異世界に渡ったら獣人だった!

小猫田猫助

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はじまり

23話 犠牲

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 俺達は手分けして街中で情報を集めた。今日トラドルの馬車が通らなかったか、いつもトラドルの馬車はどこに行っているかという事を聞いて回った。
 すると数人がこの1ヶ月くらい教会の方へ馬車が行くのを見掛けたと答えてくれた。
 俺達は聞いた情報をセバスチャンさんに知らせる為にルシーナの家に行ったが、誰も居なかったのでメモだけ残して教会へ向かった。

「ねぇ、教会なんかに本当に居るのかな?そんな所で悪い事してたら、神様に怒られると思うけど。」
「わからないけど、手掛かりは今の所此処しかないからな…。」

 まず俺達は教会の周りを探る事にした。すると教会の奥に隠す様に馬車が停めてあった!
 此処にルシーナがいるかもしれない…教会の窓からそっと建物の中に入る。
 聖堂の中を伺う為、扉越しに耳を澄ますとシスターと誰かが話している様だ。

「本当に下らない事をなさいますね。まぁ私は別に何をなさろうと構いませんが。
 精々不安と言えば信徒の皆さんが寄り付かなくなってしまうのではという事ぐらいでしょうか?
 しかし貴方が此処で行う事はきっと私の長年の疑念を払拭して下さいますでしょう。それに関しては感謝申し上げます。」
「貴方ほど狂ったシスターは見た事がありませんよ。
 でも僕にとっては貴方の考えは好都合ですが。」

ードン!ー

「いつまで待たせるんだよ!セギド!」

 やっぱりセギド・トラドルは此処にいたか!しかも一緒に居るのはイジオタじゃないのか?声だけだから絶対奴だと言い切れないが、きっとそうだ。

「はぁ…貴方という方は本当に…分かりました。彼女を連れてこさせましょう。
 おい!彼女を連れて来い!」

「痛い!そんな強く引っ張らないで!!」

!!!!
この声はルシーナ?!

ーバン!ー

「ルシーナちゃん!!」
「トール待て!馬鹿!考え無しに出るな!」

 俺は見つかるとまずいと思い咄嗟に屈んで一番近い椅子の陰に隠れた。

「トール?ガズ?! 助けて!!」
「ルシーナちゃんを離せ!」

 トールは目の雰囲気が変わったかと思うと風が起こり鳥獣に変身していた!そして風を巻き起こしながら飛びルシーナを捕まえている男達に鋭い爪で攻撃した。

「チッ!獣人の化け物め!死ね!」

 ルシーナを捕まえていた男達はルシーナを突き飛ばしトールを攻撃し始めた。

「トール!気を付けろ!斬られるぞ!!」
「大丈夫だから、早くルシーナちゃんを!」
「させるか!俺のものだ!!」

 ガズがルシーナを助けようとするとイジオタがルシーナを奪い取った!

「ルシーナちゃん!! 
 …うっ!痛ったああああああぁ!!」

 ルシーナを奪われた事に気を取られたトールは男達に斬りつけられた!
 トールは斬られた所為で獣から人に戻ってしまい空中から落下した。

「トール!!<ヴェント!>」

 俺は隠れていた場所から助ける為に、咄嗟に魔法を使いトールを受け止め駆け寄った。
 トールは腕を深く斬りつけられ多量の血流していた。息はあるが気を失っている。
 俺はとりあえず出血多量にならない様に先生に教えて貰った傷を塞ぐ魔法をトール掛けた。しかし中の部分の繋げ方は正確には分からないので、本当に応急処置でしかないし下手したら逆に危ないかもしれない。でもこのまま出血し続ける方が危ない。

「トール!トール!!目を覚ましてトール!」
「煩い!黙れ!お前は俺の奴隷になったんだ!言う事聞け!」
「っ…」

 イジオタが何か呪文を唱えるとルシーナの首に付けてあった首輪が軽く締まった様だった。
 クソ野郎め!ルシーナに奴隷の首輪掛けてやがった!

「トール!ナート、トールは大丈夫なのか?」
「出血は止めたけど、応急処置しか僕には出来ない。やっぱり早く先生に見せないと…でもルシーナが!」

「おや?これは良い所にいらっしゃいましたね。後で貴方を呼びに行こうと思っていたんですよ。」
「お前何企んでるんだ?俺を呼びに行こうと思ってたってどういう事だ?」
「ふっ、それは直ぐ分かるさ。」

「(ナート、考えてる余裕が無い。力任せになるが俺も獣の姿で闘う。トールを守りながら援護を頼めるか?)」
「(…分かった。でも約束してくれ、絶対に死なないと!
それが約束出来ないなら、今はルシーナを置いて此処からトールを連れて逃げ出す事を選ぶ!)」
「(分かった約束する!
 それに無理だと思ったら合図する。その時は此処から逃げ出そう。行くぞ!)」
「(おう!)」
「うおおおお!!」

 ガズは雄叫びをあげると熊の姿に変わっていた。

「チッ!また獣人か、面倒臭ぇな!お前も斬り殺してやる!」

 先程の男達がガズ目掛けて斬り掛かってきた。俺はガズを守る様に風で男達を吹き飛ばすと、ガズが一人を捕まえ投げ倒し気絶させた。

「悪ぃな、軽く倒しちまって。お前達じゃ俺を止めんのは無理かもな。」

 格好良い!やっぱり熊の獣人は格好良いな!

「お前ナートか?!また俺の邪魔しやがって…俺の人生滅茶滅茶にした事後悔させてやる!死ね!!<アグア!>」

 ガズの闘いに意識を向けていて、イジオタが攻撃してきた事に気付くのが遅れてしまった!
 うっ!…苦しい…溺死する…俺の頭は水で覆われていた。時間が経つと苦しくてもがきたくなり、抱えていたトールを落としてしまった。しまった!トール!

 (今度はそこから出る方法だけど、そのまま空気で、その水の塊を弾き飛ばすように空気の風船を大きくすればいいよ)

 そうだ!俺はトールを見て海で教えて貰った方法を思い出した。俺は空気の風船を膨らませるイメージを作りながら唱える。

「ア"ル"ゥ!!」

 上手く唱えられるか心配したが、水を吐き出しながらなら唱え空気の風船で水の塊を壊した!

「はぁはぁはぁ…イジオタ…てめぇ!」
「なっ!…俺の得意技を破るなんて!」

 …割と方法さえ知っていれば破れる技だ。こんな俺みたいな魔法の初心者に破られるなんて、イジオタはやっぱり雑魚に違いない。
 
「魔法がダメなら剣だ!死ねぇ!」

 イジオタが剣を振り下ろしてきたが、俺は短剣でそれを受け止め、力で振り払った!

「いい加減にしろ!お前がこういう状況になったのも全てお前自身の所為だ!認めろよ!」
「煩い!煩い!!黙れ!全てお前所為だ!お前が居たから上手くいかなかったんだ!!」

 そう叫ぶとイジオタは剣を捨て杖をルシーナの首輪に向けた。

「俺にはまだ此奴が居る!
 奴隷の首輪に呪文を唱えればこの娘は死ぬ!この娘を殺されたくなければ、剣と杖を捨ててこっちに来い。」
「ナート!イジオタの言う事を聞くな!」

 ガズがさっきの男を倒して此方に戻ってきた。

「黙れ!この娘が死んでも良いのか?」
「ナートくん…私はいいから…そんな事しないで。」
「俺が剣と杖を捨てたら、ルシーナの奴隷の首輪を外せ。」
「分かった。約束しよう。」

 イジオタはニタァとした笑みを浮かべ了承した。
 俺はイジオタの顔を見てルシーナの首輪を外さない気がしたが、この交渉しかないと剣と杖を投げ捨てた。

「「ナート!!」」
「ほら捨てたぞ、首輪を外せ!」
「俺はお前がこっちに来たら外すと言ったんだ。
 さぁ、来い!」
「約束が違うじゃないか!ナート行くな!殺されるぞ!!」
「ナートくんダメだよ!」
「煩い黙れ!!奴隷の分際で!」
「きゃあ!」
「今行くからルシーナを殴るな!!」

 殺されるかもな…でも日本からこの世界に来た時に海に落ちて死んでいたかも知れない俺が、今まで生きていたのは、今日ルシーナを助ける為だったら死んでも報われる。
 でもこの世界で出来た家族に最後の挨拶も出来ないのは心残りだ…そう思って視線を落とした時、今日買って付けていたベルトが目に入った。

「ガズ、ルシーナ、デアドさん達に頼む。
 今まで…何処から来たかもわからない、得体の知れない俺を本当の家族にしてくれて…お父さん、お母さん…本当に有り難う。」

ーパチパチパチー

「感動的だ!獣人でも家族愛があるとは知らなかった!
 そんな感動的な言葉を聞かしてくれた君に、良い事を教えてあげよう!
 奴隷の首輪は主人が死ねば外れる!君が死ななくても、イジオタを殺して皆んなが助かる道を選べば良い!
 さぁイジオタを殺せ!」
「セギド!裏切りやがったな!」
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