聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ

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女神になった少女

……ここはドコ? 私は、美少女!?

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私、相沢美咲あいざわみさきは学校から帰宅する途中で頭がクラクラしたと同時に意識が離れていくのを感じた。 

 しかし、次の瞬間には覚醒し、目を見開いた。 眼前にある光景は、外人のような顔、スーツを着込んで腰に剣を差している男性、ヒラヒラドレスに扇を口に当てる女性を含む多くの人が此方を見ている。

 正確には、私のとなりにいる女性だ。 彼女は、五十嵐玲香いがらしれいか同級生であり私を嫌っている人だ。
 その容姿は、綺麗な黒髪、少しだけ垂れ下がった目尻、そして、黒い瞳は日本美人を絵に書いたよう。

 性格は、全ての人間は自分以下と思っている。 更には、某政治家の長女であり典型的な我が儘なお嬢様だ。

 状況を呑み込めないまま立ち尽くしていると、全員が五十嵐玲香と共に笑顔を浮かべながらその場を去っていく。 

 すると、私は軍服を着けた男性に腕を捕まれ「こっちに来い」と、引きずられるように連れていかれた。

「えっ、なに、なんなの?」
 私が尋ねても何も答えない、表情一つ変えずに「………………」突き進んでいく。

 やがて着いたのは、巨大なお城の前。
 投げるように、外へと出された私に向かって兵士の一人が嫌悪の表情を浮かべながら話す。

「さっさと、失せろ。 失敗作が」
「どういう……意味?」
「…………」

 兵士は、それ以上何も言わず立ち去った。 そして、次々と出てくる馬車。
 中には、私を置いて出ていった人達が乗っていた。

 そして、その人達は馬車の窓から私を見て蔑むような笑みを浮かべ嘲笑する。

 やがて、何十台と言う馬車が出ていく中で一台の馬車が目の前に停まった。 中から降りてくるシンプルなドレスを纏った妙齢な女性と白い軍服のようなモノを纏った恰幅と言うよりもがっしりとした体躯と髭が立派な男性が降りてきた。

「大丈夫かしら?」
 妙齢な女性は、私の手を取る。

   状況もわからず戸惑う私に気付いた妙齢な女性は、更に言葉を続ける。

「私は、ステラ・ミケラーノ。 そして、彼は夫のゲイリー・ミケラーノよ」
 髭の男性は、静かに会釈する。

「……相沢、美咲……」
「ミサキが家名かしら?」
 ステラさんの言葉に首を横に振る。 続けて「ミサキが名前」と伝えるとステラさんは優しい笑顔を私に向けた。

 その表情に安堵してしまった私は、その場で泣き出してしまった。 

 ━━いや、号泣だ。

 ステラさんは、私をずっと抱き締めて居てくれた。 そっと、馬車の中へと迎えてくれた。
 泣き止んだ私は、これまでの経緯を説明した。

 立ち眩みのあと一瞬、意識を失い、いえば覚醒した意識と目を開いたと同時に知らない場所で立っていた。 そして、ここからは二人も知るように有無も言わせず追い出されたと。

「ミサキだったな……全く、王国は何の説明もしとらんのか……相も変わらず腐っとる」
 その話を静かに聞いていたゲイリーさんが、怪訝な表情しながら吐き捨てる。

 私の脳裏にとある言葉が引っ掛かった。
「おうこく?」
 私が首を傾げ尋ねると、ステラさんが話してくれた。

「ここは、フェビカ王国。 通称、勇者国。 古の勇者が建国したと呼ばれる国」
「勇者」
 勇者……お伽噺や、本の中にしか登場する筈の無い言葉が平然とさも当然のようにステラさんの口から述べられる。
 その事に私は黙りこんだ。

 ━━ここは、私が知らない場所。

「……あの、私はどうしてここに?」
 私の言葉にステラさんが、難しい表情を浮かべた。 私が聞いたことは、其ほどに伝えづらい事なのか……。
「私が答えよう」
「あなた……」
 ゲイリーさんが、そう言って身を正すと隣に座るステラさんがゲイリーさんの手を握った。 
  私は、その様子に息を呑む。

「君は、聖女召喚で異世界から呼び出された。 簡単にいうとここは君の知る世界ではない」
「異世界……」
 私は、言葉を紡ぐこともリアクションを取ることも出来なかった。

「そして、君はその容姿から聖女召喚の失敗として捨てられたのだと思う……」
「容姿から? 聖女の基準は見た目?」
 だとしたら、笑えない。 色んな意味で笑えない。

「……すまん、俺が言い方を間違えたな。 歴代召喚聖女の容姿は、ある部分が同一なのだ。 それは、黒き髪に黒き瞳だ」
 要は、日本人的な容姿ってことなの? だったら、尚更おかしくない?

「私、黒髪、黒い瞳だよ。 髪の毛染めたこともないし」
 そう、私は今までの人生で一度も髪を染めたりしたことがない。 ましてや、目も普通に良いのでコンタクトもしたことがない。

 私の言葉にステラさん、ゲイリーさんがポカンと口を開けて私を見ていた。 二人に声を掛けるとステラさんが手鏡を無言で私に渡す。

「………………は?」

 私は、声を失った。 鏡に写るのは、キラキラと光る美しいプラチナブロンド、宝石のような蒼い目、透き通る白い肌を持った美少女だった。
 美少女とは、自我自讚的なことを考えたが紛れもない美少女なのだ。

「なにこれ? だれこれ?」
 私は、唖然としながら涙を流す。 私は、私じゃなくなって、更にトドメは異世界に来ていると言う事実。

「……ミサキ?」
「大丈夫か?」
 ステラさんとゲイリーさんが心配そうに私の顔を覗く。 弱ってる私の心に優しさが突き刺さる。

 ━━私は、再び号泣した。

 落ち着きを取り戻すまで、20分程。 馬車には、非常に重苦しく気まずい空気が流れた。 原因は、紛れもなく私だけど。
 落ち着いた私は、口を開いた。

「私は、元の世界に戻れない?」
 ゲイリーさんが腕を組み「うーん」と唸りながら首を捻りながら話す。
「聖女様の中に、元の世界に帰ったと言う記述、報告が無いんだ。 可能性が有るとしたら、女神エフィル様に相談くらいしか」
「女神エフィル様?」

 女神……つまりは、神様。 相談ってなんだよ……それ。 宗教に入れとかそう言う類いなの?
 私の顔が引きつっているのを見たステラさんは、私の頬に手を当てた。 

「えっとね、異世界と違ってこの世界の神様は女神エフィル様だけなの。 それに、エフィル神国の教会に行って祈れば希にだけど姿を表してくれるのよ」
 ステラさんが言うには、聖女様は例外なく地球の日本から召喚される為、総じて同じリアクションに今までなってたと言う。
 その為、このような説明を要した訳だ。

 余談だが、ゲイリーさんはステラさんに怒られている。 どうやら、私は泣き虫だと思われ気を使えとゲイリーさんに言っているのを見て申し訳なく感じる。 

「エフィル神国の教会……遠いんですか?」
 私の言葉に二人が頷く。 距離的に、この場所から馬車など乗り継いで半月は掛かると言うことだ。
 歩きなら、三ヶ月以上かかり状況によってはそれ以上掛かると言う……。

「遠い……」
 私は、歩ける気がしない。 それどころか、一人で生きていく自信すら無い。
「うふ、ミサキが良かったらエフィル神国まで送るわよ?」
 ステラさんが、そう言ってくれた……が。 私は、悩んでいた。 恐らく、この馬車の向かう先は先程の人達が向かっている場所と同じ……。

「ステラ……全く。 ミサキよ。 我等の馬車は先程の馬車と別れエフィル神国へと向かっているのだ」
「え?」
「我等は、エフィル神国から来た……今回のフェビカ王国で行われる聖女召喚を見届けるための教会関係者だ。 先程の鼻持ちならん奴等はフェビカ王国の貴族。 あっちは、王の居城でパーティーだろう」
「あら、鼻持ちならないなんて……弊害しかならない屑で充分ですわ」
 ステラさんの歯に着せぬ発言に苦笑いを浮かべるゲイリーさん。

「えっと……」
 正直、私は戸惑った。 こんなに甘えていいのだろうか? と。
 見ず知らずの私を馬車に乗せてくれた上、共に連れて行ってくれると言う……。

「あー、てか、一緒に来い。 こんなに楽しそうなステラを見るのも久しいからな」
 ゲイリーさんが、私を見た後、ステラさんを見てそう言いきる。
「そうね、そう言うあなたも楽しそうだわ」
「ん、そうか?」
 ゲイリーさんとステラさんが、仲睦まじく話す。

 私は、ゲイリーさんとステラさんを微笑ましく見て笑うと二人も更に嬉しそうに笑った。
「ミサキは、笑うと可愛いな」
「やっぱり、笑顔じゃないとね」
「……へへ」
 私はテレ笑いを浮かべた。



 そして、ステラさんとゲイリーさんと共にエフィル神国に向かって8日目。
 私は、船の中にいた。 エフィル神国は、フェビカ王国とは、海を隔てた土地にあると言うことや常識をステラさんに教えて貰った。

 最も驚きだったのは、ゲイリーさんだ。 エフィル神国のナンバー3の神国騎士団の団長であった。
 しかも、貴族とかではなく自力でそこまで上り詰めた人物。 エフィル神国では、勇者を越える英雄と言われるほど尊敬と信頼を集めているとステラさんが惚けながら教えてくれた。

 船の甲板。 今日は、ゲイリーさんの指導の元で武術を指導してもらう日だ。 生きていくには、身を護る術を持つべきと言うステラさんの助言によって決まった事だ。

「よし、ミサキの体格なら……レイピアと短剣の二刀流とかが良いかもしれん」
「畏まりました」
 ゲイリーさんの言葉に答えたのは、ミケラーノ家、執事のファントさん。 ゲイリーさん曰くエフィル神国の船でずっと待っていたと言う話だ。

 ファントさんから武器を受け取った瞬間、不思議な感覚を覚える。 まるで、レイピアと短剣の達人になったかのような感覚だ。
 因みに、私は神国騎士団の白い機動用の軍服を借りている。

 私が、左手にレイピア、右手に短剣を構えると「ほう……様になってる」とゲイリーさんが誉めてくれた。
 そのゲイリーさんの武器は、大剣の持ち手を長くしたのかとも取れる程巨大な槍だ。

「行きます!」
「来い!」
 一瞬の内にゲイリーさんの懐に潜り込んだ私は短剣を下から上へと振るう。 
「あぶねっ!」 
 ゲイリーさんの体が少し後ろに反れた瞬間に左手のレイピアで突きを繰り出す。

 死角からの攻撃に関わらずゲイリーさんは、意とも簡単にレイピアを槍で捌いていく。 一瞬、嫌なイメージを感じた私は、後ろに跳び跳ねる。
 すると、私がいた場所に巨大な槍が振り落とされ甲板な穴を開けた。 
 その光景に皆が唖然とし、船乗り達は口を揃えて呟いた。

「……脆いな」
「「「「船を壊したよ……」」」」

 私も、同じ気持ちです。 船を壊すとかあれなんですかね……。
 私が、無言でファントさんを見ると此方に一礼した後、「どうなさいましたか?」と、何事もないように話し掛けてきた。

「……ゲイリーさんって、加減が出来ない人?」
「そうでございますね……旦那様は、常に本気の方です」
 つまりは、手加減出来ない人って事だよね? 初めて武器を触った私を殺しに掛かったって事だよね。
 ステラさん、何て人に武器の使い方を教えろって命令したんだよ……死んじゃうよ……。

「甲板……どうするんだろ」
「あら、ミサキが直すのよ。 魔法を教えたでしょう?」
 脇で見ていたステラさんがそう言い切る。
「私が?」
 基本的な知識と共に魔法も学んでいた。 正確には、魔力操作を教わった。

 なんと言うか、魔力操作を習った時点でこの世の全ての魔法が使える感じがしたんだよね……。
 ステラさんに「海に魔法を使ってみなさい」って言われて使ったところ、魔法合格と強力な魔法使用禁止を凄い剣幕で説教されながら言い渡された。

 風魔法で海を割ったら、世界の終わりだと船乗り達が慌てた。 
私も同じように焦ったさ……海の底が見えたんだよ。

「……ホントにいいの?」
 怯える私に「良いわよ」と言ったステラさん。 私は、甲板に手をついて魔法を使う。
修復リペア!」
 すると、甲板のみならず船全体が強力な光に包まれた。 次の瞬間には、外装が以前、小さい頃に乗ったフェリーになっていた。

「……あれ?」
「これって……金属の船?」
 ステラさんが、そう言って私をジト目で見る。
「あれー、なんでだろうな?」

 この後、ステラさんに怒られたのは言うまでもない。
 因みに後から知ったのだがリペアの魔法は、使用者の潜在意識の中にある形に戻すものらしい。 つまりは、私の中での船=昔乗ったフェリーに直結するわけだ。


 ━━2日後、一行は無事に大陸を渡りきったが港に到着した、金属船に今までになくざわついたのは言うまでもない。









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