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五大国会議
旧魔獣の森
しおりを挟む「ドナ、ドナ、ドナ、ドナ、私を乗せて、ドナ、ドナ、ドナ、ドナ、荷馬車が揺れる」
「何ですか……その暗い歌は」
教皇専用の豪華な馬車の中、向かいの座席に座るファントが突っ込む。
「ふっ、私はドナドナの気分なのさ」
「意味がわかりません」
ティアムが冷たく突き放す。
私のこの悲しい気分。
……何と、ウチの教皇近衛騎士達は今日はお休みの日でした。
ありぇねぇー!
公務だよ!
公務!
何のために、エリカさんに夜遅くまで拘束されたのか。
しかし、あれだな。
ドナドナの暗さは万国……世界? 共通なんだね。
「私のモフモフプランが……」
「しかしミサキ様、昨日のエリカとの打ち合わせは何でしたか?」
「私も、気になります」
ファントとティアムが尋ねてくる。
あの後、ティアムが全然助けに来なかったんだよね……。
まあ、良いけど。
「エリカさんがね、五大国会議までにエフィル神国の住宅や石畳の道路を孤児院のように私達の世界のような近代的な形にしないかって」
しかも、手際の良いことに孤児院の建て直し前から住人に周知させている為に私の返事待ちだったらしい。
まあ、エリカさんとレティシア様は、私の実験住宅にちょくちょく遊びに来てたからね。
んでもって、エフィル神国の城も私がポロっと溢した高層タワーにしろとレティシア様の命令もあったなぁ。
この世界は、身長が高い人が多いから必然的に天井とかが高くなるんだよね。
四階建ての城ですら、10階建ての高層マンション程の高さだよ。
━━━すべての家を小さく作ってやろうか……。
「ミサキ様、不細工な顔をしておりますよ」
「ヒドッ!」
私のニヤケ顔を不細工で一刀両断だよ。
最近、ティアムが冷たい。
前は、甘やかしてくれたのに。
「甘やかして無いですよ」
ですよね。 甘やかされた覚えが無いです。
「して、ミサキ様。
エリカの構想通りに住宅等を造り直すのですか?」
「うん、台風が来る前にやっとけば安心じゃない」
毎年、台風で1000人近くの負傷者及び死亡者が出ているらしい。
主に、住宅崩壊や土砂災害で。
水害は、エリカさんの下水システムが上手く機能して近年被害は無いそうだ。
「明日から……ハードだな」
絶対、モフモフ出来ないじゃん!
そんなことを考えていると馬車が停車する。
ファント、ティアムと共に馬車を降りると光の壁に囲まれた森が広がっていた。
うん。
森も気になるよ。
気になるけど。
「どうやってこの馬車は走ってたんだ……」
馬車の客車はあるが馬が居ない。
さっきまでカッポカッポ歩いてる音がしたのに。
「私の幻影魔法ですよ。 ミサキ様」
ファントがそう言う。
幻影魔法は、実体を持つ影を呼び寄せるモノであり、ファントはその魔法を駆使する戦闘を得意としているらしい。
ティアムの得意な魔法を聞こうとしたが、ファントに止められた。
中々に見た目も効果もエグい魔法らしい。
いや、知りたいけど。
「仕方ありませんね」
ティアムが渋々教えてくれた。
「私は、血系魔法です」
ん? 特殊魔法?
「いえ、名の通り血を操作して扱う魔法ですよ」
「へぇ、言うほどエグいものじゃなかったよ」
「ええ、聞く限りはですが」
見せて?
「それは、ファントを殺せと?
ミサキ様の命令であればやぶさかではありませんが」
「ストップ! いや、やらなくていいよ!」
「ありがとうございます……ミサキ様」
ファントの顔色が真っ青になっていた。
まさかの旦那を殺そうとしたよ……。
「それにしても……どうやって入るの?」
「……ミサキ様が光の壁に触れたら道が開くのでは無いでしょうか」
ええー、そんな都合の言い話があるかなぁ。
━━━ありました。
私が光の壁に触れると五名ほどが通れるサイズの入口が出来た。
そして、中に入ると入口は閉じた。
「なんか、至って普通の森だね」
青々とした木々。
空気は澄んでる━━━嘘、街と対して変わらないけど。
「「いやいや、普通では無いですよ!!」」
ファントとティアムが口を揃えて言いきる。
一体、何が普通では無いのだろうか?
確かに、光の壁に囲まれてる時点で普通では無いけどその程度でしょ?
あれだよ。
どっかの森林保護団体が森を護るためなんかやったんだよ。
うん、きっとそう。
「いえ、ミサキ様。 ここは、間違いなく聖域です……」
ファントが真剣な声で教えてくれる。
「聖域?」
「およそ、800年前に消失した女神エフィルの神獣と呼ばれる使徒の居住地の事です」
神獣……。
「何で消失したの?」
「聖域に存在する全てに対しての乱獲です。
聖域の水は傷を癒し、木材は魔を退け、その土は豊穣を与え、生物の肉は病を払うと言う特別な力があったのです」
あー、よく聞く話だ。
どこの世界でも同じなんだね。
「だから、壁がある?」
「そうだと推測します。
〈まあ、ミサキ様が作られたミサキ水の効果でミサキ聖水が流れる今のエフィル神国に聖域の力を欲する方は居ないと思いますが……。
飲めば、病も傷も直し、大地に撒けば豊穣までもたらす。
魔獣の森は、無いため魔物の襲来の心配もありませんし〉」
ティアムは、ミサキの偉業を考え少しだけ口元が綻んだ。
ファントも同様だ。
「〈ある意味、ここよりもエフィル神国の方が聖域ではないだろうか……〉」
………………気持ち悪い。
なに二人ともニヤニヤしだしてるんだよぉ。
「ミサキ様、先へ参りましょう」
私の心の声が届いたのか、二人の表情は元に戻った。
「う、うん」
私は、森の中心部に向かって歩く。
いや、本当に普通の森。
一つだけ、気になる点は何も居ない。
動物の気配はおろか、虫すらも居ない。
生命を感じないのだ。
「ねぇ、ティアム。 聖域って生物は居ないの?」
「いえ、過去の聖域には様々な生物が存在をしておりましたが」
ふむ。 やっぱり、あの壁のせい?
何も寄り付かないようにしてる?
「ミサキ様、そろそろ休憩と致しますか?」
「そうだね」
ファントがおもむろにテーブルと椅子を用意する。
更に、ティーセット一式も。
何処から出してんだ……。
鞄も何も無いところから取り出している。
「幻影魔法の一つですよ」
ファントが教えてくれた。
簡単にいえば、仮想空間を作ってそこに荷物を入れとくらしい。
更に、仮想空間に時間の概念がないため熱いものは熱い、冷たいものも冷たい状態で持ち歩き出来るって。
━━━一言で言うとスゴい便利。
一家に一人ファントが欲しいって感じだよ。
「ありがとうございます」
ファントが華麗な礼をする。
「ん。 ふぅ、紅茶が旨い」
いやはや、紅茶ってあんまり飲んだことなかったけどこんなに美味しいんだね。
葉っぱによって薫りも味も全く違う。
「ありがとうございます。
しかし、ミサキ様はホームシック等は無いのですか?」
「ホームシック?」
「ええ、あの能天気なエリカですらホームシックで毎日泣いていたと言うのに」
能天気って。
そう言えば、無いな。
「元々、家族ともそんなに会えなかったし……。
ご飯もあんまり食べれなかったから、今の方が快適だね。
後は、親の期待に答える必要が無いからかな」
あっちで生きていたときは、小さい頃からミサキは医者になるって毎日言われて、そうならなきゃいけないって思ってたから期待に答えないといけないって毎日必死だった。
━━━あれ?
今更だけど私は何で死んだんだろ……思い当たる点がない。
覚えてるのは、バイトに向かう途中で『お腹空いたなぁ……今日の賄いなんだろう』って言う食い意地のはった恥ずかしい記憶で終わってる。
「まあ、いっか」
「「いいんですか…………」」
ファントとティアムが溜め息交じりに言う。
「うん」
前の記憶があるだけでこの世界の住人だしね。
まあ、食に関する知識は助かった。
昨日、今日の為に作ったチーズケーキを頬張る。
まあ、マッシュローさんとエロスティーナちゃんにあげようと思ってたのに。
モフモフの交換条件として。
ちなみに、ファントとティアムは食事不要らしい。 空気中の何かを栄養として取ってるんだって。
私の勘では光合成だろうと睨んでる。
そんなことを思いながら、紅茶を嗜んでいると後ろから生暖かい空気を感じる。
…………この、定期的な空気の排出は、まるで呼吸のような。
━━━確定みたい。 ファントとティアムが私の背後を見つめてる。
唖然と言う言葉が似合う表情で。
ゆっくりと後ろを振り向くと。
「と、と、と、と、とととととととトカゲェェエエエエ!!!」
振り返ると超至近距離に巨大なトカゲがいた。
本当に数十センチの距離に顔があったのだ……何メートルものデカさのトカゲの顔が。
「ハハ…………」
「キェェェエエエエエ!!!」
その瞬間、トカゲは光となって消えた。
私は、すぐにティアムに抱きついた。
動物、昆虫、Gですらなんの躊躇もなく触れる私だがトカゲだけはダメなんだ。
トカゲだけは!!
§§§§§§§§§§§§
━side━ ティアム
ミサキ様の話を聞いた私は言い知れぬ気持ちになりました。
恐らく、ファントも一緒でしょう。
エリカが言うには、ミサキ様にとってこの世界の生活は不便極まりないから、心のケアを頼むと言われたのですが、当の本人は今の方が快適と言ったのです。
二人ともミサキ様の表情から本当なんだろうと汲みとりました。
それは、それでいいです。
それよりも何よりも……。
ミサキ様の背後に光の粒が集まって巨大なドラゴンが現れたのです。
ファントと私はそのドラゴンに見覚えと言うか感覚的に知っています。
━━━
━名称━
神龍
━概要━
ミサキの力によって生み出された聖域で生まれた守護者。
その力は、ミサキについで世界二位である。
ミサキを聖母として慕っている。
神獣の上位種。
生後17日。
━━━
神龍様です。
神にもっとも近い力と神位を持っており、かつて、その珍しさから獲物として刈られていた妖精族に力と叡知を与え救ったのが神龍様。
その為、妖精族の信仰対象は女神エフィル様よりも、恩義のある神龍様に対しての方が強いのです。
そんな、崇高な存在が目の前にいるのです。
ファントと私は、緊張で声もでない。
そんな中、静寂を打ち破ったのはミサキ様でした。
ゆっくりと後ろを振り向くと「と、と、と、と、とととととととトカゲェェエエエエ!!!」と動揺しだしたのです。
まあ、巨大なトカゲと言われればそうだなっと思いますが……神龍様をトカゲ扱い。
流石、ミサキ様。
すると、神龍様が口を開いたのです。
「母……」
その刹那でした。
「キェェェエエエエエ!!!」
と言う、奇声がミサキ様から発せられたと同時にミサキ様の左手の甲が神龍様を襲ったのです。
所謂、裏拳ですね。
次の瞬間、神龍様の顔が消し飛び昇華してしまいました。
そして、ミサキ様は私に飛び付き恐怖に怯え号泣です。
正直、私はミサキ様に恐怖を覚えてます。
━━━神龍様を一撃って……。
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