聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ

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女神になった少女

ミサキ、異世界、キセキ祭り③

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 私は、孤児院の子供達の為に厨房に来ている。
 ベシャメルソースの香りが漂っていた。
 夜も、食べさせる気だったのか……。

「嬢ちゃん、ベシャメルソースは革命だな」
 料理長は、破顔しながら言ってくる。
 だろうね。 毎食、出てくるくらいだから。
 この世界の人達は塩味しか知らなかったから毎食でも飽きないんだろうな……。
 私は、飽きた……。
 まさか、塩味が懐かしいと思えるとは……いや、一日しか経ってないけどね。

「う、うん」
「そうだ。 今日よ、何故・・か豊作でよ、こんな作物が出来てたんだが」
 何故・・か? 豊作に何故かなんて付けることがあるの?
 って、これは…………!?
「大根じゃないですか!」
「おっ、知ってるのか?」

 えっ? 
 知らない大根知らないのに作物扱いしたんですか? 食べる気だったんですよね。
 クレイジーだな。
「これは、野菜です。 サラダにしても煮付けにしても炒めても沢庵なんかもいいですね!」
 エリカさんに和食食べさせてあげられるよ、醤油もあるしね。

 取り敢えず、厨房の一角を借りてレッツクッキング。 という訳で、根本的な事を聞き忘れてました。
「料理長、孤児院の子供の数って何人くらいです?」
「8人だな」
 おや。
「思ったより少ない」
「はは、基本的に養子になって引き取られる子が多いからな」

 驚きなことにこの世界と言うかエフィル神国では、養子にすること自体は当然と言うか自然なこと。
 それは、多種族が暮らしていることが起因となっているらしい。
 他種族受け入れれるなら、血が繋がってない位どうってことないよね? と、言うことらしい。

 これで、一つの謎が解けた。
 私に対するステラさんや、ゲイリーさん、レティシス様の受け入れかただ。
 その根幹は、エフィル神国にあったんだね。

 そんなことを考えながら、私は大根を輪切りにし鍋に並べる。 そして、作り出した白出汁を水で薄める。
 おお、昨日は気付かなかったけど綺麗な水だなぁ。

 大根を入れた鍋を火に掛ける。
 その間に、味噌、醤油、砂糖、ワインを用意する。
 それらを適量に混ぜ木の棒に付けて直火で焼く。
「良い香りですね!師匠」
 そう言ってきたのは、料理人の一人である獣人ウサギ族とエルフェンのハーフであるミデア。
 美人なウサ耳お姉さんだ。
 なんと、年齢は14歳!

 …………年下でした。 どう見ても私が師匠に見えない。
 彼女は、私が厨房にいるときに限り専属アシスタントに命じられとさ。
 師匠呼びは、勝手にしてるんですよ。

「ええ、これは、味噌と言う調味料よ。
 こうして直火で焦げ目を付けると香りが一段階上がるのよ。
 でも、焼きすぎたら美味しくなくなるから注意ね」
「はい!」
 焼けた味噌をボールに移し再度混ぜ合わせる。
 これで、大根に掛けるタレは完成だ。

 次は、ブルバードの肉をミンチにしてつくねを作った。 本当は、ハンバーグとかでもよかったけど淡白な白身魚の味じゃ味気ないものが出来そうだし。
 つくねなら、醤油と砂糖とみりんと果物で作ったタレを塗って焼けば旨味も付くしタレも熟成出来る。

 私が次々と焼いていると匂いに釣られてか、多くの人が厨房に集まって来ていた。
 味噌の焼ける匂いも、タレが焼ける匂いもお腹に来るもんなぁ……。

「ミデア、つくねを多目に作って試食して貰って」
「いいんですか?」
「新しい料理が広まったら最高じゃない」
「師匠……」
 ミデアの眼がウルウルと潤んできている。
 罪悪感を感じてしまう。 

 ミデアごめんなさい……本当は、ベシャメルソースから脱却したいだけなの。
 醤油と味噌とか広めとけば勝手にアレンジしてくれるでしょ。

 大根とつくねを作り終えた私は、その料理を持って孤児院へと向かった。 勿論、料理はファントが運びましたよ。

 孤児院に着くと、小学生くらいの子供達4名が食事をするテーブルで横並びになって勉強をエリカさんに教わっていた。
「エリカさん」
「あっ、ミーちゃん」
 両手を振りながら駆け寄ってくるエリカさん。
「人前では、相沢で」
「そうだったわね。 ごめんね、ミーちゃん」
 ビックリするほどに人の話を聞いてませんね。


「料理を持って来ましたよ。 何処に置けば?」
 私がファントを指差すとエリカさんは、食事をするテーブルを片付けて真ん中に置くように言ってくる。
「ファント」
「かしこまりました」
 ファントが、テーブルに鍋などを置くとエリカさんは、大声で人を呼び始めた。

「ケンちゃん! ご飯よ。 皆も降りてらっしゃい」
 エリカさんの言葉に、赤子を抱いた犬耳の青年、ドワーフ族青年、エルフェンの少女が降りてきた。
「腹減った……なにこれ、凄い良い匂い」
 赤子を抱いた青年がそう口にした。

 青年が赤子をエリカさんに渡し、私をジーっと見る。 すると、私の正面に来て私の頭を撫でた。
「新入りか? ……10歳位か。 ヨロシクな」
「クッククク……」
 ファントが鍋を置きながら肩を震わせ笑っている。

「私、16歳ですけど!
 えっ? 何? チビだからか?
 チビだからなのか?」
 グイグイと、青年に突き詰める。
 青年は、苦笑いをしながら、
「悪かった、俺の一歳上……なんだ」
 年下かよぉ……いや、今更だけど、この青年の身長って二メートル近いんじゃないかな。

「もー、ケンちゃん、ミーちゃんを苛めちゃダメよ。 教皇様なんだからぁー」
 エリカさんの言葉に、その場にいた全員が固まる。
 昨日見た教皇様と似ても似つかない少女を教皇をエリカさんがはっきりと教皇様と言った。
「エリカ……口が軽すぎです」

 ファント……お前もな。
「私は、何も言ってませんが?」
 エリカさんに、口が軽すぎと言った時点でエリカさんの言葉が真実と言うことが確定してしまったでしょうが……。
「あっ……」
 ファントは、エリカさんが絡むとポンコツになるようですね。

「さっ、冷める前にご飯を……」
「いやいや! 教皇様が何でこんなところに?」
 青年が叫ぶ。
「レティもよく来てるじゃない」
 エリカさんが、あっけらかんと言い放つ。 青年は「それは、そうだけど……」と口がごもる。
「じゃあ、食べましょうか?」
 エリカさんの行為で私もご相伴に預かることに。

 私が作ったんだけどね。

 大根の味噌がけとつくねは、結果から言うと大好評だった。 エリカさんは、懐かしの味に恍惚の表情を浮かべていた。
 食後、子供達は二階に。
 私とファントと青年は、一階でお茶をしながら話すことにした。

「エリカさん。 ……その人だれ?」
 私は、ムカつく青年を指差す。 
 年齢を間違えるのは許そう、そんなのは日常茶飯事だ。
 だが、子供のように頭を撫でられるのは嫌いだ!
「お嬢様、マジで?」
 ファントの口調が崩れる。

 マジで、何でだろうね。
 頭を撫でられるのは無理なんだよね。 昔から。
「まだ、自己紹介してなかったわね。
 私の実の息子のケンちゃん。
 父親は、黒豹族でゴリちゃんと同じ職場で働いてるのよ」

 ……ゴリちゃん?
「ゲイリーです」
「ぶふぉ!?」
 私は、飲んでいたお茶を吹き出した。
「大丈夫なの? ミーちゃん」
 心配するエリカさんと反対にファントは冷静に掃除していた。

「お嬢様はゲイリーに対するゴリラ弄りが大好物ですから興奮したんでしょう」
「興奮するの?!」
 エリカさん、リアクションおかしい。
「興奮じゃないです。 ツボなだけです。
 気持ちの悪い言い方は辞めてください」
 お前、クビな。 ファント。
「申し訳ありません」

「息子さんですか」
「ええ、旦那は遠征中よ」
 エリカさんは、ここで幸せな生活を見つけたんだな……。
「えっと、聞きたいことがありまして」
「スリーサイズ? 上から……ひゃく」
「違います! エリカさんのスリーサイズ聞いてどうなるんですか!?」
 まて、違わなくもない。
 今、上からひゃくって聞こえたぞ。

「どうすれば、育ちますか?」
 主に胸が……。
「うーん、私の一族みんなこんなだからねぇ」
 胸を持ち上げるエリカさん。
 遺伝子ですか……ムリじゃないかも。
 遺伝子組換えを……ふむ。
「お嬢様、脱線しております」

「あっ、そうだった。 聖女について聞きたいの」
「聖女について?」
 そう、聞かないといけないのだ。
 何せ、三ヶ月後に世界の王族と現聖女である五十嵐玲香が来るんだから。

「聖女はね、ミーちゃんが浄化した〈魔獣の森〉に結界をはる役目を担っているのよ」
「それは、聞き及んでます」
 エリカさんが、私に真剣な眼差しを送る。
 それほどにまで重要なことがあるのかと私の鼓動は早くなる。
「以上」

 ━━━えっ? 以上。

「魔獣の森に結界を張るだけ?」
「そっ、それ以外は自由行動よ」
「なんか、特殊な力は?」
「無いわよ。 あると言えば知識くらいね」
 想定外だ。 想定外過ぎる。

「それじゃあ、フェビカ王国にいる現聖女は……」
「知識が必要とされなければ、もう、無用の長物ね。
 そうは、ならないと思うけどね」
「どう言うことですか?」

「フェビカ王国は、人族主義を掲げていてね。 その旗頭に現聖女を掲げる可能性の方が高いわ。
 現在迄、聖女が行ってきた功績があるから国内の反発も少いだろうし。
 最悪のケースは、人族による侵略戦争ね」

 …………目の前の人は誰!? エリカさんだよね?

「お嬢様、エリカは頭が沸いて居ますが…………実は、賢いのです」
 考えてみれば、列車、コンロ、冷蔵庫とか国の根幹も作り変えた人だったね。
「……なるほど。 侵略戦争が起きたとして上手くいくものですか?」

「ミーちゃんは、この世界の種族の割合を知ってる?」
「いえ」
「フェビカ王国の人族だけで65%を占めるのよ」
 嘘でしょ。 他の4ヵ国で35%。

「量より質って言う人がいるけど、この件に関しては、数は力だからね」
 確かに、それらが一つずつの国に攻めてきた場合楽観視出来るものではない。
「戦争は、起きるのでしょうか?」
「まあ、向こう数年は無いわね。 
 魔獣が居なくなったことにより先ずは、停滞している農業を優先しなきゃ」

「なるほど……」
「ミーちゃん、自分のせいで戦争が起きるかもって考えてるでしょ?」
 図星だ。 私が、この状況を作り出したにはかわりない。
「はい……私が、魔獣の森を」
「それは、違うわね。 全部、考えなしに事を起こしたレティのせいよ!」
 エリカさんが、立ち上がって熱弁する。

「いや、それは」
 流石にレティシス様のせいには出来ないよ。

「と、言うのもあるけどね。
 戦争を起こそうと考える人がいるからいけないのよ。
 地球でも、戦争はあったでしょ。
 同じ人族でも殺しあうのよ。 種族が違うと尚更ね。
 自分と違う存在が怖いのよ。
 だから、争わずにはいられないの」
 エリカさんの言葉は重い。
 この世界で知ることも多かったのだろう。

「だからね、ミーちゃんのせいじゃない。
 〈魔獣の森〉があっても遅かれ早かれ彼等は侵略戦争を起こしたかも知れないわ。
 ある意味、ミーちゃんは救ったのかも知れないわね……」
 エリカさんの言葉の後半は、一人で何かを考えるようにブツブツと話す。

「あー、悪い。 母さんは、こうなると暫く帰って来ないからさ。
 今日は、もう遅い帰ったらいい」
 ケンに言われて、私とファントはその場を離れた。

「ねぇ、ファント。 エリカさんが最後に小声で言ってたことなんだけど」
 ある意味、私が救ったのかも知れないって。
「ええ、近年のフェビカ王国は不穏な動きを見せていましたから。
 今回、ゲイリーとステラがフェビカ王国に行ったのもその点を見極める為だったのです。
 まさか、お嬢様を拾ってくるとは想定外でしたけど……」

「そっか」
 なんか、ドロドロしてるな。
「ドロドロしてるのは、フェビカ王国だけですよ」
「聖女じゃなくて良かったって思ったよ」
 そんなところに居たくないからね。

「さあ、お嬢様。 明日は、早朝からステラと共に教育現場へ出勤となってます。
 お早めにお休みください」
「ありがと」
 部屋に入ってバルコニーから街並みを見下ろす。

「何処の世界も複雑なんだな……」
 そんな呟きが虚空に消えた。


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