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五大国会議
潜入フェビカ王国①
しおりを挟むフェビカ王国に到着して約2時間、私とケンは王都の入口で入国の手続きを待っていた。
「長い……」
「仕方ないさ、入国審査は厳しいらしいからな」
ケンは、人族至上主義を抱えるフェビカ王国では偽装の腕輪と呼ばれるアイテムを使用して人間の姿になっている。
まあ、猫耳じゃなくなっただけなんだけど。
「ねぇ、中に入ったらどうするの?」
ぶっちゃけ、私は直前までごね続けてたから、今回は何をするのか全く聞いてない。
何でって五十嵐玲香が居るのに『相沢美咲』の姿なんだよ?
万が一見られたら。
━━━面倒なのは間違いない。
まあ、最終的には五十嵐玲香は、表舞台に出たことがないと言うことをファントとティアムが説得を受けて折れたのだ。
「でもさぁ……これは?」
私の手元にあるのは、フェビカ王国新聞。
その見出しは、
『聖女レイカ様、王国孤児院へ表敬訪問』
『魔獣の森がフェビカ王国の側に発生するも、国王様と聖女レイカ様により三人の勇者様を召喚!』
『魔王様、帰還の噂』
『決定、フェビカ王国の激ウマ料理』
「フェビカ王国の激ウマ料理よ!! 最高じゃない?
絶対に行きましょうね!」
「おお、そっちなんだ……」
ケンが不思議そうな表情を浮かべる。
あれね、五十嵐玲香の孤児院への表敬訪問。
━━━絶対にない。
だって、あの人。
子供が大嫌いだもの。
学園のイベントで小学1年生に高校1年生が勉強を教えるって言うのがあったんだけど……。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
子供嫌い過ぎて「コレが出来なきゃ、あなたは終わり」って、小学1年生達を徐々に追い詰めていったらしいよ。
後々、父母からクレームがあったらしいんだけど父親の力で黙らしたらしい。
その父母の中にいる知り合いから聞いた話だから間違いないと思うわ。
だからこそ、表舞台に現れていないと言う核心が持てたのよ。
「ケンちゃん、面白いこと言って、若しくはして」
「はぁ? 何、言ってんだ。
新聞でも、読んでろよ」
はぁ、つまんなぁーい。
だって、勇者の情報なんて『三人現れました』『王様に永遠の誓いを立て聖剣を賜った』『魔獣の森の討伐出発』
「………………」
魔獣の森に出発?
うそ、王都に居ない?
まあ、激ウマ料理優先だな。
「どうした? 急に静かになったな」
「イヤ、ナンデモナイデスヨ」
「?」
ケンには、黙っておこう。
バレたら魔獣の森にすぐさま行こうって言い始めるだろうからね。
さっさと、終わらして帰ろうってのが見え見えだから。
━━━ママンに会いたくて仕方がないんだろうな、マザコンだから。
「おい……いい加減にマザコン扱いを止めろ」
「なっ!?」
「声に出てたからな」
魔獣の森に行こうって言わないって事は……うん、良かった。
「食事を終えたら、魔獣の森な」
「エェ? ナンノコトデスカ?」
取り敢えず、誤魔化すことを努力しよ。
「あのな、新聞買ったのは俺だぞ」
………………
「デシタネ!!」
新聞を買って私にくれたのはケンでした。
いやぁ、激ウマ料理を食べることしか考えてなくてねぇ。
そうこうしていると、私とケンの入国審査の番が来た。
全身フルプレートの門番が尋ねる。
『二人の関係は?』
「兄妹です」
『フェビカ王国への訪問の理由は?』
「聖女様を一目見たくて」
『犯罪を調べる……この水晶に触れてくれ』
全てケンが受け答える。
水晶に触れると二人とも青い光が放出される……それを紙に書き留める門番。
『よし、犯罪歴なし。 この紙を持っておくように。
コレが入国許可証となる。
宿屋や公共施設など使用するのに必要となるからな……無くした場合はここに来れば再発行するぞ。
時間は掛かるがな』
私とケンは、入国審査をパスしフェビカ王国の王都へと足を踏み入れた。
━━━そして、5分足らずに王都の外へと出たのであった。
「何、ここ」
「…………やべぇ、俺は無理だわ」
ケンの顔が真っ青になっている。
いや、私に関しては…………入ってすぐに吐いた。
なんと言うか……むっちゃ臭かった。
糞尿の臭い、キツい香水、体臭が入り交じった強烈な悪臭。
如何にエフィル神国がエリカさんの恩恵を受けてた事を知ったよ。
「ふぅ……落ち着いた」
「ねぇ、ケンちゃん他の国もおなじなの?」
「いや、フェビカ王国だけだろうな…………母ちゃんの部下が他の4か国に渡った時にフェビカ王国だけ拒絶されたらしいよ。
担当者が、ドワーフだったから」
「人族至上主義だね」
しかしながら、ケンよ。
私も、多分断るかも。
まともな、ドワーフに会ったことないから。
私達は、町を出て少し離れたところで鞄からあるものを取り出す。
『ふぅ、母上。 鞄の中も悪くはないですな』
そう、くーちゃんです!
このくーちゃんは、戦闘力皆無ですが魔獣の森の探知が可能と言うセンサーを搭載してるのです。
「よし、くーちゃん。
魔獣の森ってここからどれくらい?」
『北に200キロと言ったところです。
ソコには、エフィル様とアース様の力の波動が3つ感じます』
「結構あるな……」
ケンが呟く。
『ふふふふ、ケンちゃん。
ここは、我の真の力を見せる時のようだな』
くーちゃんの身体がモコモコと膨れていく。
徐々にサイズが大きくなり三メートル程になったところで止まった。
うん。
━━━ただのデカイぬいぐるみ。
「ひゃっふぅー!!」
私は、くーちゃんに全力ダイブでしがみつく。
「くーちゃん、超フカフカモコモコ」
悪臭で荒んだ心が洗われるようだ。
『ふふふ、母上よ!
まだまだ此処からですぞ。
ここまでは、保育園のお昼寝バージョンです』
「なっ!?」
保育園のお昼寝タイムはこんなフカフカモコモコと寝ていたのか……。
「くーちゃんよ! 私の就寝時にも頼む!」
熟睡出来そうだわぁ。
はしゃぐ私とくーちゃんを横目にケンは呆れた顔をしていた。
「何、ケンちゃん。 不服か」
「いや、くーが大きくなったところでぬいぐるみだろ?
背中に乗れるわけでもなしに」
「ほう、貴様、私がくーちゃんを抱いて寝るのが羨ましいんだろ?」
「何処から、その発想が生まれるんだよ」
頭に手を当て少し左右に揺らしながらケンが吐き捨てる。
……なるほどな。
「このマザコンめ!!」
「……今の会話の何処にそんな要素が」
「あれでしょ、俺のママンのカイデーパイオツの方が柔らかいと言いたいのよね?」
全く、いつもママンに持っていこうとしちゃって。
「違うわ! ミーちゃん、くーの背中に乗ってみろよ」
私は、くーちゃんの背中に乗ってみる。
私の身体が沈みこむようにくーちゃんの中に入り込んでいく。
確かに、乗り物としては使えない。
「あー、なるほどね」
『その点は、問題ないですよ。 母上。
こうすれば』
くーちゃんの背中から金色の翼が生える。
そして、背中部分は硬い鱗のように硬化した。
『さあ、背中に』
私とケンは、くーちゃんの背中に跨がる。
すると、翼がパタパタと動き始める。
━━━まさか、これは!
ウチのぬいぐるみが空を翔ぶのか!
『行きます……』
「くーちゃん、発進!」
『うぉぉおおおお!』
翼が高速に動き目視出来ないほどの動きをした瞬間、くーちゃんは全力ダッシュを始めた。
足音は、ピョコピョコと言う私が掛けた効果音魔法なのだが、その速度は車を遥かに越えていた。
「「うぉぉおおお!! 走るのかよぉぉ」」
フェビカ王国の外では、少年と少女の声がこだましていた。
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