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49カリンとエレン
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昨日の今日、コハクはカリンと一緒にいる。
「よろしくね、カリン」
「うん、それじゃあ。がんばるぞぉー」
「おぉーっ」
二人は声を揃えて、手を挙げて気合を入れた。
カリンは、玄武の神使いで木属性だ。
「カリンって、獣使いの他には何が出来るの」
「植物の成長を早くして、思い通りに動かせるよぉ。あとは、風を作ったりぃ」
「それは凄いや、見てみたいっ」
「それじゃあ、いっくよぉーー」
カリンが地面にふれた。
「みんな、おいでぇ」
いくつもの小さな呪法陣が現れてた。
その中から小さな芽が出て、ニョキニョキと大きくなって、あっという間に綺麗な花や草に低木が生えた。
その現象は、早送りを見ているようである。
「もっと、いっぱいっ」
大きな呪法陣が現れて、辺り一面が花畑になる。
次にカリンが指笛を吹くと、低木の枝がコハクの方へと伸びてくる。
今度はカリンが、口笛を吹くと風が吹く。
「はなふぶきぃ」
強い風が吹いて、花畑の花が舞った。
それはとても綺麗な光景だ。
コハクが驚いている様子に、カリンは楽しそうに笑っている。
「すごい、すごいよ」
「でもぉ、戦いには、ぜんぜん役に立たないけどねぇ。ちょっとだけイジワル。邪魔するのぉ」
「体勢を整えたり、逃げたりするには、時間が必要だから役に立つよ」
「へへ、そっかなぁ」
コハクに褒められてカリンは嬉しくなる。
「カリンは木属性で、玄武の水属性と相性がいいよね。だから、植物を操ることができるのかな。獣使いっていう能力もすごく珍しいよね」
「そうだよねぇ……」
カリンが、何だか元気がない様子を見せた。
「ボク、何か気に触ること言ったかな……」
「ううん、違うよぉ。あのね、すっごく昔のことを思い出しただけぇ」
「昔って、式神になる前のこと?」
「うん。あるじとルーンが助けてくれた時の事だよぉ」
「あっ……」
コハクの気持ちが声になった。
「お話しするぅ」
「えっとね! 先ずは、動物たちと仲良くなるコツから教えもらおうかなって」
自分勝手な気持ちを表に出して、カリンに気を使わせてしまった。
コハクは悔いる。
カリンと楽しく過ごしたい。
その思いは本当で、元気づけたくて明るく振る舞った。
「コハクはいい子で、優しいねぇ」
いつもの明るくて賑やかなカリンの雰囲気とは違った。昨日、頭を撫でてくれた時の感覚を思い出す。物静かな声と大人びた言い方は、その時よりもはっきりとした違和感となる。
「か、カリン?」
しぃーっとカリンが、口に人差し指を当てた。そして、にっこりと笑う。
カリンは、こんな風じゃない。
「ぼくはエレン。よろしくね、コハク」
エレンと名乗ったカリンに、コハクは何が起こっているのか、わからないままだ。状況を把握出来ずに呆然としていた。
「ははっ、ビックリするよねっ。まぁ、無理もないかなぁ」
少しづつ、頭が冴えてくる。
確かに、コハクの知っているカリンとは、全く違う。
「いったいどういうことなの……」
「入れ変わったんだ」
「それって……。えっと、君がエレンなら、カリンは今どこにいるの」
「僕の中」
エレンが、自分の胸をトントンと叩いた。
「確認するよ。今の君はエレンで、さっきまではカリンだった」
「そうだねぇ」
「カリンの時は、エレンが胸の中にいて、エレンの時は、その逆なんだね」
「そうだよっ」
「君は、カリンは、二重人格ってやつなの?」
「そう定義されるものかもね。でもねぇ、カリンも僕も実在したから、似て非なるものだろうねぇ」
「それは、シロガネが関係しているの?」
「さすがはコハク。こういうのは鋭いねぇ、他は、てっきりだけどね」
クックっとエレンが笑う。
「どういうことか、話しを聞かせて。教えて欲しい」
「僕とエレンが、主と会った時の話しよりも」
「違う。そんなの、どうでもいい。カリンの、エレンとの話しが聞きたいっ」
コハクが泣き出しそうな表情で一生懸命に訴える。
「そんな、顔をしないくれ。意地悪をしたみたいになったよ。カリンに怒られる」
エレンが困り顔で苦笑する。
少し息を吸って吐いてから、気持ちを落ち着かせた。
「それでは、カリンと僕の話しを聞いておくれ」
エレンが話しを始めた。
ある国の王妃が難産の末に、子供を出産した。
一人目は男の子、二人目は女の子の双子だった。
古くからの言い伝えで、自分と同じ顔を持つ者に会えば、死の前触れの死神を連れて来ると恐れられていた。だから、双子は不吉な象徴であった。
故に、男の子は残されて、王子として皆から大切に育てられた。
だが、王女となるはずの女の子は、その存在を抹消された。
王子が十五歳になり、世の中を知る為に国を離れて隣国へと留学をすることになった。
隣国はよく似た文化だが、異なる部分もある。
自国から離れて解放され、新しい交流に王子は楽しんでいた。
隣国の先は、深い森が広がっていた。手前までならば普通の森だが、その奥になると魔素が多くて魔物が出現した。
その奥には何があるのか、誰も知らなかった。
その話しを聞いて王子は、興味を抱いた。
王子の国の先には、広大な土と砂と岩があり、その先の国に続くのみだった。
その道中に魔物が出現することがあるらしいが、それも稀だった。
本や話しでしか聞いたことない魔物を見てみたかった。
仲間を率いて、魔物が出る森へと入った。
「エレン様、これより先は駄目です」
従者が忠告する。
「わかっている」
この国の者たちは、魔物を恐れて近づかない。それは仕方がないことで、今まで何人の者たちが森に入り帰って来なかったからだ。
だが、約十年前ほどから森の入り口からその先へ、少し奥まで入れるようになったらしい。
そして、行方不明になる者はいなかった。
今、エレンがいる場所な境目である。
この場所と魔素が溢れて魔物が出現する場所の境目の違いに、エレンは興味を持った。
この周りを歩いて観察する。
あばよくば、境目の奥にいる魔物を見れないか、などと考えていた。
あれから、エレンは一人でこっそりと森へ入るようになった。
日中は人目があるので難しい。だから夜明け前に部屋を抜け出す。見つかれば鍛錬だと誤魔化した。
最初は怖々だったが、何度も行く内に慣れてきた。森で朝を迎えるのは気持ち良かった。
ある日、境界の近くを歩いていると、カサっと茂みが揺れた。気がつけば、足元に黒いフニャとしたモノがいた。それは、あちこちから現れる。
魔物だと分かり、魔物避けの粉をふり撒く。動きが鈍り、その隙に逃げた。
しかし、その黒いモノたちが追いかけて来る。エレンは、慌てて転んでしまった。
襲われると思った瞬間、森の中から口笛が響いた。
カタカタカタ、キュキュキュと、音が近づいてくれば、黒いモノに襲いかかっていた。それはネズミだった。気がつけば、黒いモノもネズミも、あっという間にいなくなっていた。
「だいじょうぶぅ」
「うわぁっ!」
転んだままのエレンの後ろから、声がして驚く。
後ろ振り向くと、さらに驚いた。
自分と良く似た顔の、背丈も一緒で歳の頃も同じぐらいの者がいたからだ。
少し丸みがある雰囲気から、女の子だとわかった。
「やっばりぃー、いっしょ、にてるぅねっ」
「なにがだ……」
「かおっ」
「そうだ、顔が一緒だ。なぜなんだっ」
「わかんないっ」
「お前は、魔物ではないのかっ。それとも死神の使いなのか」
「ぼくは人だよぉ」
「嘘をつくな、自分と同じ顔している者に会えば死神が、死が訪れると……」
「じゃあ、ぼくも死んじゃうの?」
そう、エレンもまた、目の前いる自分と良く似た顔の女の子にとって、畏怖される存在なのだと気づく。
エレンは深呼吸をして心を落ち着かせた。
「ここで、何をしている」
「ここで、暮らしているよぉ」
「ひとりでかっ」
「うん」
「いつから」
「わかんないけど、生まれてからすぐじゃないのぉ」
「どうしてだっ」
「わかんないけど、ルーンがね。捨てられたのを拾ったって、言ってたよぉ」
「捨てられた……ルーンとは何者だ」
エレンと良く似た顔の女の子がニッコリと笑って口笛を吹いた。さっきとは違う音色だ。
ドスドスと大きな音がした。
茂みが大きく揺れると、現れたのは白と灰色の熊だった。
「わぁっ」
「ルーン、おいでぇ」
「この、この熊が、お前を育てたのかっ」
「うん」
エレンは、自分に似た女の子と熊が戯れ合う様子を不思議な感覚で眺めた。
熊が人の子を育てるなどあるのか。
しかし、熊の懐く様子から嘘ではないのだと理解した。
ルーンが、エレンをジッと見つめた。
近づいてくるので、エレンは身構える。クンクンっと匂いを嗅いでくる。口を大きく開けたので驚いて目を瞑ると、顔がベチャッと濡れてベロっと舐められた。
ルーンが、エレンの顔をペロリペロリと舐めて戯れてくる。
「ちょっと、まってくれ」
クスクスっと笑い声がする。
「おいっ、お前、やめさせてくれ」
笑い声の主に止めるように声をかけた。
エレンは、お互いの名前を知らない事に気がついた。王子であるから自ら名乗るなど、あり得ない事だ。しかし命を助けてもらった。にも関わらず、礼さえも言ってなかった。
「ルーンっ、おしまいだよぉ」
言葉が理解できるのか、熊のルーンが舐めるのやめた。
エレンは一息つく。
「俺はエレンという。助けてくれてありがとう。おま……、君の名前を教えて欲しい」
「ぼくの名前はカリンだよぉ」
朝日が昇っていく。辺りは明るくなっていく。カリンの笑顔が眩しく輝いている。
「よろしくね、カリン」
「うん、それじゃあ。がんばるぞぉー」
「おぉーっ」
二人は声を揃えて、手を挙げて気合を入れた。
カリンは、玄武の神使いで木属性だ。
「カリンって、獣使いの他には何が出来るの」
「植物の成長を早くして、思い通りに動かせるよぉ。あとは、風を作ったりぃ」
「それは凄いや、見てみたいっ」
「それじゃあ、いっくよぉーー」
カリンが地面にふれた。
「みんな、おいでぇ」
いくつもの小さな呪法陣が現れてた。
その中から小さな芽が出て、ニョキニョキと大きくなって、あっという間に綺麗な花や草に低木が生えた。
その現象は、早送りを見ているようである。
「もっと、いっぱいっ」
大きな呪法陣が現れて、辺り一面が花畑になる。
次にカリンが指笛を吹くと、低木の枝がコハクの方へと伸びてくる。
今度はカリンが、口笛を吹くと風が吹く。
「はなふぶきぃ」
強い風が吹いて、花畑の花が舞った。
それはとても綺麗な光景だ。
コハクが驚いている様子に、カリンは楽しそうに笑っている。
「すごい、すごいよ」
「でもぉ、戦いには、ぜんぜん役に立たないけどねぇ。ちょっとだけイジワル。邪魔するのぉ」
「体勢を整えたり、逃げたりするには、時間が必要だから役に立つよ」
「へへ、そっかなぁ」
コハクに褒められてカリンは嬉しくなる。
「カリンは木属性で、玄武の水属性と相性がいいよね。だから、植物を操ることができるのかな。獣使いっていう能力もすごく珍しいよね」
「そうだよねぇ……」
カリンが、何だか元気がない様子を見せた。
「ボク、何か気に触ること言ったかな……」
「ううん、違うよぉ。あのね、すっごく昔のことを思い出しただけぇ」
「昔って、式神になる前のこと?」
「うん。あるじとルーンが助けてくれた時の事だよぉ」
「あっ……」
コハクの気持ちが声になった。
「お話しするぅ」
「えっとね! 先ずは、動物たちと仲良くなるコツから教えもらおうかなって」
自分勝手な気持ちを表に出して、カリンに気を使わせてしまった。
コハクは悔いる。
カリンと楽しく過ごしたい。
その思いは本当で、元気づけたくて明るく振る舞った。
「コハクはいい子で、優しいねぇ」
いつもの明るくて賑やかなカリンの雰囲気とは違った。昨日、頭を撫でてくれた時の感覚を思い出す。物静かな声と大人びた言い方は、その時よりもはっきりとした違和感となる。
「か、カリン?」
しぃーっとカリンが、口に人差し指を当てた。そして、にっこりと笑う。
カリンは、こんな風じゃない。
「ぼくはエレン。よろしくね、コハク」
エレンと名乗ったカリンに、コハクは何が起こっているのか、わからないままだ。状況を把握出来ずに呆然としていた。
「ははっ、ビックリするよねっ。まぁ、無理もないかなぁ」
少しづつ、頭が冴えてくる。
確かに、コハクの知っているカリンとは、全く違う。
「いったいどういうことなの……」
「入れ変わったんだ」
「それって……。えっと、君がエレンなら、カリンは今どこにいるの」
「僕の中」
エレンが、自分の胸をトントンと叩いた。
「確認するよ。今の君はエレンで、さっきまではカリンだった」
「そうだねぇ」
「カリンの時は、エレンが胸の中にいて、エレンの時は、その逆なんだね」
「そうだよっ」
「君は、カリンは、二重人格ってやつなの?」
「そう定義されるものかもね。でもねぇ、カリンも僕も実在したから、似て非なるものだろうねぇ」
「それは、シロガネが関係しているの?」
「さすがはコハク。こういうのは鋭いねぇ、他は、てっきりだけどね」
クックっとエレンが笑う。
「どういうことか、話しを聞かせて。教えて欲しい」
「僕とエレンが、主と会った時の話しよりも」
「違う。そんなの、どうでもいい。カリンの、エレンとの話しが聞きたいっ」
コハクが泣き出しそうな表情で一生懸命に訴える。
「そんな、顔をしないくれ。意地悪をしたみたいになったよ。カリンに怒られる」
エレンが困り顔で苦笑する。
少し息を吸って吐いてから、気持ちを落ち着かせた。
「それでは、カリンと僕の話しを聞いておくれ」
エレンが話しを始めた。
ある国の王妃が難産の末に、子供を出産した。
一人目は男の子、二人目は女の子の双子だった。
古くからの言い伝えで、自分と同じ顔を持つ者に会えば、死の前触れの死神を連れて来ると恐れられていた。だから、双子は不吉な象徴であった。
故に、男の子は残されて、王子として皆から大切に育てられた。
だが、王女となるはずの女の子は、その存在を抹消された。
王子が十五歳になり、世の中を知る為に国を離れて隣国へと留学をすることになった。
隣国はよく似た文化だが、異なる部分もある。
自国から離れて解放され、新しい交流に王子は楽しんでいた。
隣国の先は、深い森が広がっていた。手前までならば普通の森だが、その奥になると魔素が多くて魔物が出現した。
その奥には何があるのか、誰も知らなかった。
その話しを聞いて王子は、興味を抱いた。
王子の国の先には、広大な土と砂と岩があり、その先の国に続くのみだった。
その道中に魔物が出現することがあるらしいが、それも稀だった。
本や話しでしか聞いたことない魔物を見てみたかった。
仲間を率いて、魔物が出る森へと入った。
「エレン様、これより先は駄目です」
従者が忠告する。
「わかっている」
この国の者たちは、魔物を恐れて近づかない。それは仕方がないことで、今まで何人の者たちが森に入り帰って来なかったからだ。
だが、約十年前ほどから森の入り口からその先へ、少し奥まで入れるようになったらしい。
そして、行方不明になる者はいなかった。
今、エレンがいる場所な境目である。
この場所と魔素が溢れて魔物が出現する場所の境目の違いに、エレンは興味を持った。
この周りを歩いて観察する。
あばよくば、境目の奥にいる魔物を見れないか、などと考えていた。
あれから、エレンは一人でこっそりと森へ入るようになった。
日中は人目があるので難しい。だから夜明け前に部屋を抜け出す。見つかれば鍛錬だと誤魔化した。
最初は怖々だったが、何度も行く内に慣れてきた。森で朝を迎えるのは気持ち良かった。
ある日、境界の近くを歩いていると、カサっと茂みが揺れた。気がつけば、足元に黒いフニャとしたモノがいた。それは、あちこちから現れる。
魔物だと分かり、魔物避けの粉をふり撒く。動きが鈍り、その隙に逃げた。
しかし、その黒いモノたちが追いかけて来る。エレンは、慌てて転んでしまった。
襲われると思った瞬間、森の中から口笛が響いた。
カタカタカタ、キュキュキュと、音が近づいてくれば、黒いモノに襲いかかっていた。それはネズミだった。気がつけば、黒いモノもネズミも、あっという間にいなくなっていた。
「だいじょうぶぅ」
「うわぁっ!」
転んだままのエレンの後ろから、声がして驚く。
後ろ振り向くと、さらに驚いた。
自分と良く似た顔の、背丈も一緒で歳の頃も同じぐらいの者がいたからだ。
少し丸みがある雰囲気から、女の子だとわかった。
「やっばりぃー、いっしょ、にてるぅねっ」
「なにがだ……」
「かおっ」
「そうだ、顔が一緒だ。なぜなんだっ」
「わかんないっ」
「お前は、魔物ではないのかっ。それとも死神の使いなのか」
「ぼくは人だよぉ」
「嘘をつくな、自分と同じ顔している者に会えば死神が、死が訪れると……」
「じゃあ、ぼくも死んじゃうの?」
そう、エレンもまた、目の前いる自分と良く似た顔の女の子にとって、畏怖される存在なのだと気づく。
エレンは深呼吸をして心を落ち着かせた。
「ここで、何をしている」
「ここで、暮らしているよぉ」
「ひとりでかっ」
「うん」
「いつから」
「わかんないけど、生まれてからすぐじゃないのぉ」
「どうしてだっ」
「わかんないけど、ルーンがね。捨てられたのを拾ったって、言ってたよぉ」
「捨てられた……ルーンとは何者だ」
エレンと良く似た顔の女の子がニッコリと笑って口笛を吹いた。さっきとは違う音色だ。
ドスドスと大きな音がした。
茂みが大きく揺れると、現れたのは白と灰色の熊だった。
「わぁっ」
「ルーン、おいでぇ」
「この、この熊が、お前を育てたのかっ」
「うん」
エレンは、自分に似た女の子と熊が戯れ合う様子を不思議な感覚で眺めた。
熊が人の子を育てるなどあるのか。
しかし、熊の懐く様子から嘘ではないのだと理解した。
ルーンが、エレンをジッと見つめた。
近づいてくるので、エレンは身構える。クンクンっと匂いを嗅いでくる。口を大きく開けたので驚いて目を瞑ると、顔がベチャッと濡れてベロっと舐められた。
ルーンが、エレンの顔をペロリペロリと舐めて戯れてくる。
「ちょっと、まってくれ」
クスクスっと笑い声がする。
「おいっ、お前、やめさせてくれ」
笑い声の主に止めるように声をかけた。
エレンは、お互いの名前を知らない事に気がついた。王子であるから自ら名乗るなど、あり得ない事だ。しかし命を助けてもらった。にも関わらず、礼さえも言ってなかった。
「ルーンっ、おしまいだよぉ」
言葉が理解できるのか、熊のルーンが舐めるのやめた。
エレンは一息つく。
「俺はエレンという。助けてくれてありがとう。おま……、君の名前を教えて欲しい」
「ぼくの名前はカリンだよぉ」
朝日が昇っていく。辺りは明るくなっていく。カリンの笑顔が眩しく輝いている。
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