堅物王子の側妃は降嫁と言われたので王宮騎士になって返り咲く

あさ田ぱん

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二章

15.閑話 ある騎士団兵士の幕引き

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 私は王宮第二騎士団に所属している。最近事務方を外され過酷な実働部隊所属となった。転職も脳裏にちらつく……。その折、アナベル様が王宮騎士団を受験するという知らせは突然もたらされた。

 ダルムアイン領で市民による蜂起があり、金ばかりかかると批判の的だった後宮は解散、縮小となった。アナベル様は他の側妃同様、臣下に嫁がれると思われていたが、それがなんと、我が王宮第二騎士団を受験されると言うではないか!!

 騎士団の兵士たちは震撼した!

 なぜなら新米の騎士は、担当の先輩騎士に側仕えのように付き従い教えを乞うのである。寄宿舎の部屋も勿論同室。同室と言うことは寝食共にする。寝食共にすると言う事は……同衾…?!考えただけで私の中心は熱を帯びた。

 しかも、私は先日まで事務方だったから今受け持ちの騎士はいない。妻と子供はいるが、平日は寄宿舎に泊まっている!私は歓喜で震えた!私を左遷させたギルフォード殿下にさえ感謝を申し上げた。

 ーーその日から水面下で激しい戦いの火蓋が切って落とされた。なぜなら、実戦の試験を担当する騎士が、そのまま先輩騎士となるしきたりだからだ。試験の前に戦いは決勝してしまうのだっ!

 翌日から団員の採用権を持っている副団長、エメルソン殿下を『よいしょ』する者たちが後をたたなかった。私もごくごくさりげなく、エメルソン殿下をよいしょした!アナベル様との生活を考えればよいしょくらいお安い御用だった。

 そんな時、とんでもない伏兵が現れた。
 第二騎士団部隊長でありリミントン公爵家次男、オーディスである!
 オーディスはアナベル様を「男娼が騎士団に入るなど風紀が乱れる!」とか言い出したのだ。いや、アナベル様が男娼だったらみんなの士気、上がりまくりだと思うよ!?まじで黙ってろ!このボンボンが!

 そんなオーディスはこのクソ忙しい最中、急に三日も休暇を取った。妹であり第一側妃のタメラベルム様が、リミントン公爵家でアナベル様の稽古をする約束をしたとかで「試験の前に己の甘さををわからせてやります!」とか言いながら、当日含む前後一日計三日も休むとか……。

 なんでそんなに念入りなの?!私は嫌な予感がした!オーディスお前、口ばっかだけどめちゃくちゃ楽しみにしてるな!?アナベル様、逃げてえッ!

 私の祈りも虚しく、アナベル様はリミントン公爵家にお泊まりになり、翌日、日が暮れてからお戻りになった。しかも後宮の入り口でオーディスといちゃついていたらしい。
 何それ?!ねえまさか同衾とかしてないよね?散々悪口いっといて、可愛い子虐めちゃうみたいなやつなのか?!お前っ!公爵家のボンボンじゃなかったら今頃酷いぞ!しかもオーディスは殿下に身上書を送ってアナベル様に正式に求婚したらしい。もうあきれて開いた口が塞がらなかった。

 アナベル様を巡る争いは激しさを増していった。でも私はどこか油断していたのだ。オーディスは部隊長、役職者は新米の世話はしないからだ。
 しかしオーディスは「邪な気持ちでアナベル様を側仕えにしようと考えている連中の多いこと。私は男色家ではありませんから、アナベル様の担当としては適任かと」とエメルソン殿下を懐柔にかかったのだ!おい!オーディス!ふざけんな!お前そもそも求婚までしてる癖に何言ってんだ!そしてエメルソン殿下も返事を渋った。まさか……?あんたまで?!嘘でしょ?希望を持たせて!

 結局、収拾が付かず「くじ引き」で決める事になった。私はアナベル様に頂いたお守りも握りしめてくじをひいた!しかし、当たりくじを引いたのはオーディスであった。
 ねえ、絶対不正してるよね?!おかしくない?!あっ、部屋の隅で召使いがニヤニヤしてる!さてはあいつを金銭で買収したな?!わかってんだぞ、この野郎!
 
 オーディスの不幸を祈りながら迎えた、実戦の試験当日、アナベル様はオーディスとの同室を嫌がり、エメルソン様と対戦し勝利を収め、一気に部隊長に昇進してしまった!
 
 アナベル様との同室の夢はこうして潰えたのだった……。
 
 叶わなかったアナベル様との生活を夢見ながら眠り、目が覚めると、まだ自分の仕事が終わっていない事に気がついた。

 それは、寄宿舎の部屋割りである!
 三階建ての寄宿舎の最上階は幹部達の部屋になっている。部隊長に昇進したアナベル様は本来三階であるが、二階に、中庭に面していて外からは一切見えない部屋があるのだ。外からは見えないが中庭があるため日は入る美しい部屋…。
 アナベル様のお部屋を覗きたいのは山々だが、幹部連中のエメルソン、オーディスもアナベル様を狙ってるから、同じ階には出来ないじゃん?!

 私は部屋割り表を握りしめて、あの方のところへ向かった。

 ……ギルフォード殿下、ラスボスの所である。

 ギルフォード殿下は私のさりげない二階誘導に興味を示された。そして「アナベルに決めさせてくれ」と言ったのだ。私は青ざめた。

 なにそれ?!それって「妻にきいてくれ」みたいなやつじゃない?!なんなの?!アナベル様を振っておいて……いや、……まさか水面下で続いてる系?!

 そして、その予感は的中した。

 ギルフォード殿下の執務室からの帰り道、物憂げなギルフォード殿下の小姓と遭遇した。

「どうした?顔が赤いぞ?」
「え…?いえ…、何でもありません」

 小姓は首を振り、口ごもる。私は思い切って小姓に銅貨を渡して口を割らせた!

「殿下のお部屋で、アナベル様と鉢合わせたのです。アナベル様は服がないとお困りの様子で…。それで先程、アナベル様の服を殿下が召使に渡された敷き布などの中から見つけたのですが、引きちぎられてボロボロでございました」

 アナベル様ーーー?!

 何やってんの?!いや、色々やっちゃったんだろうけど…!!そんなんじゃもうお嫁に行けないよ…!?って出戻りだけど…!

 そして、小姓は「しかも、下着は濡れそぼっていて」と呟いた。

 合掌ーーー…。

 私はまた小姓に銅貨を手渡した。

 こうして第二騎士団の戦いは幕を閉じたのだった。
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