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第1話 高校1年生のハルキの場合

第1話 1

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 いつの間にか眠っていたらしい。ここがどこだか知らないが、不意に恥ずかしくなってしまって、僕は誰かに向かってこうべを垂れた。頭を垂れるって、今日習った言葉だ。高等学校校第一学年の教科書に載せるやつではないと思う言葉がてんこ盛りの、120年くらい前に書かれた児童文学集の一編だった。

 とにかく、早く目を開けようとして足掻いたが、ずっと眠りの底に沈んでいた僕にとって目を開けることは慣れなかった。しばらく手こずっているとやっとあたりが見渡せたが、それでも僕はまだ自分が眠っていると勘違いしていた。
(まだ夢だ)真っ白な空間は、さっきの夢にも出てきていたのだ。

「夢じゃありませんよ」

 突然、女神様の声が聞こえた。本能に訴えかけるような落ち着いた声は、神々の誰かでないと決して使えない声だ。

 僕は目を擦り、近くに立つ女神様を見た。少し体ごと透けているのは、彼女が人間ではないことを示している証だ。

「やっぱり、ここは異世界ですか?」

「察しが早いね。ハルキくん」

「え?」

「高校1年生の田ハルキくん。M市の公立小・中学校にかよった後、高校受験に4校連続で落ちて——」

「やめろ! 僕の歴史まで暴露しないでください」

「お、黒だけに?」

「うま……くないからッ! とーにかく、僕はもう直ぐ異世界に飛ばされるわけですね?」

「うん。だいたいそこは日本の小説と一緒よ。日本人のラノベ作家って、想像力が豊かなのねえ」

 僕は目の前に座る女神がラノベとか日本とか話すことに少しの違和感を覚えたが、まあそれはそういうものなのだろう、と意味不明な理屈をこねくり回して切り抜けた。

「はい、そこは日本人が誇れるところです。語彙もあって、」

「うん、そういう胡散臭いのはいいの」

「さいですか」僕は再び頭を垂れた。

「あと、もう『直ぐ』ではありません」女神様は続けた。

「え?」

「何、その口がぽっかり空いたマンホール型の穴みたいになってるの。四五日しごにち待ってくれないとねぇ」女神様にしては珍しく(僕の偏見だろうか)言葉を濁した。

「その点をもう少し?」僕は新聞記者みたいなことを呟いた。

「うん、なんでも勇者召喚は向こうの暦で843レテぶりだから、召喚士がうまく行くかどうかわからないのです。それに、加護魔法のビンがもう少しで出来上がるんですけれど、調合の仕方がわからなくて手こずっちゃって。
 今やっとできたんですけれど、こんどこれを輸送するのにもう三日くらいかかって、召喚士が召喚可能を感じ取るまであと一日くらいしかないわけです」

「なるほど……?」

「わかったようなわからないような、という顔ですね」

「恥ずかしながら」

「まあ、生活してけばわかるでしょう」

 女神様は楽観的だった。僕の手を引っ張り、連行しながら、「詳しい話はまた後で」とつぶやいた。
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