聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ

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女神になった少女

奇跡の日。 当の本人は知りません

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 私は、一階に併設された巨大なキッチンに来ている。 そこには、20人近くの料理人がいた。
 この王宮には、ファント、ティアム以外の使用人は存在しない。 
 それにも関わらずこの広さと人数には訳があった。

 この国には、元々他国に住んでいたものが難民が多くやってくる。 その殆どが、魔物や魔獣との戦闘で大怪我を患ってまともに動けなくなった兵士や住民達。
 その為、毎日配給を行う必要がある。 

「嬢ちゃんが、料理を教えてくれるってのかぁ?」
 私は今、相沢美咲の姿に変わり町娘の格好をしている。 これは、ティアムのアイデアだ。
 どうやら、私の姿はこの国の人達に知れ渡っているらしい。 

 ━━━いつの間に。

「はい、よろしくお願いします。 相沢です」
 料理長は少し困惑した表情を浮かべる。
「アイザワか。 変わった名前だな……まぁ、いい。 よろしく頼む。
 それで、コレが嬢ちゃんに頼まれてたこの国で取れる食材の全てだ」

 私の名前は、ミサキ・ミケラーノとして通っているからこの姿の時は『アイザワ』と名乗ることにした。
 呼ばれても違和感無いしね。

 テーブルに並べられた食材は、正直、貧相極まりなかった。 小麦粉、人参、じゃがいも、さつまいも、玉ねぎ、葉野菜、何かの肉、牛乳、リンゴ、バナナ、ライチのみ。

 思ったより少ないのね……。 シチューの材料は、問題ないけど。
「バターって貰えます?」
 朝食のパンにしっかり塗られてたんだよね。 かなり、パサパサで硬いパンだったけど。 パンも改善の余地ありね。

「バターを何に使うんだ?」
「ベシャメルソースを作ります」
「べさめるそーす?」
 料理長は、小首を傾げながらもメモを取る。 他の料理人達もそうだ。

 私は、料理を開始した。
 多目のバターを中火で溶かす。
 そして、小麦粉を加えて練り込む。
 すぐに弱火にして焦げないように火を入れる。
 そして、少量の牛乳を少しずつ足しながらダマにならないようにしっかり丁寧に混ぜるととろみが出てくる。
 それに、塩で味を整えて完成。

「完成。 これをベースに色んな料理を作ることが出来るんだよ。
 ほら、味見してみて」
 私が味見したあと、料理長にも味見をさせるとツーッと一筋の涙が溢れる。
「素晴らしい味だ。 塩だけなのにこの深み」

 大袈裟だなぁと思いつつ、次の行程に移る。
 食事してわかったんだけど、この世界の料理って出汁や旨味が足りないんだよね。

 だから、私は大量の玉ねぎを使うことにした。
 みじん切りとざく切りに分ける。
 少量の水にみじん切りの玉ねぎを入れてドロドロになるまで煮込む。
 カレーとかなら、飴色になるまで炒めた方がいいけど作るのはホワイトシチューだから配慮しないとね。

 ドロドロになった玉ねぎに人参、じゃがいもを入れる。
 そして、一番のハードルだ。

「料理長、この肉ってなに?」
「ブルバードの肉だ」
 全く、わかんない!
 ブルって、牛みたいの? バードは、鳥だよね?

 私は、肉を一切れフライパンで焼き食べる。 見た目牛肉、食感と香りが鶏肉、味……魚 。
 それも、淡白な白身魚。
 私の頭が混乱してるが、不味くはない。 それどころか、美味しい。

 ブルバードの肉を軽く焼き目がつかないほど火入れをして鍋に投入。
「後は、コトコト煮込むだけ」
「嬢ちゃん、今作ってるのはなんて料理なんだ?」
「ホワイトシチューだよ。 全ての栄養価を余すとこなく食べられる究極の料理」
 私は、ホワイトシチューが大好きだ。 カレーよりシチュー派なんだよね。

 野菜に火が入ったらベシャメルソースを入れて煮込んで塩で味を整えたら完成。

 ちなみに、コンロ、冷蔵庫などは地球とそっくりだった。 
 前聖女様が作ったらしい。

「出来た! 味も……うーん。美味しぃ! ほら、皆、味見して」
 その場にいる料理人全員にシチューを差し出すも怪訝な表情を浮かべた。 料理長が代表して口を開く。
「教皇様が口にされてないものを我々が口にするのは……」

 うわぁ……めんどくさい。
「その程度の事で怒りませんよね? セイクリッド王子」
 私は、後ろでチラチラ此方を観察していたセイクリッドに声を掛ける。
「……ん、ああ。 ミサキ姉さんは、その程度の事で怒らないさ」
「それとも、教皇様はその程度で怒るほど小さな人間と?」
 セイクリッドの許可と私の脅しで料理長初め、全員が味見をし始める。

「旨い」
「これは……凄いな」
「後は、温めてパンと出せば良いから。 私は行くわね」
 私は、颯爽と部屋を出た。
「ふぅ、上手く出来て良かったよぉー。 厨房デカいし人多すぎ」

「お疲れさまでした。 ミサキ様」
 声を掛けてきたのはティアムだった。
「この姿の時は、アイザワで宜しく」
「かしこまりました。 夕食までお時間があるようなのでレティシスの所に行ってみませんか?」
 レティシス様の所に?
 てか、教皇を辞めて今は何してるんだろ。

「では、此方に」
 ティアムに着いていくと、地下へと下って行く。
「ここは?」
「王宮の地下は、エフィル神国に住まう民の共同の作業場となっています。 
 地下一階は、コンロや冷蔵庫などの道具を生成場。
 地下二階は、武器や鎧等の工房。
 地下三階は、薬の生成室となっております」

 確か、レティシス様はポーションを作ってるって言ってたよね。
「と、言うことは」
「地下三階におります」
 ティアムに着いていくと地下三階には、小さな地底湖と薬草が植えられていた。

「地下なのに明るいね」
 まるで外の光のような明るさが地下三階には溢れていた。
「これは、太陽苔と呼ばれる植物の効果でございます。
 一説では、太陽の欠片でないかと文献にも記載されております」
 植物が育つ位だからね。

 ティアムが、一つの部屋の前に立ちコンコンと扉を叩く。
「ティアムでございます。
 アイザワ様をお連れしました」
「どうぞ」
 レティシス様の声が聞こえた。 良く『アイザワ』で招き入れるよね。

「失礼します」
 室内には、大量の薬草と動物の肝などの素材が所狭しと保存されていた。
「ミサキよね?」
「あっ、はい」
 返事しちゃったよぉ!
「良く私ってわかりましたね」

 レティシス様は、口に手を当てクスクスと笑う。
「だって、ティアムにミサキを連れてきてってお願いしたんだもの」
 ……ティアム。
 私は、姿をミサキ・ミケラーノへと戻る。
 実際、相沢美咲の姿よりこの姿の方がしっくり来るのよね。

 ━━━馴れって怖いわ。

「それで、何かお話でも?」
「違うのよ。 教皇って暇でしょ?
 ポーション作りでも教えようかなって」
 レティシス様が言ったように、教皇は暇だ。
 今日は予定が色々詰まっているが、明日は何もやることがない。
「確かに、後、ポーションってどう作るか興味があります!」

 私の言葉にティアムが此方を向く。
「ミサキ様、正直にお答えください。
 ポーションが何かご存知で?」
「知りません!」
「うふふ、ポーションっていうのはこのような水薬の事を言うのよ」
 レティシス様が小さな小瓶を出してくる。

 青は傷を癒す回復薬、赤は毒などの状態異常回復薬、黄色は毒薬と決まっているらしい。
「毒薬……」
「毒薬は、狩りで使ったり、害虫の駆除などに使うのよ」
 あー、確かにそう聞けば毒薬があるのも納得。

「今日は、最も基本となる回復薬の作り方ね」
 そう言いながらレティシス様が用意されたのは瓶、水、薬草の三点だけであった。
「コレが材料よ」
「瓶に薬草入れて水出しして終わりですか?」

「うふふ、正解だけどもう一つの行程があるのよ」
 レティシス様は、微笑みながら薬草と水が入った瓶に両手をかざす。
 かざした手から、白く淡い光が瓶を包み込む。
 すると、水と薬草がキラキラと輝き始め一つに交わって行く。
「完成よ」

 レティシス様の手元の瓶の中には、薬草と水ではなく青色の液体が入っていた。
「おお、コレがポーション」
 思ってたより簡単。
「思ってたより簡単って思ったでしょ?」
 レティシス様が、そう言う。
「はい」
「魔力を込めるのって、やってみると意外と難しいのよ」

 どうやら、薬草と水の入った瓶に一定以上の魔力を込めるとポーションに変化するみたい。

 ━━━レッツ、実戦。

 今、私の目の前には薬草と水が入った瓶が置かれている。 両手をかざして……。
「ほぉぉおおおお!」
 私の気合いの雄叫びにティアムもレティシス様も苦笑いを浮かべてらっしゃる。

「ミサキ様?」
 ティアムが、私の顔を覗きこむ。
 流石は、私のメイドだ。 気付いてしまったんだね。
「魔力って、どう注ぐの?」
「えっ? ミサキ、魔法使えたわよね?」
「……私は、感覚派なので」
「…………」
「…………」
 間違ってないよ感覚と想像だもん。 間違ってないけど……何だろうこの私に対する残念な空気。

「魔法を使うとき流れみたいのを体感しなかったかしら?」
 流れ……。 そんなのあったか?
 想像したら「ドーン」だったからね。

 イヤ待て、私が想像すればポーションが出来ちゃうんじゃないかな。

「わかりました。 出来そうな気がします!」

 私は、再び水と薬草が入った瓶に手をかざす。 
 次は、先程と違って気合いの雄叫びにもデフォルメを加えて……。

「フォォォオオオ!」
 私の、両手から放たれる白い光。
 まだだ、全然、青くならない……ならば!
 フルパワーだぁぁあ!!
 その瞬間、世界が一瞬、暖かな白い光に包まれる。その光が止む。

「……なんて事だ」
 私の……私のポーションが……。
「全部の魔力を使ったのに……何も……起きなかった……」
 私の視界が黒く染まった。


 §§§§§§

 ━side━ティアム、レティシス


「全部の魔力を使ったのに……何も……起きなかった……」
 そう言って崩れ落ちるミサキを抱き止めるティアム。
「ティアム! ミサキは?」
「魔力が枯渇しているようです」
 ティアムは、自分が発言した内容に気付いた。 同じくレティシスもだ。

「…………」
「…………」

 暫しの沈黙が部屋に蔓延する。
 そして、先に口を開いたのはレティシスだった。

「私、ミサキが魔力を込めたソレ・・鑑定したの」

 震えた声でそう言うレティシス。
 ティアムは、驚いていた。 レティシスの声が震えるような事態をこの方、見たことも聞いたこともない。
 主であるミサキは、それほどにまでヤバイものを作ったと言うことだ。
 ティアムは、息を呑んでミサキが作ったソレ・・を鑑定した。


 ━━━━

 ━名称━
 ミサキ水

 ━効果━
 神水〈元水〉━あらゆるモノを浄化し癒す〈神、邪神にも使用可〉。
 神界樹の葉〈元薬草〉━食すと神格化出来る。

 ━備考━
 私の像の前に置きなさい、人の世に出して良いものじゃない。 送らなければ即世界を消滅させる。         エフィル

 PS:大地に一滴だけミサキ水を垂らすことを許可する。

 ━━━━


 ティアムは、自分の腕の中でスヤスヤと眠る少女を見つめる。
「ステータスで魔力、神外となってましたね」
「それが、枯渇するほど……ね」
 ティアムはミサキをじっと見つめ、レティシスは頭を抱えた。

「レティシス、エフィル様のお言葉通り一滴垂らしてみては?」
「ええ、もしかしたら……もしかするわね」

 エフィル神国は、魔獣の森が近くにあった為に長年魔獣や魔物を討伐してきた。
 魔獣、魔物の血液は微量ながらも毒を含んでいる。

 大地は、徐々にダメージを受け痩せ細っていく。 作物は育たなくなり、水は浄化をしなくては口にすら出来ない。

 それが現状である。

 そして、王宮の地下三階にある地底湖はこの国で唯一の水源。
 この地下水が、各所に送られているが年々穢れていた。

「私は、ミサキ様をお部屋に届けます」
「ええ、私は準備をしておくわ」
 ティアムは、ミサキを抱き上げその場から消えた。
 それから、数分後、再びティアムは地下三階に来ていた。

 そこには、真っ青な顔色のファントも来ていた。
「見たのね。 ファント」
 ティアムの言葉に無言で頷くファント。
「……ミサキ様は?」
「ぐっすり眠っているわ」
「さてと……やりましょうか」

 レティシスがミサキ水を一滴地底湖に垂らす。
 その瞬間、地底湖の水がまるでその場に存在しないのかと見間違うほど透明になった。
「これは、神々しい」
「ミサキ様……」
 ファントとティアムが祈る。
 レティシスは、すぐさま鑑定した。


 ━━━━

 ━名称━
 ミサキ聖水〈最上級〉

 ━効果〈特性〉━
〈持続力1,000年〉
 飲めば癒される〈欠損部分も修復〉
 作物に撒けば豊穣〈即日豊作〉
 薬品の効果が1,000%向上〈毒には効果なし〉

 ━備考━
 効果と特性が想像以上だった。     エフィル


 ━━━━


「…………」
「…………」
「…………」
 三人は言葉を失い立ち尽くした。


 ━━翌日、エフィル神国に住む病人、怪我人は全員が完治。
 作物は、驚くほどの成長を遂げ国民は鑑定で水を見たため〈ミサキ様の奇跡〉として連日連夜お祭り騒ぎであった。


 当のミサキは、自室のバルコニーから下を眺めて「何のお祝いだろ……楽しそうだなぁ」と、呟いたのであった。




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