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女神になった少女

ミサキ、異世界、キセキ祭り②

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 ショカから逃げた……じゃなくて、鍛治の才能が無いことがわかった私は、地下一階にある道具の生成工場に来ている。
 この工場は、衝撃的だった。

 なにがって、ベルトコンベアを使って工員が流れ作業で生活道具を組み立てていた。
 その行程に見とれていると、ファントがやって来た。

「如何ですか? お嬢様。
 この工場で作られた生活道具は世界各国へと輸出されるのです。
 エフィル神国の稼ぎ頭と言っても過言ではありません」
 たしか、生活道具はエフィル神国のみの技術って言ってたよね。

「でもね、ファント。
 新しい聖女は、最も凄い生活道具を作るかも知れないわよ」
 地球とこの世界の時間の進み方は一緒。 と言うことは30年のズレがある。

 正直、30年前と今の技術力は天と地ほどあると言っても過言ではない。
「まあ、私は機械音痴だからこの方面に関しては全くわからないから力になれないけど。
 で、私、何すればいいの?」
「お嬢様には、生活道具を動かす為のコアである魔石に魔力を注入していただきます」

 また、魔力コントロールだよ。
 正直、ポーション、包丁とミスしてるからね……はぁ。
「で、どうやるの?」
 ファントが持ってきたのは、約20センチほどの真っ黒な石と中心が燃えるように輝く石。

「この黒い魔石に魔力を注入し、このように赤い魔石にしていただきます」
「へえ、魔石って言うんだ。
 何に使うの?」

 ファントが、魔石を持ち説明する。
「この赤い魔石が魔紅石と言うもので、生活道具の動力源となります。
 一回の魔力注入で一年ほど持ちます。
 そしてこの黒い魔石が吸魔石と呼ばれ魔力が空になった物になります」

 なるほど、要は電池ね。
「でんち、で御座いますか?」
「うん、まあ電気を溜め込む為の器ってところかな」
 ファントが少しだけ考え込みハッとする。
「なるほど、列車に使われているアレ・・ですね」

 アレ・・が何かはわからないけど、あの列車って電池で動いてるのか……。
「さあ、お嬢様。
 吸魔石に魔力を注入してください」
「わかった……って、誰か教えてくれる人とか居ないの?」
「……ええ、来るはずだった方が来ないもので私がお付き合いさせて頂きます」
「そっか」
 はぁ、失敗する気しかしないよ。

 ポーションの時みたいに魔力を込めるイメージ。
 すると、私の手から淡い光が溢れる。 あっ、これは想像で作り出した〈魔力注入魔法〉ね。
 ティアムに教えたら、「そんなムダな魔法が存在するのですか!?」って驚かれた。

 何せ、魔力を一回魔法に変換して更に魔力に変換して注入するんだ。
 私でも、効率悪いってわかるけど魔力の流れがどうしてもわからないんだよね。

「ほぉおおお!」
 吸魔石が色を変えていく。
「お辞めください。 お嬢様」
 ファントの声で私は、魔力注入を辞める。
 そして、出来上がった魔石は包丁と同じように透明になっていた。
 一つ違うのは、中に白いモヤモヤが渦巻いている。

 恐る恐る、ファントの顔を見ると呆れたような表情を浮かべていた。
 悟ったよ。
 これも失敗なんだなと。

「ファント、失敗?」
「えっ、ええ、そうですね。 
 魔紅石には・・、なりませんでしたね 」
 ファントの鑑定にはこうでていた。

 ━━━━

 ━名称━
 神魔石

 ━効果━
 大気中の魔力を吸収するため半永久的に魔力が切れることがない。
 また、この神魔石の所持者の魔力は神に匹敵するようになる。

 ━備考━
 祭壇……。 エフィル


 ━━━━

「残念でございますが、お嬢様に魔力注入系のお仕事の適性は無かったようですね」
 ファントは、そう言って頭を下げる。
 私は、少し安心した。
 魔力コントロール、難しい! てか、わかんない!



 昼食後、孤児院に向かうことに。
 昼食は、勿論、ベシャメルソースでした。
 グラタンだよ……ホワイトソース好きだけどさぁ……毎食はいらないよぉ。

 王宮から外に出るとすぐに孤児院が見えた。
「うわっ、ボロッ……」
 ついつい口にしてしまうほどにボロい。
 王宮もまあまあ劣化しているが孤児院は更に凄い。
 基本的に木製で作られており、若干ながら傾いている。 廃墟と言われても納得してしまいそうな程に。

「ねぇ、ファント。 今更だけど、この国の王宮とか建物って古いよね?」
 普通の民家の方が綺麗って思えるほどに……。
「それは、王族政治ではなく、民主制の政治だからでしょうね」
 やらしい話、お金……ですか?

「ええ、その通りです。
 ミケラーノ家は、レティシス、ゲイリー、ステラの稼ぎによって成り立ってますからね」
「国からの補助金は?」
「少ないですがございますよ。
 それを、孤児院に充てているのです」
 おお……なんちゅう出来た人達なんだ……。

「さ、お嬢様。 早速、中に入りましょう。
 首を長くしてお待ちですよ」
 首を長くしてお待ち?
「あれ? 誰かと約束してたっけ?」
「すぐにお分かりになられますよ」

 中に入ると、黒髪の妙齢な女性が椅子に腰掛けうたた寝をしていた。
 ファントが一回かしわ手を打つと。
「…………喜んで!!」
 女性は寝ぼけながら居酒屋の店員のような言葉を大声で叫びながら立ち上がった。
 そして、私の方を向いて目を細目てじーっと見つめる。

「あぁー!!」
 女性が私を指差し叫ぶ。
「あぁー!!」
 私が釣られて同じように叫ぶと、横でファントが「はぁ……」と深いため息を吐いた。
 急に叫ばれるとついつい釣られるのよ人間って。

 その瞬間、私の視界が闇に染まり、息が出来ない程に柔らかい何かに圧迫される。
「…………」
 認めるか……認めるモノか。
 アレの弾力ではない! 絶対に!
「……お嬢様。 成長期はこれからです」
 ファントのフォローが耳に痛い。

 認めよう……認めようではないか……。
 お胸様の弾力であると!!
 認めたと同時に疑問が浮かぶ。
 何この状況?

「エリカ、お嬢様が混乱しておりますので離して下さい」
 ファントの言葉で私の視界に光が戻る。
「おぅ……でか!?」
 目の前には、山が二つ並んでいた。
 いいなぁ……欲しいなぁ……なんで、エフィルも絶壁なんだよぉー。
 ここだけの話、魔法でもでかくなりませんでした!

 あっ、だめだ。 涙が出そう……。

「お嬢様、そこは顔ではありませんよ」
 ファントの言葉にハッとする。
 胸しか見てなかったと、言うか私の目線に胸があるから仕方ない。
 少し視線をあげると、THE日本人顔の女性がそこにいた。
「あっ、どうも相沢です」
 私が会釈すると。

「知ってるわよ。 相沢美咲ちゃん。
 日本人よね?
 あと、新教皇」
 なっ!? それは、秘密なのに。
「うふ、不思議そうな表情ね?
 自己紹介がまだだったわね。
 私は、宮園恵里香みやぞのえりか、貴女と同じ日本人で前聖女って言う方が正しいかな?」

 目の前の女性は、前聖女様だった。
 なんか、わかる気がする。 身体から溢れ出すそこはかとない母性。
 あの、学校の女性の先生に気を許し始めたときについ「お母さん」って言ってしまう雰囲気的な……。
「お嬢様、意味不明です」
「私が理解できれば問題ないのよ」

「後、エリカ。 午前中に生活道具の指導をお嬢様に教える約束だった筈ですが?」
 エリカさんは、えへへと頭を掻きながら軽く頭を下げた。
「実はね、おチビが熱を出して徹夜だったんだよね。 今は、ケンちゃんが病院に連れていってるのよ」
「そうですか。 それは、致し方ないです」

「……孤児院なのに子供が居ないですね?」
 そう、室内に人影が一切無い。
 それこそ、声も聞こえない。
「この時間は、皆学校に行ってるのよ」
 そういや、そうか……。

「……孤児院の手伝いに私は来たんだよね?」
 子供が居ないのに何をしろと……はっはーん。
「わかりました。 わかりましたよ!」
「何がですか? お嬢様」
「どうしたの? 美咲ちゃん。
 あっ、美咲ちゃんって呼んでいいよね?」
「あっ、えーと、出来ればこの姿の時は相沢で通してるので」

「えー、なんか、堅苦しい」
 何だろう。 ノリが軽いんだが前聖女様。
「あの……人前では、相沢で。 それ以外は、お好きに呼んでもらえれば」
「じゃあ、ミーちゃんね。 決定!」
 おぉう……ミーちゃんですか、まあ、良いけど。

「あっ、さっきの話なんだけど、レティシス様は私に……」
「レティのことレティシス様なんて呼んでるの? 駄目よぉ、ちゃんとおばあちゃんって呼んであげなきゃ」
「えっ、いえ、まだ、距離感が……」
「距離感?」
 エリカさんは、小首を傾げる。

「お嬢様、エリカにその手の話は無駄ですよ。 社交性の化け物ですから。
 エリカは、会った瞬間お友達と言う沸いた考えの持ち主ですから」
 ファントが辛辣な言葉を吐くも、エリカさんはずっとニコニコしながら口を開く。
「ファー君、褒めても家にやるものは無いぞぉ」

 エリカさん、超ポジティブ、褒めてる要素を私は一つも感じなかったけど!
「何処が褒めてるんですか?」
 ファントの冷たい声が室内に響く。
「だって人付き合いが上手って」
 うん、凄い。 誤変換が過ぎる。

「はぁ……」
 ファントが、疲れた表情を浮かべる。 ここまで、疲れた表情は初めて見た。
 もしかして、エリカさんが苦手なのか?
「お嬢様、その通りです。 エリカには、言葉が通じませんから」
「そうよ、私とファー君とティっちゃんは、マブダチなんだから」
 確かに、話が通じておりません。
 と、言うか私の話も全然進んでないんですけど。

「お嬢様、レティシスの考えとは?」
 私の心を知ったファントが、さらっと話を元に戻してくれた。
 その顔は、疲れきっているけどね。
「孤児院の建て直し!」
「経営は、そこまで困ってないよ?」
「ええ、王宮からの支援で経営自体は滞りなく運営されてますから」

 ん? 経営?
「この木造の建物自体を建て直すんじゃないの?」
「「えっ?」」
 エリカさんとファントが、コイツ何言ってるんだと言う表情で私を見ている。
 バカにしている訳ではないが、エリカさんにリアクションを取られるのは何故か辛い。

「いや、私の魔法なら出来る気がするんだよね。 
 想像魔法だし」
「「創造魔法!?」」
 おお、二人とも驚いてるね。

 実は、昨日の夜こっそりと実験したんだよね。
 そしたら、色々出来たんだよ。
 例えば、ミニチュアサイズの王宮周辺とか。バルコニーから見える景色だけなんだけどね。
 でもね、一番驚きなのがミニチュア王宮なんだよね、内装が私の記憶して想像した通りになったんだよ。

 もしかしたら、それを応用して家を作れるかもって考えたんだよね。
 いわば、実験です!
 まあ、子供達が住むから安全を考えて耐久性テストとか色々やることがあるけどね。

「ねえ、ミーちゃん。 創造魔法とか、誰かに言っちゃダメよ?
 頭のおかしい娘って思われちゃうから」
 いや、確かに思われるよね。
 同じ事を言われたら私も、誰にも言わない方が良いよ?ってアドバイスするもん。
「えっと、でも出来るんだよね」

 私は、想像魔法で考える。
「出でよ、醤油!」
 別に台詞はいらないけど気分で!
 すると、私の手からドボドボと黒い液体が垂れる。
 …………不味い。
 醤油差しから流れる醤油をイメージしたが為に垂れ流し状態になってしまった。

 急いで醤油を止めるも、私の手も床も醤油まみれ。
 すると、エリカさんが私の手を取り舐めた。
「ちょっ!? エリカさん!?」
 すると、エリカさんの頬に涙が溢れる。
「醤油だぁ…………」
 涙声でそう呟く。

 考えて見ればエリカさんは、30年以上ここに住んでいて醤油を懐かしがるのも当然か……。
 私は、エリカさんの為に色々作り出した、醤油、味噌、ソース等の調味料を。
 勿論、瓶入り。

 実は、これも昨日の実験の成果。 私が知る味の物であれば想像魔法で生み出すことが出来る。
 知らないものに関しては、見た目は同じだが無味無臭だった。

 また、完成された料理に関しても無味無臭どころか一口食べると吐き出す代物だった。
 考えるに、不特定多数のイメージと味を持つものと私が知らないものに関しては作っても美味しくないと言うところだろう。

 ━━━そうだ。 孤児院の子供達のために美味しいご飯でも作ろう。
 私は、エリカさんと孤児院の子供たちの為に食事を作り始めた。

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