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タイムプラス同好会④ 忘れたい、忘れたくない /怜
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10年くらい前だろうか。お祭りに行ったことがある。そのとき、宏子先輩と知り合った。先輩は関西なまりの俺のことを拒絶しなかった。
そのときはまだ上京しておらず、すごい混雑に半ば押し倒されるようにしながら、東京というのはこんなものなのかと軽くどこかで絶望していた。
夜も深くなってきたころ、六人ほどの行列にならんでやっと塩焼きそばを手に入れた。遠くに石段を見つけ、駆けよった。意味はなかった。
――ただ、それが運の尽きだったんだな、とは、思う。
その時、俺は”遭難してしまった”ことになったのだ。
神隠し、って知っているだろうか。
あの石段は、”存在しない”はずの場所だったのだ。
警察に諭され、あの場所は「なかった」ことになった。
精神科に行ったら、異常なしの結論をあーだこーだ延々と十分にわたって述べ立てられた。医者というのはすべて饒舌なのだろうかと疑念を持った。
テレビ番組が来て、――ああ、それだけは俺の発見に肯定的だったっけかな――面白がりながら一連の事件とやらを報道した。迷惑を被っているのはこちらなので、事故として報道してほしいわ、とカメラを前に赤裸々に語った。
それがいけなかったのか、二日くらいにわたり報道されたにも関わらず街の人の話題に上ったのはわずか一時間弱、そうだな夕食のとき家族団らんの場でする会話、その程度だった。
ああ、何度でも言おう。
やつらは、俺が見えたことすべてを否定した。
でも、俺には見えてしまったのや。
それは、誰にも否定できへん事実と違うのだろうか。
――あ、またなまってしまった。
せっかく直そうと思ったのに。
タイムプラスというコンビニを初めて見つけたときは、涙がにじんだ。
高校生ではあるが、迷子のお知らせをしてほしいくらい未知の場所に足を踏み入れていて、そこに、コンビニという安全な場所を見つけたから。
クマに追われているとき、安全なシェルターを発見したかのような気分だ。それは山奥と都会が溶けあっているけれど、ご近所に知らないコンビニというのもなんだかそれに近い気がする。
タイムプラスというコンビニの同好会を今度やるらしいぞ。
それは、朝のHRで風の噂のように流れてきた。
聞いたとき、やる、と即決した。
午後八時をまわって、急に味気のなくなった通り。
パタパタ、と俺の靴音だけが道に響いた。
そのときはまだ上京しておらず、すごい混雑に半ば押し倒されるようにしながら、東京というのはこんなものなのかと軽くどこかで絶望していた。
夜も深くなってきたころ、六人ほどの行列にならんでやっと塩焼きそばを手に入れた。遠くに石段を見つけ、駆けよった。意味はなかった。
――ただ、それが運の尽きだったんだな、とは、思う。
その時、俺は”遭難してしまった”ことになったのだ。
神隠し、って知っているだろうか。
あの石段は、”存在しない”はずの場所だったのだ。
警察に諭され、あの場所は「なかった」ことになった。
精神科に行ったら、異常なしの結論をあーだこーだ延々と十分にわたって述べ立てられた。医者というのはすべて饒舌なのだろうかと疑念を持った。
テレビ番組が来て、――ああ、それだけは俺の発見に肯定的だったっけかな――面白がりながら一連の事件とやらを報道した。迷惑を被っているのはこちらなので、事故として報道してほしいわ、とカメラを前に赤裸々に語った。
それがいけなかったのか、二日くらいにわたり報道されたにも関わらず街の人の話題に上ったのはわずか一時間弱、そうだな夕食のとき家族団らんの場でする会話、その程度だった。
ああ、何度でも言おう。
やつらは、俺が見えたことすべてを否定した。
でも、俺には見えてしまったのや。
それは、誰にも否定できへん事実と違うのだろうか。
――あ、またなまってしまった。
せっかく直そうと思ったのに。
タイムプラスというコンビニを初めて見つけたときは、涙がにじんだ。
高校生ではあるが、迷子のお知らせをしてほしいくらい未知の場所に足を踏み入れていて、そこに、コンビニという安全な場所を見つけたから。
クマに追われているとき、安全なシェルターを発見したかのような気分だ。それは山奥と都会が溶けあっているけれど、ご近所に知らないコンビニというのもなんだかそれに近い気がする。
タイムプラスというコンビニの同好会を今度やるらしいぞ。
それは、朝のHRで風の噂のように流れてきた。
聞いたとき、やる、と即決した。
午後八時をまわって、急に味気のなくなった通り。
パタパタ、と俺の靴音だけが道に響いた。
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