聖女召喚で呼ばれた私は女神(仮)でした

ミツ

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閑話 其々の思惑

聖女 五十嵐怜香③

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魔王、私の目の前には魔王と呼ばれるおじいさんがいる。
 そして、魔獣の森を復活させると言うのだ。
 …………正直、私に取って歓喜すべき事案なのだが。

「平和を乱そうと言うのですか?」
 そう、私は今のスタイルを変えるわけにはいかないの。
「違うぞい。 魔獣の森があるからこそあの程度で済んでたんじゃ」
 その場にいる全員から「えっ」と言う声が漏れ出す。

 その気持ちはわかる。
 私とてこの世界の歴史を1から調べた。 魔獣の森に関する記述があまりにも少なかった。
 ただ、魔獣による甚大な被害に関しての情報はある。

 そう、記録として残っているのは被害だけ。
 その生まれや訳などは一切無い。
 あるとすれば、個人の勝手な考察だけ。

「魔獣の森の本来の役目は、負のエネルギーを取り込み浄化することにある。
 その過程で負のエネルギーを吸った魔物が魔獣へと変貌を遂げてしまう。
 つまり、魔獣の森が無くなると世界は魔獣だらけになってしまうのじゃ」
「では、新教皇が行った浄化は間違いだと?」
 国王は、魔王に尋ねる。

「そうじゃ。
 暫くは良いが、いずれ世界は魔獣に覆われる。
 それを防ぐためフェビカ王国の外れに魔獣の森を作りたいのじゃが」
 魔王の言葉に顔が青ざめる国王。

 兵の数で何とか魔獣を防いできた、フェビカ王国に単体で魔獣を狩れるだけの実力者がいない。
 万が一にも、魔獣の森から大量の魔獣が現れる場合、それ即ち国の破滅を意味する。

「……魔王様、それは出来ませぬ」
「ほう、何ゆえ?」
「我が国に魔獣と敵対できる者がおりませぬ。
 万が一の場合が御座いますので」
 魔王はニタァっと笑う。

「そう言うと思っていたわい。
 勇者召喚を行うんじゃ」
「勇者召喚ですと!?」
 聖女召喚と違い勇者召喚の方法は既に消失していた筈。
 しかし、魔王は勇者召喚を行うと言う。

 ━━━一体どうやってそんなモノを。

「ふぉっふぉふぉ、古代魔法書を見つけての頑張って解読したのじゃよ」
 魔王は、まるで私の心を読んだように答えた。
 更に言葉を続ける魔王。
「どうじゃ、国王?」

 国王は、頭を抱える。
 魔王から提示されているのは、諸刃の剣とも言える。
 私としては、申し出を受けろと言いたいが……。

「それにの、魔獣の森と言うても以前の1/10程しかないでの」
「何故ですか?」
 魔王に国王が問う。
「以前の魔獣の森は、年々拡大化してあのサイズになったんじゃ。
 つまり、魔獣の数もそう多くならんと考えるとええぞ」

「わかりました。 魔獣の森の復活と勇者召喚をお願いします」
 国王の言葉により魔獣の森を復活させることが決まった。
 国王は、私を見て「よろしいですな? 怜香殿」
 と。

 よろしいに決まっている。
「はい……。 陛下の意思に従います」
 複雑な表情を浮かべながら私は答えた。
 まるで憂いを持ってるかのように。


 §§§§§§


 即日、勇者召喚が行われる事になった。
 その場には、国王、クリシュナイダー、私、宰相、魔王、騎士団長、副騎士団長と少人数で来ていた。

 勇者召喚を不特定多数の人に見せるものではないと魔王が言ったからだ。
 後、魔王とも話した。
 魔王とは、魔法の王と言う意味で人族でありながら齢300百歳を越えていると言う。

 そして、世界を転々としており今回は魔獣の森が浄化されたことを知り、聖女召喚が行われたフェビカ王国にやって来たと言うことらしい。

 怜香は、未だ複雑である。
 魔獣の森をフェビカ王国に発生させると言うことは聖女と言う称号を持つ怜香に残された制限時間は30年と言うことになる。

 更に言えば、国王も宰相も気づくべきであった。
 この30年を過ぎれば新たな聖女が必要となることを……それは、他国に呼び出されると。
 しかし、魔獣の森の浄化と言う事象はそれすらも忘れさせてしまうとんでもない事態。

 唯一、気付いている怜香は何も言わない。
 30年あれば、どうにか出来るであろうと打算的な考えを持っていた。

「さて、そろそろ召喚をやるぞい」
 その言葉に魔王が巨大な魔法陣を描く。
 その中心には、水が入った小さな小瓶。
「それは?」
 私が尋ねる。

「今は無き聖域の水じゃよ。
 これには、女神エフィルと繋がるだけの力を持っているんじゃ。
 無論、お主の召喚にも使われたはずじゃぞ。
 の、国王よ」
「はい、ほんの僅かですが……その瓶はやりすぎでは?」
 国王は、魔法陣の中心におかれた聖域の水を見る。 国王の話では、聖女召喚の10倍量と言う。

「まあ、勇者は神の加護が付いてないといかんから聖域の水が大量に必要なんじゃ」
 カラカラと魔王が笑う。

 そして、魔王が手持ちの杖をカンッと魔法陣の上に突くと金色の輝きが部屋を包み込む。
「何と……女神降臨の予兆ではないか」
 金色の光は女神エフィルが降臨するときに現れるものであるらしい。
 正直、私には理解しがたい。
 神が、人の前に現れるなど……。

 すると、女性の形をした光が舞い降りる。
『我を呼ぶのはそなたらか?』
 怜香を除いた全員が両膝をついて祈る。
 怜香もそれを真似て祈った。
「女神エフィルよ。 フェビカ王国に魔獣の森を復活させるため守護者となる勇者を」

 魔王の言葉にフムフムと頭を動かす女神エフィル。
『良いだろう。 世界の為だ』
 光が消えると、目の眩むような光が起きる。
 そして、魔法陣の上には赤髪の少年、青髪の少年と桃色の髪の少女が立っていた。

「おお、成功だ! 魔王様、鑑定をお願いします」
「うむ。 鑑定」


 ━━━

 レベル:1〈現在の能力値〉

 HP:100000〈100〉

 MP:100000〈100〉

 力:100000〈100〉

 守:100000〈100〉

 魔:100000〈100〉

 ━備考━
 神との契約により、過去の記憶を封印。

 取得能力
 ●限定不老不死
 食事、睡眠など不要の存在。
『魔獣の森』限定。

 ●神の契約
 強大な力の代わりに、過去の記憶を封印、隷属化。
 強大な力の発動は『魔獣の森』限定。

 所有者:フェビカ王国 国王

 ━━━


「ふむ……これは、何とまあ」
 魔王は紙に書き写し国王に渡す。
「魔獣の森限定か……」
「何か不都合でもあるのかの?」
 魔王の言葉に国王は「特には」と答えた。

 実際は使えるのであれば他国の侵略の兵にでも加えようと考えていたのだろう。
 しかし、過去の封印……つまりは、記憶の封じ込め?

「陛下、この者達の名を聞いても?」
「うむ。 その方ら、名を何と」
「「「御座いません」」」
 三人は口を揃えた。
「陛下が与えればよろしいので無いですか?」
「…………うむ。 いや、ここは聖女殿に任せよう」
「良い名が浮かばなかったのじゃな?」
 魔王が言うと国王が頭をかいた。

「名を考えるのが苦手でしてな。
 クリシュナイダーも妃が考えたので」
 私は、考えた。
 そして、赤髪の少年に『ベニ』青髪の少年に『そう』桃髪の少女に『桃花とうか』と名付けた。

「紅、蒼、桃花か良い名だ。 して、魔王様。
 如何様にして魔獣の森を復活するので?」
 魔王は一つの枝を差し出す。
「これは、ヤドリギと言ってな、魔獣の森の中心に生えていた負のエネルギーを浄化する木じゃ。
 これを、森の中心部にしたい場所に植えよ」

 魔王は国王に枝を手渡す。
「そんなに簡単に……」
「良いか、魔獣の森はすぐに広がるじゃろう。
 魔獣の出現まで時間はあるが早めに聖女に結界を貼らせるんじゃな。
 どれ、ワシは世界をふらつこうかの」
 杖をカンッと叩くと魔王の姿がまるで霧のように消滅した。

 そして、すぐにフェビカ王国の外れの地にて魔獣の森を復活させた。
 だが、世界にそれを知らせることは無かった。
 魔獣の森の真実をエフィル神国で行われる五大国会議の場所で教えて力を得んが為に。



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