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53ユリの回復と再生
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いつもの訓練する広場に、コハクとユリが向かい合っている。
「本日は良いお天気で、訓練日和ですわね。よろしくお願い致しますわ。コハクさま」
「よろしく、ユリ」
「あら、少し緊張されているのかしら」
「そうかもしれない」
「今日、あたくしで最後の訓練ですものね」
「でも、これで終わりじゃないから。復習は大切で、もっと練習をしていかなきゃ。まだまだ、皆んなから教わることは、たくさんあるよっ」
ユリが、小さく微笑んだ。
「それでは、始めさせて頂きましょうか。あたくしは、主に回復でみなさんの戦いの補助を致します。あとは結界ですね」
「ナデシコと同じだね」
「あの方と一緒にされては、あたくし困りますわ」
「どうして?」
「光と水では格が違いますもの」
「極めた属性には勝るものなしって、シロガネが言っていたよ」
「まぁ、シロガネ様ったら」
「確かに五属性は相性があって、光と闇は枠から外れているから特別なように思うけど、結局は呪術者の技量、得手不得手によるんだ。だから、優劣をつける必要はないと思う。ユリにしか出来ないこともあるから」
「コハクさまは勉強熱心ですわね。そうですね。仰る通りですわ。シロガネさまの命を救えるのは、あたくしだけ……」
ユリが、冷ややかな微笑みを浮かべる。
コハクは、生唾を飲み込んだ。
「実は、その事について……。ボクは話しを聞きたい。その意味を知りたい。ユリがシロガネの式神になった経緯や、二人の間に起こった事について教えて欲しいんだ」
「嫌ですわ。あたくしとシロガネさまだけの大切な思い出ですもの。誰も踏み入れられたくありませんわ」
きっぱりと拒否されて、コハクは当惑する。
ユリの性格を考えれば、嫌がられる可能性は心の片隅にあった。機会を見てと思っていたはずなのに、知りたい気持ちが先走った。
コハクの良くも悪くもある部分である。
今日一日、気まずい雰囲気で過ごすわけにはいかない。コハクは気持ちを切り替えた。
「ユリ、ごめん。無神経だった」
「いいえ、わかって頂けたならば、それで良いですの」
その後、コハクはユリの後について、森の中に入っていく。着いた先は、動物たちが水を飲みにくる場所だった。
ここは、シロガネが癒しの術を施している水飲み場で、魔物と共存している動物が傷を癒しに来る場所となっている。
その水場を、二人は茂みの影から覗いた。
コハクは、首輪がついている一匹の犬に目がいく。人が飼えなくなった動物を、森に捨てに来ることはよくあることだ。
その犬は、片足が欠損していた。
捨てられる前か、この森に来てからなのかはわからないが、コハクは不憫に思う。
「コハクさま、お気づきでしょうか。あの犬の片足がありません」
「うん」
「では、参りましょう」
ユリが、犬の方へと歩いていくのをコハクは後ろからついて歩いた。
コハクたちに気がついた犬が唸り声をあげて威嚇する。片足がないので、すぐに動けなくて逃げることができない。
「では、今から、あたくしの回復の呪術をお見せ致しましょう」
ユリが呪を唱えた。
すると、犬の欠損している足の付け根に呪式が現れた。
犬の足が徐々に形を現す。
骨、血管、筋肉、皮、毛。
ゆるゆると犬の足が元に戻っていった。
完全に犬の足が元に戻ると、犬は足があることに気がついた様子で、ゆっくりと確かめるように歩く。少し早く歩いて、次には走って、この場から立ち去った。
ユリの回復の呪術を目の当たりにして、コハクは驚いた。
回復と再生である。
呪力の多さだけで出来るはずもなく。精神力の強さなのだとコハクは感じた。
「すごいよ、ユリ」
「コハクさまに、褒めて頂きまして嬉しいですわ」
「これが、シロガネの命を救った力なんだね」
「左様ですわ」
「ユリにとってシロガネが大切だから、命を救ったのは当然なんだ……。だから、誰かに何かを言われるのは違うってわかっている。でもね、ボクもユリと同じく。シロガネが大切で大好きだから……。ありがとう」
コハクはニッコリと笑った。
ユリは少し困惑な表情を浮かべて薄く笑った。
「コハクさまには負けますわ」
「何が?」
「素直な気持ちを伝えることが出来ることですわ。あたくしのこと、お嫌いな癖に」
「き、嫌いじゃないよ……。ちょっと、苦手なだけだよ……」
「あらあら、本当に素直でいらしゃるいますわね。あたくしとコハクさまは真逆なんですもの、仕方ありませんわ」
ふぅと、ユリが溜め息をついた。
「ご存知でしょうが、あたくしは意地が悪いのですよ。妬みが強くて素直になれない。そういう性分です。こんなあたくしと、コハクさまは向き合おうとされるから……不思議ですわ。申し訳なく思ってしまうなんて」
クスっとユリが明るくて笑った。
いつもの妖しい微笑みではない。
「シロガネ様から、あたくしと出会った時の話しは、お聞きになられているようですから。あたくしが、お話しするのは、二度目にお会いした時に、シロガネさまの命を救った出来事ですわね」
「……いいの?」
「だって、あなたはシロガネさまの命を救ってくれる方ですもの」
コハクは真剣な顔つきで頷いた。
「その通りだよ。ボクはシロガネを救うよ。何があってもね」
「その言葉を違えないように、信じておりますわ。よろしくお願い致します」
「本日は良いお天気で、訓練日和ですわね。よろしくお願い致しますわ。コハクさま」
「よろしく、ユリ」
「あら、少し緊張されているのかしら」
「そうかもしれない」
「今日、あたくしで最後の訓練ですものね」
「でも、これで終わりじゃないから。復習は大切で、もっと練習をしていかなきゃ。まだまだ、皆んなから教わることは、たくさんあるよっ」
ユリが、小さく微笑んだ。
「それでは、始めさせて頂きましょうか。あたくしは、主に回復でみなさんの戦いの補助を致します。あとは結界ですね」
「ナデシコと同じだね」
「あの方と一緒にされては、あたくし困りますわ」
「どうして?」
「光と水では格が違いますもの」
「極めた属性には勝るものなしって、シロガネが言っていたよ」
「まぁ、シロガネ様ったら」
「確かに五属性は相性があって、光と闇は枠から外れているから特別なように思うけど、結局は呪術者の技量、得手不得手によるんだ。だから、優劣をつける必要はないと思う。ユリにしか出来ないこともあるから」
「コハクさまは勉強熱心ですわね。そうですね。仰る通りですわ。シロガネさまの命を救えるのは、あたくしだけ……」
ユリが、冷ややかな微笑みを浮かべる。
コハクは、生唾を飲み込んだ。
「実は、その事について……。ボクは話しを聞きたい。その意味を知りたい。ユリがシロガネの式神になった経緯や、二人の間に起こった事について教えて欲しいんだ」
「嫌ですわ。あたくしとシロガネさまだけの大切な思い出ですもの。誰も踏み入れられたくありませんわ」
きっぱりと拒否されて、コハクは当惑する。
ユリの性格を考えれば、嫌がられる可能性は心の片隅にあった。機会を見てと思っていたはずなのに、知りたい気持ちが先走った。
コハクの良くも悪くもある部分である。
今日一日、気まずい雰囲気で過ごすわけにはいかない。コハクは気持ちを切り替えた。
「ユリ、ごめん。無神経だった」
「いいえ、わかって頂けたならば、それで良いですの」
その後、コハクはユリの後について、森の中に入っていく。着いた先は、動物たちが水を飲みにくる場所だった。
ここは、シロガネが癒しの術を施している水飲み場で、魔物と共存している動物が傷を癒しに来る場所となっている。
その水場を、二人は茂みの影から覗いた。
コハクは、首輪がついている一匹の犬に目がいく。人が飼えなくなった動物を、森に捨てに来ることはよくあることだ。
その犬は、片足が欠損していた。
捨てられる前か、この森に来てからなのかはわからないが、コハクは不憫に思う。
「コハクさま、お気づきでしょうか。あの犬の片足がありません」
「うん」
「では、参りましょう」
ユリが、犬の方へと歩いていくのをコハクは後ろからついて歩いた。
コハクたちに気がついた犬が唸り声をあげて威嚇する。片足がないので、すぐに動けなくて逃げることができない。
「では、今から、あたくしの回復の呪術をお見せ致しましょう」
ユリが呪を唱えた。
すると、犬の欠損している足の付け根に呪式が現れた。
犬の足が徐々に形を現す。
骨、血管、筋肉、皮、毛。
ゆるゆると犬の足が元に戻っていった。
完全に犬の足が元に戻ると、犬は足があることに気がついた様子で、ゆっくりと確かめるように歩く。少し早く歩いて、次には走って、この場から立ち去った。
ユリの回復の呪術を目の当たりにして、コハクは驚いた。
回復と再生である。
呪力の多さだけで出来るはずもなく。精神力の強さなのだとコハクは感じた。
「すごいよ、ユリ」
「コハクさまに、褒めて頂きまして嬉しいですわ」
「これが、シロガネの命を救った力なんだね」
「左様ですわ」
「ユリにとってシロガネが大切だから、命を救ったのは当然なんだ……。だから、誰かに何かを言われるのは違うってわかっている。でもね、ボクもユリと同じく。シロガネが大切で大好きだから……。ありがとう」
コハクはニッコリと笑った。
ユリは少し困惑な表情を浮かべて薄く笑った。
「コハクさまには負けますわ」
「何が?」
「素直な気持ちを伝えることが出来ることですわ。あたくしのこと、お嫌いな癖に」
「き、嫌いじゃないよ……。ちょっと、苦手なだけだよ……」
「あらあら、本当に素直でいらしゃるいますわね。あたくしとコハクさまは真逆なんですもの、仕方ありませんわ」
ふぅと、ユリが溜め息をついた。
「ご存知でしょうが、あたくしは意地が悪いのですよ。妬みが強くて素直になれない。そういう性分です。こんなあたくしと、コハクさまは向き合おうとされるから……不思議ですわ。申し訳なく思ってしまうなんて」
クスっとユリが明るくて笑った。
いつもの妖しい微笑みではない。
「シロガネ様から、あたくしと出会った時の話しは、お聞きになられているようですから。あたくしが、お話しするのは、二度目にお会いした時に、シロガネさまの命を救った出来事ですわね」
「……いいの?」
「だって、あなたはシロガネさまの命を救ってくれる方ですもの」
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「その通りだよ。ボクはシロガネを救うよ。何があってもね」
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