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女神になった少女
召喚しちゃった……テヘッ
しおりを挟む……今、エフィル神国学校は恐怖と混乱が巻き起こっていた。
「原因は、ケンだ」
「違うし、ミーちゃんだろ」
私とケンは、責任の擦り付け合いを繰り広げていた。
「ミーちゃん、言うな」
「相沢先生も呼び捨てヤメロ」
「わかったよ。 ケンちゃん」
「バカにしてるだろ」
「してるよ。 この状況を起こしたのは君だしね」
今、私達の目の前には全長10メートルは越えるであろうスーツ姿の巨大なおじさんが私達を見下ろしジロジロと見ているのだ。
――――何故こうなった。
§§§§§§§
10分前、9年5組。
「ちっ……」
「先生が生徒に舌打ちかよ」
まさか、ケンのヤツが特殊魔法の使い手とは。
しかも、属性がな……。
「あー、ケンが使えるのは〈召喚属性〉だ。 このマザコンが!」
「何でマザコン扱いなんだよ!」
あれだ。 あれ。
「ママが好きすぎて〈召喚属性〉を覚えたんだろ?
何時でも、大好きなママに会いたいから。
なっ? ケンちゃん」
「違うわ!」
ケンが真っ赤な顔になって否定する。 が、否定すればするほどマザコン疑惑が深まって行く。
私じゃないよ。
同級生達の。
でもさ、「わかるわ」とか「あの母ちゃんなら仕方ないよな」「仕方ないよね」等、擁護する言葉ばっかりだ。
つまらん。 実につまらん。
ママのおっぱいを飲んでるって言い張れば良かった。
「相沢様、ケンの事を嫌いすぎでは?」
頭を撫でた怨みは深いのだよ。
ティアムは、私の怒りのポイントのズレに苦笑する。
「相沢先生! 〈召喚属性〉って聖女召喚と同じですか?」
一人の女性徒が手を挙げて質問する。
やっぱり、軍隊学校じゃないよね。 全部の教室を回ったがおかしいのは、ステラさんの教室だけだった。
「原理は違うね。
聖女召喚は、座標固定されていてその中から聖女の適性が高い人を呼び出すの」
━━━へぇ、そうなんだ。
勝手に口が話してるから私は自分が話している知識は知らないのよ。
「〈召喚属性〉は、術者の魔力によって一時的に異なる世界の力を具現化するのよ」
「と、言うことは全てはケン君の魔力次第ってことですか?」
「そうなるわね」
私を見るケンの顔が苦笑いを浮かべる。
獣人の特に黒豹族は、魔力が少なく身体能力が高い。
つまり、その血を受け継ぐケンの魔力も低いと言うことだ。
「あー、仕方ない。
初回特典として私が力を貸そう」
仕方ないよね。
私も召喚してみたいし。
「マジで?」
ケンの表情が満面の笑みを。
━━━一瞬だが、不覚にもドキッとしてしまった。
「おっ、おう……んじゃ、ここじゃなんだから外で広いところはない?」
冷静を装いながら私は、ケンに尋ねる。
「野外魔法修練場がいいんじゃないか。
物凄く広いし」
「じゃあ、そこに行こうか」
私は、生徒達を伴って野外魔法修練場へと向かう。 一応、ステラさん、バルク教頭にも来て貰っている。
魔法修練場へ行くとそこには大勢の生徒が集まっていた。
噂が噂を呼んで見学者が殺到したようだ。
「よし、ケンよ。 早速、召喚して貰うよ」
「どうやったら出来るんだ? 俺は、魔法を使えないんだぞ」
私は、ケンの背中に手を当てる。
「ちょっ、何を……」
「私が魔力を送るからケンは、魔法陣をイメージして」
「魔法陣?」
「頭に浮かんでくるでしょ?」
ケンは、目を閉じる。
そして、一息つくと脳裏に魔法陣が浮かんだ。
「ああ、見えた」
「それを思い続けて……行くよ」
私は、想像する。
魔力を他人に分け与える魔法を。
暫くするとケンの身体を白い光が包み込む。
「コレが……魔力……」
初めて感じた強力な魔力を纏った自分の手をじっと見つめるケン。
「ケン、余所見しないで魔法陣に集中」
「うん」
うんって……なんだその可愛らしい返事は!
二メートル越えてるくせに猫耳とか━━━そこは、ちょっと引くわ。
そんな事を考えていると一メートル程の魔法陣が目の前に現れる。
なんか……魔法陣がちっちゃいな。
ギャラリーも見てるんだしもうちょい魔力込めるか!
「ちょっと、ミーちゃん!?
これ、ヤバい予感がするけど!」
「…………」
やっちまった気がする。
一メートルだった魔法陣が二十メートル程のサイズに広がったし魔法陣が光の壁に覆われた。
そして、ガラスのように光の壁がパリンと割れた。
§§§§§§§
━━━で、今に至る。
「ミーちゃん……何とかしろよ」
「召喚したのはケンでしょ」
私とケンが言い争いをしていると巨大なおじさんが口を開いた。
『ワタシを呼んだのは貴様らか?』
重低音のボイスで尋ねる。
「「コイツが呼んだ!」」
私とケンは、同時に指を指し合う。
「「違うだろ!」」
『ふむ、召喚者は貴様で……魔力は貴様……』
ケンと私を交互に見た後、巨大なおじさんはゆっくりと目を閉じる。
無論、私もケンも認めない。
『ここは、エフィルの世界か。
ん? そこの貴様……何故、エフィルの魔力を感じる?
いや、それ以上に強力な魔力を感じるな』
巨大なおじさんがそう吐き捨てた。
「エフィルを呼び捨て……おじさん何者?」
「お前もな……」
ケンが私にジト目をしながら言う。
確かに、今の発言は失敗した。
「おじさん、見上げるの疲れたからどうにかなんないかな?」
首を擦りながら尋ねる。
『おお、それは悪かったな』
スルスルと小さくなり、人族程の身長になる。
……何て事だ。
「そのスーツの素材は何!?」
「その小さくなるのは何!?」
私とケンは、それぞれ違う事を言う。
「ケン、アナタはバカなの?
あの素材で服を作れば世の中の奥様方は発狂ものよ!
サイズが変わるのよ!
成長する子供にも、マタニティ服にしても革命よ!」
私は熱弁する。
何せ、私の服ってミルムとラムルと兼用なんだ。
私のサイズの大人用の服は、元の世界にもここの世界にも無いのよ!!
「いや、あの魔法があれば背のデカい一族にとっては奇跡なんだ!
わかるか?
家の中を歩いているだけなのに頭を打つあの悲しさ!」
「知らんし! てか、自慢か! 自慢なのか!」
私は、これ以上ちっちゃくなりたくないんだよ!
……待て、これはもしかしたら、もしかするかも。
「つかぬこと伺いますが、その背を縮ませた魔法? と言いましょうか現象は、背を大きくすることは可能でしょうか?」
私はおじさんに尋ねる。
『可能だぞ』
きましたよ!
私は、即座に土下座する。
頭を下げて「ソレを教えて下さい」と懇切丁寧にお願いする。
『あー、でもな。 この背を変えるのも服のサイズを変えるのも教えたところで使えないぞ。
これは、私の特異体質の一つだからな』
「「ちっ……」」
私とケンの舌打ちが重なる。
『えっ? 舌打ちした?』
「「いえ、別に……」」
あっ、そうだ。
エフィルの事を聞かないといけないのにケンが邪魔だな。
「あのー、召喚した者の意識が無くなっても大丈夫ですか?」
『ああ、魔力があるから問題ないぞ』
そっか……ソレなら安心。
「だっ!」
私の拳がケンの右頬を捉える。
複数回、地面を跳び跳ねながらケンが壁に激突する。
ピクピクとしてるから死んでは無いだろう。
『君、何やってるの?』
召喚されたおじさんがドン引きしていた。
「いや、エフィルについて聞かれたら困るので」
『ソレなら、そう言ってよ』
おじさんが、指をパチンと鳴らすと世界が止まった。
「ん? 何これ」
周りの人どころか舞い上がる土埃や落ちる葉っぱまでが停止していた。
『私だけが使える超時空魔法の時間停止だ』
「おお、凄い!」
私が感動していると一つの光が私の前に現れる。
『ちょっと!! ミサキ! あんた何やったの!
また、アホみたいな……ま……りょ……く?
神王様?』
『おお、エフィルか。 久しいな』
『お久しぶりでございます』
「エフィル、おじさんと知り合い? 神王様? とか言ってたけど」
『申し訳ありません! 神王様!
ミサキ! この方は神々の王の神王様よ!』
神々の王。
なるほど、エフィルとアースの上司ね。
「ほう……何で人間のおじさんの姿なの? スーツ姿だし」
『いやな、あの莫大な魔力の召喚に見合う人物が私だけだったのだ。
この姿は、君の深層意識から汲み取ったのだよ』
深層意識から汲み取った姿が、おじさんとか嫌なんですけど。
わりと本気で。
『……何かごめん』
「心読みました?」
『いや、露骨に嫌な表情を浮かべていたから』
「そりゃ、深層意識からおじさんとか。
これでも、16歳の乙女? ですよ」
『で、何でワタシを呼んだのかね?』
「えっ、別に呼んでませんよ」
『『えっ?』』
エフィルと神王のおじさんがキョトンと言う表情をしていた。
「正確に言うと初めての召喚で張り切り過ぎたらおじさんが出て来たんだよ」
『『…………』』
暫くの沈黙の後、二人はコソコソと相談する。
『取り敢えず、私は帰るわね』
エフィルは、その場から姿を消した。
「で、おじさんはいつ帰るの?」
特に用事ないし。
『…………あっ、そう』
おじさんがパチンと再度、指を鳴らすと世界が動き出した。
そして、元のサイズに戻る。
『ワタシは、帰る。 むやみやたらに召喚せぬように頼むな』
「うん、わかったよ」
私の言葉におじさんが微笑み。
『聡い子だな、ではな』
そう言って巨大な手で私の頭をグリグリと撫でる。
……
…………
………………
「頭を撫でるんじゃねぇぇ!」
私は、おじさんの指を掴み思いっきり床に叩き付けた。
ドスンッと言う音と振動と共に、おじさんの姿が消えた。
━━━今度会ったら仕留める。 絶対に!
「あの……相沢様?」
恐る恐るティアムが、近付いてくる。
「先ほど方は……神に連なる御方では?」
ティアム……正確。
これは、内緒だよ。
神王っていう、エフィル達の上司だって。
「!? そんな存在を投げましたよね!」
私の頭を撫でたんだよ!
次こそは……仕留める。
「頭を撫でた程度でですか?」
ティアムよ。
程度ではない。
その昔、私の頭をガシガシと撫でた人物がいた……。
そしたら、身長が縮んで居たんだ! それから、私は頭を撫でられるのが嫌いなんだ。
「…………ソウデスカ」
ミサキとティアムがそんなやり取りをしている間…………。
「相沢先生……あんなのを投げたぞ」
「流石は閣下」
「バケモノだろ……」
「いや待て、あれを」
その生徒が指差した先には、グッタリと横たわるケンの姿があった。
「ケン先輩!?」
「まさか……9年生で1番の体術を誇るケンさんが……」
「はっ! まさか」
「でも、土下座してたよ」
「うむ。 閣下はやはり偉大です」
「ケン先輩があの巨大なおじさんにヤられたのを怒って投げ飛ばしたのか!」
「土下座してでも生徒を護ろうと!」
「すげぇー! 相沢先生パネェ」
「「「相沢! 相沢! 相沢!」」」
勘違いが勘違いを呼び相沢先生ことミサキは、エフィル神国の生徒達の中で教皇様と同格の存在に格上げされていた。
「……ティアム。 この相沢コールは何?」
「相沢先生が土下座したのにも関わらず殴られたケンのことで怒りを覚えあのお方を投げ飛ばした。
と、言う素晴らしいストーリーらしいですよ」
なんと言うことだ……土下座を見られてたなんて。
じゃなくて。 今更、私が殴ったなんて言えるわけない。
よし、ここは洗脳の魔法を……。
「相沢様」
ティアムの冷めた声が私の後頭部に突き刺さる。
「冗談だよ。 ちゃんと謝るよ」
「左様でございますか」
「おい! ケン君が起きたぞ!」
教員の一人が叫ぶと全員の視線がケンへと向かう。
そして、起き上がったケンが一言。
「くっ、何があったんだ?」
「君が、召喚したあの巨大なおじさんに殴り飛ばされたんだ。
そして、相沢先生に助けられた」
「そうか……有難う御座いましたミ……相沢先生」
「相沢様?」
ティアムが疑いの眼差しを私に向けてくる。
なにもしてないよ!
結果オーライ?
「そんなわけ無いでしょう」
わかりました。
私がわるーございました!
「ケンにお伝えください」
あっ、はい。 でも、この生徒達の勘違いはどうしよ?
「勝手に勘違いを起こした彼等が悪いのです。
此方が関与すべき問題ではありません」
ティアムって、そう言うところドライだよね。
「私もファントも基本的に主である貴女以外、興味ありませんので」
「ソウデスカ……ワタシ、アイサレテルー」
こうして騒々しい一日が終わったのであった。
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