八千代を翔けて、愛う日まで

ゆらん

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56次はどこへ

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 コハクとシロガネは、有意義な時間を過ごせて心身共に癒された。
 いつまでもというわけにいかないので、青龍に挨拶をして神域から現世へと戻った。
 光の道から出ると、式神の皆んなが待っていた。
 コハクは何かあったのかと緊張した。
「皆んな、揃ってどうかしたの?」
「ズルいっー」
 カリンが前に出て、コハクに抗議した。
「えっと、青龍のところにね。行ってだけだよ?」
「それがぁ、ズルいのぉ」
「えっと、どうして?」
 カリンが頬を膨らませて不貞腐れている。
「それだけで、わかる訳がありませんよ。はっきりと言いなさい」
 コハクたちよりも先に戻って、帰りを待っていたスイセンが、カリンを嗜める。
 カリンが今にも泣きそうな顔のまま俯く。
「泣かないでカリン。何がズルいのか教えてよ」
 コハクはカリンをなだめた。
 すると、カリンは顔上げてコハクをジッと見つめた。
「だってぇ、主と一緒に二人だけでぇ、青龍のところで遊んで来たんだぁ。それって、すっごく、いやらしいよねぇ」
 このやりとりに、コハクは親近感を覚える。
 表情と声が……。
 あの時も……今ならわかる。
「エレンっ!」
 カリンが大人っぽく満面の笑みを見せる。
「よくわかったね。コハク」
「だって、だって雰囲気が。それに、カリンなら、仲良しでいいねってのも言うと思うんだ」
「そうだろうねぇ」
 エレンとコハクが笑い合った。
 周りの皆んなは少々置いてきぼりの状態だ。
「エレンなのか」
 シロガネが声をかけると、エレンはしっかりとシロガネを見つめて頷いた。
 そして、膝まづく。カリンなら絶対にしないだろう。
「お久しぶりでございます、主。私はエレンです」
「久しいなエレン。ちゃんと挨拶をして話すのは」
 シロガネが、皮肉った。
 コハクを揶揄った意趣返しだと、スイセンは気がついた。
 神域で、遊んでいるコハクを二人で眺めていた時のやり取りを思い出しては、度量が狭いっと、一人心の中で溜め息をついた。
「私である時は、ほんの一瞬です。お許しください」
「知っている」
「エレンって、カリンの双子のお兄さんなのでしょう? 本当に一緒の体なんだ……」
 話しに聞いていただけで、エレンに会った事がなかったスミレは、興味深々でカリンの姿のエレンに声をかけた。
「はい、そうです。いつもカリンがお世話になっております」
 エレンが、カリンの姿のまま丁寧にお辞儀をした。カリンならば、あり得ないので、皆が固まっている。
 しばらく沈黙が続く。
「ねぇ、皆んな」
 コハクが、そっと声をかけた。
「すまぬ。カリ……ではなくてエレン。儂もだが皆、驚いておる。達者なようでなりよりだ」
 ザクロが苦笑いをしながらエレンに声をかけた。
「えぇ、本当に。いつぶりかしら、驚いてしまいましてよ」
 続いてアヤメが戯ける。
「驚かせるつもりありませんでしたが、申し訳ございません」
「そ、そんな、謝らなくても良いのです」
 シオンがあたふたと援護した。
「皆んな、あなたに会えて、とても嬉しいのです」
「そうよ、お姉様の言う通りよ」
 ナデシコが微笑んで、スミレが賛同する。
「同じ仲間じゃ、遠慮はいらぬぞ」
 ゲンゲは楽しそうだ。
「これを機に、面倒くさがらずに、入れ替わった時は一言あれば良いのです」
 スイセンが目を閉じながら伝える。
「そうですね」
 エレンがバツが悪そうに、けど嬉しそうに笑っている。
「別にどちらでも構いませんわ」
 ユリがさらりと言えば、冷たいような物言いに聞こえるだろう。だが、同じ玄武に使える神使いとしての気遣いだとエレンは知っていた。
「ユリさん、ありがとうございます」
 ユリが静かに微笑んだ。
「それで、カリンはどうして、エレンと変わったの?」
「さっき言った通りだよ、コハク」
「ズルいっ、だよね」
「端的に言えば、ね……。まずは主に向けて、物申す事をお許し下さい」
「許そう」
 シロガネとエレンが頷く。
「では遠慮なく。カリンはお二人が居なくて寂しさのあまり、心中痛み入り引きこもってしまいました。何故、そこまでとお思いになるかもしれませんが、休暇を頂いたので、コハクと遊びたいと思ったのです。ですが、家に訪れると留守。ユリさんから青龍のところへ行っていると聞きお呼びまして、主に念話をしましたが、通じないではありませんか。お二人を心配する気持ちと、拒否されている悲しさが相まって落ち込んでしまったのです」 
 エレンが大袈裟に溜め息を吐いた。
 コハクはシロガネの様子をそっとうかがえば、目が合った。
「念話……どうして、通じなかったの?」
「念話が通らないようにしていたからだよ」
「どうして?」
「せっかくの休みを邪魔されたくないだろう」
 シロガネの子供じみた言動にコハクは唖然となる。
「邪魔って……。でも、何かあったら大変だよ?」
「それは、コハクに何かあるわけじゃないだろう」
「えっと……。シロガネ?」
「私の式神であるならば、緊急事態に対応出来なければ存在する意味はないな」
「えっ……と」
 シロガネの横暴な言葉に、コハクは少なからず衝撃を受けた。
 その様子に気づいているが、シロガネは気にする事はなく、微笑んでいる。
「まず、事前にある程度の事は片付けていたのさ。何かあるなんて、稀さ。コハクが気に病む必要はない。だから、さっきエレンが言っていただろう。休暇だって」
「あっ、そうなんだ……」
「私は、コハクとの過ごす時間を大切にしたいからね。その為に準備を整えたのだから、後は己たちで何とかするべきではないかな」
 シロガネの思いが重くて、コハクはいたたまれない。
 チラリとシロガネの後ろに控えている皆んなを見た。
 だが、皆んなは何も見てない聞いてないフリをしていたので余計に恥ずかしくなる。
「主をこんな風にさせるのは、コハクだけだ」
「エレンっ」
「カリンは怒ってるとかじゃなくて、拗ねているだけで、悪戯的な思いもあるんだ。おかげで僕もコハクと皆んなと話しが出来て楽しいよ」
「ならば、良かった」
 シロガネは知らぬ存ぜんなままである。
 式神たちが気に留めてない様子に、コハクは小さな息を吐いてクスリと笑った。
 シロガネは式神たちと気さくに接するが、主として毅然と厳しく振る舞う姿もある。
 どちらのシロガネも式神たちにとって同じなのだ。
 そして、コハクが優先されても当然のように受け入れる。それが式神である事なのだ。
 だが、コハクが皆に申し訳ない思いになるのは仕方がないだろう。
「ねぇ、コハク。カリンの機嫌が良くなる方法を知りたくない?」
「知りたいっ」
「それじゃあ、カリンと一緒に玄武に会いに行こう」
「それ、いいねっ!」
 エレンとコハクが意気投合する。
 しかし、それに異議を唱える者たちがいる。
「ちょっと待ってえ。麒麟にも会ってよ」
「あら、朱雀もいてるわよ」
「まて、麒麟と朱雀は既に夢であっていると聞いておるぞ」
「僭越ながら、申し上げさせて頂きますと、夢は夢です。私くしたちと一緒ではありませんので……」
「そ、そうです。僕たちも一緒には会ってません」
「じゃが、白虎は夢でも会っておらんからのぉ。玄武の次でよいぞ」
「皆さん。エレンの提案は、カリンの為なのをお忘れなきように」
 皆が銘々に言いたいこと言い出した。 
 さて、この場合は通常ならばスイセンかザクロが収めるだろう。しかしザクロが参戦している。そしてスイセンは既に部外者にて、何も言えないでいた。
 そうなるとシロガネになりそうなのだが、何も言わずに静観するか放っておくのが常だ。
 なので、コハクはあちこちと頭を振り耳を澄まして皆んなの話しを聞く。
 話し合いなんて遥か彼方だ。
「ねぇ、シロガネ。どうしよう」
「互いの気が済むまで、させておけばいいさ」
「まとまるかなぁ」
「なら、コハクが決めればいいさ」
「いいの?」
「私はそれが一番だと思うよ」
 意を決して、コハクが息を吸って吐いて大きな声を出した。
「皆んなぁーー。ボクが決めるから、もうおしまいね」
 式神たちの声をがピタリと止まった。
 一斉にコハクを見つめて皆んなが愉しそうに笑っている。
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