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五大国会議
聖域の新守護者
しおりを挟むトカゲの出現から暫く、精神的に落ち着いてきた私はファントとティアムから話を聞いた。
あのトカゲは神龍と言うファント達妖精族の信仰の対象だったらしい。
ファント達に怒ってないか? と尋ねたところ。
「私達が信仰してるのは先代の神龍様ですしね。
正直、今代がどうなろうと構いませんが」
ファントが表情一つ変えずにそう言いきる。
「そうですね。
驚きはしましたが、今代に恩は無いですからね」
ティアムも同じように表情一つ変えずに言いきる。
うん。
だろうとは思ってた。
二人ともそー言うところが非常にドライなんだよね。
「「妖精族はこんなものですよ」」
私の中での妖精は、小さい羽をパタパタさせて可愛いらしいイメージなんだけどな。
現実は、非常にドライでした。
「神龍様に救ってもらう前はそんな姿でしたね」
「ああ、そうだったな」
ファントとティアムが昔を懐かしむように頷きあう。
「小さく可愛いかったと? 二人が?
えっ、何? 笑えばいいの?」
私の頭はショート寸前ですよ。
「いえ、事実ですよ。 ミサキ様」
あれだよね、幼少時代は誰でも可愛いと言ってくれたのを未だに信じてるんだよね?
そう言うことにしといてやろう。 うん。
「しかし、神龍様を滅した途端に生命を感じるようになりましたね」
ティアムが話を切る。
「壁が無くなったのかな?」
皆も、トカゲが嫌いなんだね。
はっ!! あれだ。
トカゲが出ないように光の壁に囲まれていたんだね!
流石は、森林保護団体の皆さんだ。
「………………さて、これからどうしますか?」
ティアムが呆れたような表情で尋ねてくる。
やることないよね。
帰ろうかな。
「帰ろう」
『ミサキ!! 待ちなさい!』
この聞き覚えのある声はエフィルだ。
光が人の姿を形成して行く、女性の形をした光が両腕を組んで私を見ていた。
「あっ、エフィル、久しぶりー。 元気だった?」
『うん、元気だよ。 じゃなくて!』
おお、ノリツッコミ。
『ちょっと、ミサキ。 神龍を滅したわね?』
「うん。 トカゲは無理」
本当に嫌いだもん。
『トカゲって……翼が生えてたでしょ?』
「は? 翼が有ろうが無かろうがトカゲはトカゲでしょうが、マジで何言ってるの」
━━━引くわぁ。
『あっ、そう……』
うん、エフィルも納得したようで。
「で、何しに来たの?」
『あー、神龍の魂が「母上に殺られた」と泣きついてきてね』
「母上?」
『あんたのことよ』
「「ミサキ様のことです」」
エフィルとファントとティアムが口を揃えてそう言う。
「私、子供生んでないし」
コイツらは何を言っているんだ。
私がトカゲの母のわけないし、そんなの無理。
トカゲは無理。
『あんたが、魔獣の森を浄化した時に生まれたのよ。
聖域の守護者として』
「何故、トカゲ」
そう、納得がいかん。
私が生み出したのであればトカゲ何てことはあり得ない。
あるとすれば、モフモフだ。
『トカゲじゃなくて、神龍はドラゴンね。
この森の守護者になった理由は、私の使徒の中で最強だからじゃないかしら
〈本当は、ミサキが規格外だからよ……。
私でも、簡単に神龍を生み出すほどの力は無いわよ〉』
「へぇ…………」
『絶対に納得してないわね?』
「うん」
『神龍を復活させようと思ったけどその様子じゃ無理そうね……。
じゃあ、生まれたばかりの神龍の魂を輪廻に持っていくのは偲ばれるから新たな器を作りましょうか?』
新たな器?
「身体ってこと?」
『そうよ。 見た目が変われば良いのよね?』
まあ、見た目がトカゲじゃなければ平気だね。
「それなら、Gでも大丈夫」
『それは却下。
あくまでも、使徒なんだから。
ある程度のリクエストは受けるわよ』
じゃあ、何にしようかな。
「アルパカ、ゾウ、ダチョウ、猿、羊、アリクイ、バク……この中のどれにしようかな」
『何、その偏ったラインナップは…………』
エフィルが、呆れた顔でこちらを見ている。
好きな動物を並べただけなんだけどな。
「決めた。 鯨で」
『ラインナップに無かったよね?! それに、鯨ってアースの世界の動物? 哺乳類でしょうが』
「「アース??」」
ファントとティアムが、首を傾げる。
「アースは、私が前住んでた世界の神様。
私の師匠? になるらしいよ」
「「はぁ……」」
『ミサキ、それは秘密よ。
神候補生なんて軽々しく口にしちゃいけないのよ』
エフィルがそう言うが、ファントとティアムはがっつり聞いてるからね。
しかも、エフィルが言うことによって信憑性もスゴいから!
『取り敢えず、鯨は却下。
あれって、水の中の生物でしょ、陸では生きられないわ』
いや、方法はある。
「私が、常時水魔法で空中水槽を作ればいけるんじゃ?」
『可能といえば可能だけど、現実的じゃないわね』
「じゃあ、どうすればいいのよ!」
鯨を飼いたかったのに!
『ん? 私がおかしいのかな? そこ、怒るポイントかしら……』
女神エフィルの困った声が拡がる。
「「いえ、エフィル様はおかしくありません」」
ファントとティアムまでもが、エフィルの味方に。
「なっ!?」
『だよね? あまりの圧に一瞬、私が悪いのかと思ったよ』
「ねぇ、エフィル。 神龍の身体って何でもいいの?」
ふふふ、ナイスアイディアが浮かびましたよ!
『まあ、神獣や神龍はあくまでも魂が重要であって肉体はただの器に過ぎないからね。
でもあれよ、建物とかそんな非常識なのはダメよ?』
「じゃあさ……」
私は、エフィルに耳打ちする。
『…………可能だけど、いいの本当に』
出来るのか!
いいさ、いいに決まってる!
『じゃあ早速』
エフィルの目の前に金色の光が集まる。
それは一つの形を形成していき実体を作り出した。
『魂の定着は完了っと。 言語機能はつけたからね。
私は帰るよ。
━━━なんか、疲れた』
そう言ってエフィルは消えていった。
『母上ぇぇえ!!』
私は、甲高い声の新神龍と抱き合う。
と言うよりも一方的に抱き締める。
「ほぉぉおうう! クマちゃん!」
『母上達……なんか大きくないですか? 全体的に』
そう言って口ごもる新神龍の姿は、モフモフしたクマのぬいぐるみであった。
「ぬふふふふ」
この子は私が宝物にしていたクマのぬいぐるみをイメージしたのだ。
エフィルに「あっちで大事にしてたクマのぬいぐるみとかにできる?」って聞いたら、出来るって言うもんだからさ。
「「………………」」
ファントとティアムは、ウチのクマちゃんの可愛さに絶句しているようだね。
わかる、わかる。
更に動いて、喋るんだよ…………。
━━━ちょっと、気持ち悪いな。
「まあ、いいわ。 名前何にしようかなぁ……」
神龍と言うのを残してあげよう。
「名前は、くーちゃんだ!」
ごめん。 思い付かなかったからクマのくーちゃんで。
名前をつけるとくーちゃんが、淡い光に包まれる。
『…………オウ、何この姿』
くーちゃんが四つん這いで涙してる。
スゴい……ぬいぐるみなのに泣けるんだ。
「よし、帰るか」
私は、くーちゃんを持ち上げ堂々とエフィル神国へと凱旋したのであった。
§§§§§§§
━side━ ファント
ミサキ様が一頻り泣いた後、神龍様について説明した。
理解した上で私達が怒っていないのかと尋ねてきたのだ。
━━━何と心の広い御方なのだろう。
恐怖体験をしたと言うのに私達にまで気を回してくださる。
隣でティアムも感動している。
私は、先代の神龍様を崇めている事をミサキ様に報告したところ、やけに素直に受け止めてくれた。
すると、女神エフィル様が具現化した。
お話では、ミサキ様に殺された? 消滅させられた? 神龍様の魂が女神エフィル様に泣きついたと言うこと。
そして、魂の器として提示されたミサキ様の動物達は、何と言うか穿っていた。
そして、苦渋の末に導きだしたのは鯨であった。
その飼い方も斬新。
水魔法で常時空中に水槽を作り出すと言う……ミサキ様になら可能で有ろう。
しかし、移動はどうなさるのであろう……部屋には入れられませんよ。
そんなことを考えていると、女神エフィル様から却下されたのです。
このときばかりは、女神エフィル様に祈りを捧げました。
普段は、神龍様なので。
少し、女神エフィル様に睨まれた気がしますが……。
すると、「じゃあ、どうすればいいのよ!」と言うミサキ様のおかしな怒り。
流石の女神エフィル様でも、自分がおかしいのかな? と、お思いになったそうですが私とティアムで「「いえ、エフィル様はおかしくありません」」とフォローさせて頂きました。
━━━家に鯨は要りません。
ミサキ様は、思い付いたかのように女神エフィル様と密談し始めました。
女神エフィル様が、明らかに困惑しながらも新しい身体を作り出しました。
可愛らしいクマのぬいぐるみです。
もう一度言いましょう。
可愛らしいクマのぬいぐるみです。
魂の定着が終わり、来たときよりもゲッソリとした女神エフィル様が逃げるように帰って行きました。
正直、私もどうすれば良いのか。
ミサキ様と神龍様の魂が入ったクマのぬいぐるみとが抱き合ってるのですよ。
すると、ミサキ様は唐突に名前をつけ始めました。
その名も『くーちゃん』……神龍様の要素を組み込むと考えてたはずですが、どうやら無理だったみたいです。
ミサキ様が名前をつけた瞬間、『くーちゃん』様の身体が光に包まれたのです。
私が鑑定すると。
━━━
━名称━
神ぐるみ
〈くーちゃん〉
━概要━
ミサキの思い出のぬいぐるみの模造品。
ミサキと女神エフィルの共同作。
戦闘力皆無。
自己再生機能付きにより不死。
防腐、防菌、防汚。
名付けにより神龍の魂が永遠に定着。
━━━
━━━見なければ良かった。
神龍様は、永遠に『くーちゃん』のままなのです。
そして、ミサキ様の名付けにより自身の存在を知り『くーちゃん』は、号泣しております。
絶対に嬉しくてではなく悲しみでしょう。
……しかし一体、涙は何処から?
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