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26帰宅と妬ける
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「では、今日の修行はこれまで致しましょう。他の属性を学んだ後に、再び修行を設けます。それまで、しっかりと復習しておくように」
スイセンが毅然と告げれば、コハクはゆっくりと頷いた。
次の瞬間。コハクの体がふらり揺れて、前に向かってゆっくりと倒れ込んだ。
その様子にスイセンは慌てることなく、側へと近づいてコハクの体を支えた。
精も根も尽き果てたコハクは、目を閉じて眠っていた。
「おつかれさまでした。よく頑張りましたね」
スイセンは優しい声で、コハクを労った。
シロガネはコハクの帰りを待つ為に玄関に赴いた。
スイセンから念話にて、知らせが届いたからだ。
玄関に着けば、扉が開いた。
「遅くなりまして、申し訳ありません」
コハクを抱き抱えたまま、スイセンがシロガネに頭を垂れた。
「仕方があるまい」
シロガネの言葉を受けてスイセンは頭を上げた。そしてシロガネへ、コハクをそっと引き渡した。
「少々、熱が入ってしまい、無理をさせてしまいました。申し訳ございません。怪我などはしておりません」
「わかった」
「明日の修行はどうされますか? 休まれるならば、わたくしから連絡しておきますが」
「いや、本人に確認する。せっかくのやる気を損なうのもな」
「わかりました。出過ぎた真似を致しました」
「気にするな。お前の気遣いには、いつも助けられている」
「有り難きお言葉、痛み入ります」
「スイセン」
「はい」
少し低い声にて、シロガネが名を呼んだ。それに対してスイセンは緊張する。
「お前を式神にしたのは、私が望んだからだ。間違えるな」
スイセンは素早く跪いた。
「皇よ……、有り難き幸せ」
ありありと崇高な眼差しでシロガネを見つめた。
そのままスイセンは、シロガネの前から消えた。
シロガネは、基本的に全てを言わずにとも察して動けば良いと、簡単な命を下すのみで、後は式神たち丸投げである。
今までならば、はっきりと言葉にしなかった。分かれば良し、分からなくても良い。
去るもの追わずな、そういう姿勢で式神たちと接していた。
だけど、今のシロガネはコハクと出会って思いを言葉にする意味を知ったのだ。
シロガネは、腕の中で眠るコハクを眺めて頬を緩める。
「おつかれコハク」
とても美味しそうな匂いがする。
なんだろう……。
お腹がペコペコなんだ。だって、いっぱい練習したんだ。
あれ、何を? 誰と?
グゥーっとお腹が鳴る音で、コハクは目を覚ました。
パチリと開いた瞳をパタパタと何度も瞬きをする。顔を動かしてキョロキョロする。
天井を見つめて、居間だと気がつく。
コハクは居間で掛け布団を掛けて寝ていたのだ。そして、バッっと起き上がった。
布団を片付けて、急いで、いい匂いのする台所に向かった。
その足音に、シロガネは気がついてフッと笑った。
シロガネの姿を見つけるなりコハクは駆けよった。
「シロガネ! お腹空いた!」
「おや、コハク。起き抜け一番が、それかい?」
「えっと、おはよう?」
「お疲れさま」
「うん、疲れたよぉー。だって、いっぱい練習したんだよ。お腹と背中がくっつきそうだ」
「もうすぐ、出来るよ」
「ねぇ、ボクはいつ帰って来たの。ぜんぜん覚えてないや」
「訓練を終えた途端に倒れて、スイセンが連れて帰って来たんだよ」
「そっか。終わった後、気が抜けて……、頭がボーッとしたんだ。そこからの意識がない」
「とても頑張ったようだからね。仕方がない」
「スイセンは怒ってなかった?」
「怒るわけないよ」
「よかった。でも、スイセンも同じぐらい。ううん、ボク以上に動いているのに……全然息切れしないし、汗もかかない。元気なのは呪力の差、なのかな」
「スイセンは自動回復しているよ」
「えっ! 何それ。詳しくっ」
「そのままさ。体力が半分以下になると自動で常に半分を維持するんだよ」
「何それズルいっ」
「木の癒しの効果で回復しているのさ」
「そんなことが出来るだなんて……」
「青龍は木属性だ。雨の加護を持っているから水属性のスイセンとは相性が良い。それに式神はスイセンだけだから、大事されているね」
「そういえば、青龍から直接の誘いがあったって言ってよ。いいなぁ、スイセン。すごいや」
スイセンの話しを一所懸命にするコハクの様子に、シロガネは面白くない。しかも、あのスイセンが昔話をしたのだ。微かな嫉妬を覚えた。
「さっきからスイセンの話しばかりだね」
「そうぉ? 今日は最後に倒れてしまったけど、次は倒れないようにする。だって情けないって思われたくないもん」
コハクが悔しそうな表情をする。
それは、ますますシロガネの嫉妬心を強くした。
「妬けるな」
「やける? 何か焼くの」
コハクが、見当違いな言葉を発した。
シロガネとコハクの、やけるの意味が違う事にコハクは気がつかない様子に、シロガネは可笑しく思いつつも、面白くない。
「コハクはなんだと思う?」
コハクが台所の周りをキョロキョロと見回している。だけど、今から焼く料理の素材が見当たらない。
「ここには、まだないのかな? 冷蔵庫?」
またしても見当違いな答えである。
コハクの可愛いさをシロガネは楽しんでいた。
「ここにも、冷蔵庫にもないよ」
「じゃあ、どこにあるの?」
コハクが不思議そうにシロガネを見上げれば、二人は瞳が交わり合う。
「私の心の中にあるんだよ」
いつもは気にならない時計の針の音が大きく聞こえた。
コハクはシロガネの心にある『やける』ものが何なのか考えている。
『やけるな』と、シロガネは言った。
その時の話の内容と、シロガネの様子に言葉を思い出していくうちに、コハクは理解した。
みるみるとコハクの頬が朱色に染まる。
その様子を見て、シロガネは穏やかで悪戯な笑みを浮かべた。
「や、やける……ことなんて、何もないんだ」
「おや? やけるのは何だったのか、わかったのかい」
「わかっ、わからないけど、わかったから! もう大丈夫」
「うーん。コハクはまだ、わかってないね」
「わかっているよ」
「私が何をなんで、妬いているのか、ちゃんと言ってごらん」
シロガネの意地悪な部分が表に現れる。その一つが言わせたがりな事だった。
無垢れる素振りをしながらもコハクが答える。
「スイセンのことばかり、話しをしたから……」
「そうだね」
「そんなの、何でもないことで……」
「目の前にいる私よりもスイセンを優先する事が普通なんだね」
「ち、ちがうよ。そんなことないから。もう、シロガネのイジワル」
「すまないね。嫌わないでおくれ」
コハクがハッとして首を大きく振る。
「嫌いじゃないよ。もうっ、恥ずかしいの」
シロガネはコハクの素直の心に触れられて満たされる。
シロガネは、そっと手を伸ばしてコハクの頭を撫でた。コハクは自然と一歩前に進んで、シロガネに胸に寄り添う。
しばらく、二人の間に優しい時間が流れたが、その時を止めたのはコハクの腹の音だった。
「大きな虫が鳴いているね」
「早く鳴くのを止めなきゃ」
その後、夕食の時間を二人は楽しく過ごした。
スイセンが毅然と告げれば、コハクはゆっくりと頷いた。
次の瞬間。コハクの体がふらり揺れて、前に向かってゆっくりと倒れ込んだ。
その様子にスイセンは慌てることなく、側へと近づいてコハクの体を支えた。
精も根も尽き果てたコハクは、目を閉じて眠っていた。
「おつかれさまでした。よく頑張りましたね」
スイセンは優しい声で、コハクを労った。
シロガネはコハクの帰りを待つ為に玄関に赴いた。
スイセンから念話にて、知らせが届いたからだ。
玄関に着けば、扉が開いた。
「遅くなりまして、申し訳ありません」
コハクを抱き抱えたまま、スイセンがシロガネに頭を垂れた。
「仕方があるまい」
シロガネの言葉を受けてスイセンは頭を上げた。そしてシロガネへ、コハクをそっと引き渡した。
「少々、熱が入ってしまい、無理をさせてしまいました。申し訳ございません。怪我などはしておりません」
「わかった」
「明日の修行はどうされますか? 休まれるならば、わたくしから連絡しておきますが」
「いや、本人に確認する。せっかくのやる気を損なうのもな」
「わかりました。出過ぎた真似を致しました」
「気にするな。お前の気遣いには、いつも助けられている」
「有り難きお言葉、痛み入ります」
「スイセン」
「はい」
少し低い声にて、シロガネが名を呼んだ。それに対してスイセンは緊張する。
「お前を式神にしたのは、私が望んだからだ。間違えるな」
スイセンは素早く跪いた。
「皇よ……、有り難き幸せ」
ありありと崇高な眼差しでシロガネを見つめた。
そのままスイセンは、シロガネの前から消えた。
シロガネは、基本的に全てを言わずにとも察して動けば良いと、簡単な命を下すのみで、後は式神たち丸投げである。
今までならば、はっきりと言葉にしなかった。分かれば良し、分からなくても良い。
去るもの追わずな、そういう姿勢で式神たちと接していた。
だけど、今のシロガネはコハクと出会って思いを言葉にする意味を知ったのだ。
シロガネは、腕の中で眠るコハクを眺めて頬を緩める。
「おつかれコハク」
とても美味しそうな匂いがする。
なんだろう……。
お腹がペコペコなんだ。だって、いっぱい練習したんだ。
あれ、何を? 誰と?
グゥーっとお腹が鳴る音で、コハクは目を覚ました。
パチリと開いた瞳をパタパタと何度も瞬きをする。顔を動かしてキョロキョロする。
天井を見つめて、居間だと気がつく。
コハクは居間で掛け布団を掛けて寝ていたのだ。そして、バッっと起き上がった。
布団を片付けて、急いで、いい匂いのする台所に向かった。
その足音に、シロガネは気がついてフッと笑った。
シロガネの姿を見つけるなりコハクは駆けよった。
「シロガネ! お腹空いた!」
「おや、コハク。起き抜け一番が、それかい?」
「えっと、おはよう?」
「お疲れさま」
「うん、疲れたよぉー。だって、いっぱい練習したんだよ。お腹と背中がくっつきそうだ」
「もうすぐ、出来るよ」
「ねぇ、ボクはいつ帰って来たの。ぜんぜん覚えてないや」
「訓練を終えた途端に倒れて、スイセンが連れて帰って来たんだよ」
「そっか。終わった後、気が抜けて……、頭がボーッとしたんだ。そこからの意識がない」
「とても頑張ったようだからね。仕方がない」
「スイセンは怒ってなかった?」
「怒るわけないよ」
「よかった。でも、スイセンも同じぐらい。ううん、ボク以上に動いているのに……全然息切れしないし、汗もかかない。元気なのは呪力の差、なのかな」
「スイセンは自動回復しているよ」
「えっ! 何それ。詳しくっ」
「そのままさ。体力が半分以下になると自動で常に半分を維持するんだよ」
「何それズルいっ」
「木の癒しの効果で回復しているのさ」
「そんなことが出来るだなんて……」
「青龍は木属性だ。雨の加護を持っているから水属性のスイセンとは相性が良い。それに式神はスイセンだけだから、大事されているね」
「そういえば、青龍から直接の誘いがあったって言ってよ。いいなぁ、スイセン。すごいや」
スイセンの話しを一所懸命にするコハクの様子に、シロガネは面白くない。しかも、あのスイセンが昔話をしたのだ。微かな嫉妬を覚えた。
「さっきからスイセンの話しばかりだね」
「そうぉ? 今日は最後に倒れてしまったけど、次は倒れないようにする。だって情けないって思われたくないもん」
コハクが悔しそうな表情をする。
それは、ますますシロガネの嫉妬心を強くした。
「妬けるな」
「やける? 何か焼くの」
コハクが、見当違いな言葉を発した。
シロガネとコハクの、やけるの意味が違う事にコハクは気がつかない様子に、シロガネは可笑しく思いつつも、面白くない。
「コハクはなんだと思う?」
コハクが台所の周りをキョロキョロと見回している。だけど、今から焼く料理の素材が見当たらない。
「ここには、まだないのかな? 冷蔵庫?」
またしても見当違いな答えである。
コハクの可愛いさをシロガネは楽しんでいた。
「ここにも、冷蔵庫にもないよ」
「じゃあ、どこにあるの?」
コハクが不思議そうにシロガネを見上げれば、二人は瞳が交わり合う。
「私の心の中にあるんだよ」
いつもは気にならない時計の針の音が大きく聞こえた。
コハクはシロガネの心にある『やける』ものが何なのか考えている。
『やけるな』と、シロガネは言った。
その時の話の内容と、シロガネの様子に言葉を思い出していくうちに、コハクは理解した。
みるみるとコハクの頬が朱色に染まる。
その様子を見て、シロガネは穏やかで悪戯な笑みを浮かべた。
「や、やける……ことなんて、何もないんだ」
「おや? やけるのは何だったのか、わかったのかい」
「わかっ、わからないけど、わかったから! もう大丈夫」
「うーん。コハクはまだ、わかってないね」
「わかっているよ」
「私が何をなんで、妬いているのか、ちゃんと言ってごらん」
シロガネの意地悪な部分が表に現れる。その一つが言わせたがりな事だった。
無垢れる素振りをしながらもコハクが答える。
「スイセンのことばかり、話しをしたから……」
「そうだね」
「そんなの、何でもないことで……」
「目の前にいる私よりもスイセンを優先する事が普通なんだね」
「ち、ちがうよ。そんなことないから。もう、シロガネのイジワル」
「すまないね。嫌わないでおくれ」
コハクがハッとして首を大きく振る。
「嫌いじゃないよ。もうっ、恥ずかしいの」
シロガネはコハクの素直の心に触れられて満たされる。
シロガネは、そっと手を伸ばしてコハクの頭を撫でた。コハクは自然と一歩前に進んで、シロガネに胸に寄り添う。
しばらく、二人の間に優しい時間が流れたが、その時を止めたのはコハクの腹の音だった。
「大きな虫が鳴いているね」
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その後、夕食の時間を二人は楽しく過ごした。
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