくは軽トラダンジョンの中でお留守番してもらうつもりだ。



 軽トラに乗って一時間ほど移動して浅井ダンジョンに着いた。
 しかし併設の探索者協会浅井支部に入ったオレは、そのままダンジョンに入らず、ある窓口に向かった。

「すみません。装備のレンタルをお願いしたいのですが」

「はい。レンタルですね。武器と防具両方でしょうか?」

「いえ。今日はスライムだけのつもりなので武器だけお願いします」

 スライムだからという理由は嘘だ。
 本当は防具は管理者ローブがあるので必要ないだけだ。
 軽トラダンジョンでコボルト相手に検証してみたが、コボルトからだとダメージをまったく受けなかった。だから防具は当面必要ない。

 武器もスライムだけならいつものスパナで十分なのだが、これから探索者を続けていくにあたり、将来どの武器種を使っていくのか決めるのに色々試してみたかったのだ。

「畏まりました。それでは端末をお願いします」

 オレはバンドで腕につけていたD-Loggerディーロガーを外すと、受付のお姉さんに手渡した。

「……霧島蒼司様ですね。確認できました。では、武器の種類は何をご希望でしょうか?」

「えっと、自分に合う武器を探したいのですが、何種類か一度に借りることはできますか?」

「そうですね。本来はメイン武器とサブ武器の二本までなのですが、そういうことでしたら今回だけ特別に三本まで貸し出させて頂きます。それ以上は持ち運ばれるのも大変ですし、不意の襲撃などで反応が遅れる危険がありますので」

 お~。言ってみるものだな。
 受付のお姉さんはオレのリュックをチラッと見てたので作戦成功だ。
 管理者倉庫があるので手ぶらでいいのだが、大きめのリュックを背負っておいたのだ。

 本音を言えば管理者倉庫に武器ぐらいいくらでも入るので全種類貸して欲しいのだが、探索者活動が軌道に乗るまでは目立ちたくない。
 調べてみたら管理者倉庫と似たアイテムボックスというスキルは存在するのだが、そちらも所持している者が少なく、たちの悪い探索者にバレると無理やり荷物持ちされかねないらしいのだ。
 だから自衛できるようになるまでは管理者倉庫も慎重に使わなければいけない。

 もちろん作業部屋なんて似たスキルすら存在しないし、ダンジョンアドミニストレーター関連の派生スキルは全部秘匿する必要がある。
 っていうか、秘密にしなくていいスキルを何も持っていない気がするな……。

「それで、どうされますか?」

 おっと、考え込んでしまった。

「すみません。それじゃ、片手剣とメイス、あと槍をお願いします」

 どの武器も携帯するための鞘やベルトなどもセットなので、この組み合わせならなんとか持てるだろう。
 実際には戦闘する前に人気のないところで使わない武器を管理者倉庫にしまっておくつもりだが、とりあえず常識の範囲内で持ち運べるって体裁が必要だ。

 あらかじめチャージしておいたダンジョンPAYを使って端末で支払いを済ませて三つの武器を受け取ると、そのままダンジョンへと突入した。

 しかし途中で気付いたのだが、若干周りから注目を集めてしまっていた。

「はぁ……目立たないようにって思ってたところなのに、いきなり失敗した……。欲張らずに武器二つだけにすればよかった」

 左腰に片手剣を携え、右手には槍を持ち、リュックからはメイスがはみ出ていたせいで「弁慶にでも憧れてるのか?」と奇異の目で注目を集めてしまった。

「やってしまったものは仕方ない。気持ちを切り替えて武器を試していくか。と、その前に時間の流れは……お。三倍か。ラッキーだな。時間の流れが変わったら知らせてくれるようにセットしてと……」

 スライムを倒しまくったお陰で今のオレのレベルは既に12あるのだが、レベルが10になった時にいくつか便利な派生スキル能力が追加されていた。

 条件付きアラームもそのうちのひとつだ。
 次はレベル20になったらまた増えるのだろうか?
 戦闘系のスキルは含まれていなかったが、剣術スキルなどは戦っているうちに身につくことがあるみたいだし、頑張って身につけたいところだ。

 と言っても、どうすればスキルが取得できるのかは未だに解明されていない。
 ずっと剣を使い続けていても剣術スキルが取得できるとは限らない。
 だからスキルに頼らないでも戦えるように努力することが大事らしい。

 ちなみにレベル20にもなれば一人前と言われており、Dランクのダンジョンに入る条件にもなっている。まずはこのレベル20が目標かな。
 普通はレベル10になるのも数カ月かかるらしいので、ちょっとズルしたようで罪悪感を感じるが、オレはだいふくを守るためにも早く強くならなければいけない。これからも使えるものはなんでも使っていくつもりだ。
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