八千代を翔けて、愛う日まで

ゆらん

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71 陰陽寮の戦い3 黒烏と白桜

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「以外でした。貴方は二重人格なのですか」
 スイセンとの話した後、緋色が話しかけて来た。
「まぁ、そんなところです。緋色さんには、外と中との連携をとれるように動いて頂けたらと思います」
「そのつもりでしたよ。では」
 緋色はニコリと笑って去った。
「そろそろ行く?」
 準備運動を済ませた勿忘が聞いてくる。
「お待たせ致しました。さて、カリン、任せたよ」
「はーい。それじゃあ、ルーン」
 エレンはカリンと入れ替わりルーンを呼んで、勿忘と共に藍墨の元へ向かう。
 
 コハクが大量の血を流して倒れている姿に、シロガネの動揺が激しくなる。怒りが抑えられない。許せない思いは、真っ黒な深い闇に誘われた。
 それが魔神の狙いで、隙をつかれて心を奪われる。正気を保てなくなっている今は、躊躇いも遠慮もない。だからこそ、浅葱と山吹が全力で阻止する。
 黄白の恩人であろうとも、黄白の大切な者であろうとも、しがらみは無い。
 シロガネが、藍墨を式神たちを傷つける事が黄白を悲しませると知っているからだ。
 二人は刀を振い斬りつける。だが、魔の結界の盾に阻まれる。
 それでも二人は連携して術を使って隙をつくる。刀が届いて体に刻まれるも、傷はすぐに回復していく。
 諦めなど有りはしないと二人は果敢に挑む。
 その間、ザクロは術式を展開していた。
 コハクから教わった一撃必中の電撃の攻撃である。まさか、この技を主のシロガネに撃つことなるとは、ザクロは複雑な心境だ。
 だが、これで良い。この為に必要だったと思う気持ちになる。それは、コハクが作った技だからだろうか。
 シロガネを助けたい思いは、式神たちの総意だ。だから、全身全霊を込めて撃ち込む。

 魔物に変化して操られている藍墨は、身体強化がされている。勿忘が拳や蹴を叩きつけるが撃たれ強く回復術を使用する。
 ルーンが隙を見つけては、素早い動きで鋭い爪で攻撃する。だが、藍墨も素早く避ける。
 その先に勿忘が先回りして、練った気を拳で放って吹き飛ばす。体勢を崩しながら飛ばされた先にカリンがいる。
 準備していた術式を発動する樹木が現れて藍墨を拘束した。
 抵抗するが、呪術を使えないように口を塞いで、グルグルと何重にも巻きつけて動けなくした。

 魔神を惹きつける役を青鈍と孔雀が引き受けていた。
 青鈍が呪を唱えて火剣を振るう。火球がましの四方八方に現れて、勢いよく襲いかかる。
 爆発すれば、怯んだ隙に孔雀が大量の水を呼び出して大きな波を魔神にぶつけて結界から遠ざけた。
 そして珊瑚が幻影の術で混乱させた。
 その隙に、スイセンが勢いよく氷剣で斬りかかると凍っていく。
 この間にゲンゲは、コハクと考えた金属の結界を造る為の術式を発動していた。かなり大きな物になるので時間が必要だったが、スイセンたちのおかげで間に合う。
 凍りついて動きを止めた魔神を結界に閉じ込めた。
 時同じくして、ザクロが一撃必中の電撃をシロガネに撃ち込むと同時に、ザクロの結界を発動した。
 結界の中で、電撃を浴びたシロガネの動きが止まった。

 黄白の回復を終えた千草は息切れしている。
 とうとう呪力が底をつきそうだ。
「ありがとう千草」
 黄白は呪力を千草に分け与えた。
「黄白くん……」
 結界の外の様子を黄白が気にすれば、緋色が現れた。
「回復されたようですね」
「うん、それで」
 緋色が皆の戦況を黄白に告げた。

 凍らせた魔神だが、これも一時。ゲンゲの防御壁で隔離しているが、これもいつ破られるわからない状態だ。
 藍墨はカリンの術で捕縛した。
 シロガネはザクロの結界に閉じ込めた。
「この後はどうしますか」
 スイセンが黄白に尋ねた。黄白は式神たちを見回す。
「皆んなはここから撤退して、陰陽寮の結界が破れて魔素が溢れないようにして欲しい」
「撤退だと、お前はここに残るのだろう。なら俺は残るぞ」
「駄目だ。これは命令だ」
「黄白っ」
 浅葱が黄白の物言いに驚く。
「今から僕は神白桜の神月として、するべきことをする」
「ならば、尚更」
 食ってかかる浅葱に黄白は首を振る。
「何をするつもりですか」
 スイセンは危惧する。
「魔神はシロガネの神だよ」
 皆が息を呑んで静かに聞き入る。
「シロガネは、創世神の神月だった。その役割は光と闇の力は均等。けど、人の世は光よりも闇の力が強いから魔物が発現する。だから、四神や麒麟、陰陽寮を創って、魔物から人の世を守ろうとした。だけど、シロガネは魔の方に少しずつ傾いて……」
「あの魔神は創世神の闇。つまり闇の神ということですか」
 ナデシコが尋ねれば、黄白が頷く。
「あれが闇の神っていうなら、光の神はどこにいるのよぉっ」
 カミュが泣きながら聞いた。
「創世神の闇の神の名は黒烏。そして、光の神の名は白桜という」
 静寂がこの場に訪れる。
 今から九百年前。双つの世界の本に描かれているように、創世神は人に対して嘆き哀しんだ。心が割れて光と闇の神に分かれた。葛藤し対立して戦うが決着はつかない。神の力をシロガネに託して、この世界を委ねた。そして黒烏と白桜は千年の眠りついたのだ。
 黄白の言葉を皆が待った。
「それから八百年後、今から百年前に、シロガネは僕と出会う。その時に、二百年も早くに黒烏と白桜が目覚めた。魔に傾いていたシロガネは黒烏に、僕が白桜の神月になった」
「コハクが、シロガネ殿ところに来たのは必然だったのだな」
 ザクロが呟く。
「黄白は生まれる前から白桜の神月だったとはな」
 山吹が感嘆する。
「主人さまが何者であっても、私くしたちの大事な方ですわ」
 アヤメが告げる。
「黄白にとって大切な人なら何者でも関係なくないか」
 珊瑚が伝える。
「我主様は私たちの恩人です」
 シオンが声を出す。
「黄白ちゃんの恩人なんよねぇ」
 孔雀が声がを上げた。
「シロガネ公を助けなければならぬな」
 ゲンゲが声をかけた。
「助け立ちが必要なら、いつでも力になるぜ」
 青鈍が気取る。
「救われた心をお返しさせて下さい」
 ナデシコが捧げる。
「旦那様を助けてちょうだいっ」
 スミレが泣いている。
「どんな喧嘩でも受けて立つから」
 勿忘が拳をつくる。
「僕とコハクは友達だよぉ」
 カリンが微笑んだ。
「僕と黄白は仲良しだよね」
 千草が笑う。
「どうか、シロガネさまを救って下さいませ」
 ユリが祈った。
「主の思うままに、願うままに」
 竜胆と桔梗が声を揃えた。
「我ら神白桜と共に生まれ出る神使にて、その役目を果たしましょう。私たちよりもお若い貴方が、お一人で全てを背負うなど、甚だ可笑しいと思いませんか」
 緋色が目を閉じながら囁く。
「私は皇の全てを是とする」
 スイセンが発する。
「お前は俺の全て、命だ」
 浅葱が曝ける。
 これが真実。全ては我らの主のために。
「参ったよ。……皆んな、ありがとう」
 黄白がとびっきりの笑顔を向けた。
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