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73 二つの世、狭間にて
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嵐が止み、竜巻の中からシロガネの姿が現れた。
頭から二本の角が生えて、銀髪は白と黒の二色の長髪になっている。
「シロガネっ!!」
黄白の声に反応してシロガネが、ゆっくりと微笑んだ。
何か、言葉を口ずさんだ。
水晶が足元からシロガネを包み込んでいく。
あっという間に、シロガネは完全に水晶の中に閉じ込められて、何処かへと消えた。
しばらく黄白は、呆然と立ち竦む。
黄白の結界が解けて、式神たちが黄白に駆け寄る。
黄白が深呼吸をして、目を閉じていた。
聞きたいこと、確認したいことが、たくさんある。しかし、式神たちは静かに見守る。
黄白はシロガネの気配を追っていた。
同調した時の魔は黄白の中に残っている。黒烏の軌跡は辿り、シロガネのいる場所を探る。
この世界の何処にもいない。
外から……微か気配を感じる。
ここは生の現世なら、この外は死の常世。
だけど、創世神が常世に行ける訳がない。
ならば、その狭間。
目を開けて、瞳を輝せて、黄白が高らかに声を上げる。
「麒麟、君の力を貸して」
空から翔ける音が響けば、一陣の風と共に麒麟が現れた。
「やぁ。大変な事になっているね」
「そんなことないよ」
「アイツを追いかけるんだね」
「僕、ひとりでは行けない場所に行ってしまった。でも、君と一緒なら行けるはずだ」
黄白が胸に手を当ててギュッと握る。
ユリはそれに気がつく。
「コハクさま、どうかシロガネさまを、よろしくお願い致します」
ユリが祈るように跪くと、その意図にシロガネの式神たちが気付く。
シロガネの式神たちが皆、膝を降り首を垂れた。
ただ事でない様子に、浅葱と山吹以外の黄白の式神たちが騒つく。
落ち着きつつも険しい顔をしている二人の様子に息を飲む。
「浅葱、山吹。二人から皆んなに話しをしておいて欲しい。僕を信じて、必ず、シロガネを連れて戻る」
いつなのかは明確に出来ない。
でも、戻ることは約束をする。
その誓いに黄白の式神たちが跪き頭を下げる。
「いってらしゃいませ。次にお会い出来る日を楽しみに待っています。あぁ、余り遅いようでしたら、忘れてしまわないように、ご一報頂ければ良いかと思います」
緋色が嬉々として告げる。
「善処しよう」
受けて立った黄白と緋色が楽しそうに微笑み合う。
黄白たちの四方から別格の力を感じた。
東から花風と共に青龍が現れた。
西から熱風と共に玄武が現れた。
南から金風と共に朱雀が現れた。
北から寒風と共に白虎が現れた。
「青龍、玄武、朱雀、白虎っ」
黄白が感嘆の声を上げる。
「シロガネに、よろしく伝えてくれるかな」
「うん、青龍」
「気をつけて、ね。ムリ、しては、ダメ。だよ」
「うん、玄武」
「困った子よね。彼のことを頼みましたよ」
「うん、朱雀」
「見ない内に立派になったのぉ。シロガネこと任せたぞ」
「うん、白虎」
四神たちがシロガネの為に心を配る。
神使たちが恭しく祈るように拝礼した。
「さて、白桜の神使たちよ」
黄白が改まって言葉を告げる。
「先ほどの契約はまだ有効だ。白桜はいない。四神にその身を預けるが良い。千草と勿忘は玄武。緋色と青鈍と珊瑚は朱雀。竜胆は青龍、桔梗は白虎だったね」
一拍置いて、黄白が浅葱と山吹を見つめる。「浅葱、山吹。このままでは、振う力が半分以下になる。それは心元ない。出来れば、麒麟の眷属になって欲しい」
「俺はお前の憂いを晴らす。離れていても、この心はお前と共に」
浅葱が真剣な眼差しで口元を一直線にする。
「浅葱、ありがとう」
「俺は俺の役目を果たそう。心配などしてやらんが待っているぞ」
山吹が優しい眼差しで口角を上げた。
「ありがとう、山吹」
「今生の別れじゃないってのに、大袈裟だなぁ。ぼくはすぐ帰ってくると思うよ」
麒麟が呆れた素振りで戯ける。
「それじゃあ。竜胆、桔梗よろしくね」
竜胆と桔梗が、呪を唱えて舞い踊る。この世とあの世の狭間に続く道を繋ぐ。
空に大きな空間が現れた。
ナデシコとスミレが、麒麟に捧ぐ歌うを綺麗な声を響かせた。軽やかな舞を捧げた。
麒麟が黄白を背に乗せて空を翔ける。空間の中へと飛び込んで、空間は形跡を消した。
この世とあの世の狭間。
満天の星空のように美しいけど、寂しさを感じる場所だった。
音が無い。匂いも無い。
前も後ろも上も下も分からない。どこまで果てしない終わりの無い場所だ。
麒麟の背に乗る黄白の姿が、みるみるとコハクの姿になっていく。
麒麟が舞い翔ける。
先の方で光りを見つけた。
「アレだ」
黄白が指を指す方へ、麒麟は速度を速めて目的の所に向かう。
氷のように冷たい水晶の塊の中にシロガネがいた。
目を閉じて眠っている。
コハクが麒麟から降りて水晶に触れた。
「シロガネ、みーつけた」
泣きそうなのを我慢しながらコハクは笑って戯けた。
「僕のおかげなのを忘れないでよね」
「うん、麒麟ありがとう」
「この結界は、かなり手強そうだね」
「水晶の結界は創世神とシロガネが作ったモノだからね」
「ふーん。その姿って事は、呪力も残り少ないって事でしょ。どうするの」
麒麟が心配していない素振りで尋ねる。
黒烏の微かな気配を辿り、シロガネの元へ行くには、黄白よりもコハクの姿の方が効率が良かった。
「心配してくれてありがとう。コハクの姿なら呪力の消耗が少ないからね。それに呪力ならここにある」
コハクが胸に手を当てて、服の中から月の雫のペンダントを出した。
「月の雫ね。コハクなら大丈夫かな。それじゃあ、僕の役目はここまでだ」
「皆んなによろしくね」
「しないよ。どうせすぐ帰って来るんだから」
麒麟はヒィーンと鳴いて翔けて行く姿をコハクは見送った。
静寂が訪れる。
コハクは、水晶の中にいるシロガネに声をかけた。
「シロガネの馬鹿。一人で決めて、一人で実行して、勝手にいなくなるなんて酷いよ。シロガネの嘘つき。一緒ならどんな世界でもいいって言ったけど。こんなの一緒じゃないからね。シロガネなんて嫌いだ……ウソ、きらいじゃないよ。……大好きだよ」
コハクの瞳から雫がポトリと落ちた。
頬に涙が流れて溢れている。
「ずっとひとりで寂しかったんだ。神だって人と同じ心があっていいんだ。黒烏を認めてあげて、白桜のことをもっと知ってあげて。だってどっちも大切な心だから」
コハクが泣きながら創世神の心に訴える。
黒烏と繋がった時に、コハクの中に負の感情と痛みの景色が流れて来た。
黒烏はひとりで泣いていた。
人たちの仕打ちに対してだけではなく、己だけが背負う事になった心に苦しんでいた。
「黒烏にも白桜の景色が見えるよね。楽しいことばかりじゃなかったって分かるかな。それに、ボクの心も見えたよね。寂しくて悲しくて、泣いて怒って羨んだ。とても我がままな心でしょ。ねぇ、シロガネの心も見えるよね。ボクも見てみたいなぁ。だから、シロガネと同化している黒烏がね。羨ましいって思うなんて、可笑しいよね」
コハクがフフッと声を出して笑う。
「ボクはシロガネと一緒にいるよ。それってね。黒烏と白桜も一緒にいるってことなんだ。楽しいことも悲しいことも、皆んなで一緒に共有していく。それってよくないっ」
コハクが、思いの丈を晒して、これからの話しをした。
「その方法を考えてみようと思う」
コハクは、水晶に寄り添うに座った。
「だけど、少しだけ……眠くなって……、あたま、回らない……」
そのまま、コハクは目を閉じた。
現世と常世の狭間では、呪力の補給が出来ない。
だからこそ、封印に適している。
コハクの呪力も残りは限られている。体力は無くなり、生命の危機的な状況と判断した体が眠りに導いた。
頭から二本の角が生えて、銀髪は白と黒の二色の長髪になっている。
「シロガネっ!!」
黄白の声に反応してシロガネが、ゆっくりと微笑んだ。
何か、言葉を口ずさんだ。
水晶が足元からシロガネを包み込んでいく。
あっという間に、シロガネは完全に水晶の中に閉じ込められて、何処かへと消えた。
しばらく黄白は、呆然と立ち竦む。
黄白の結界が解けて、式神たちが黄白に駆け寄る。
黄白が深呼吸をして、目を閉じていた。
聞きたいこと、確認したいことが、たくさんある。しかし、式神たちは静かに見守る。
黄白はシロガネの気配を追っていた。
同調した時の魔は黄白の中に残っている。黒烏の軌跡は辿り、シロガネのいる場所を探る。
この世界の何処にもいない。
外から……微か気配を感じる。
ここは生の現世なら、この外は死の常世。
だけど、創世神が常世に行ける訳がない。
ならば、その狭間。
目を開けて、瞳を輝せて、黄白が高らかに声を上げる。
「麒麟、君の力を貸して」
空から翔ける音が響けば、一陣の風と共に麒麟が現れた。
「やぁ。大変な事になっているね」
「そんなことないよ」
「アイツを追いかけるんだね」
「僕、ひとりでは行けない場所に行ってしまった。でも、君と一緒なら行けるはずだ」
黄白が胸に手を当ててギュッと握る。
ユリはそれに気がつく。
「コハクさま、どうかシロガネさまを、よろしくお願い致します」
ユリが祈るように跪くと、その意図にシロガネの式神たちが気付く。
シロガネの式神たちが皆、膝を降り首を垂れた。
ただ事でない様子に、浅葱と山吹以外の黄白の式神たちが騒つく。
落ち着きつつも険しい顔をしている二人の様子に息を飲む。
「浅葱、山吹。二人から皆んなに話しをしておいて欲しい。僕を信じて、必ず、シロガネを連れて戻る」
いつなのかは明確に出来ない。
でも、戻ることは約束をする。
その誓いに黄白の式神たちが跪き頭を下げる。
「いってらしゃいませ。次にお会い出来る日を楽しみに待っています。あぁ、余り遅いようでしたら、忘れてしまわないように、ご一報頂ければ良いかと思います」
緋色が嬉々として告げる。
「善処しよう」
受けて立った黄白と緋色が楽しそうに微笑み合う。
黄白たちの四方から別格の力を感じた。
東から花風と共に青龍が現れた。
西から熱風と共に玄武が現れた。
南から金風と共に朱雀が現れた。
北から寒風と共に白虎が現れた。
「青龍、玄武、朱雀、白虎っ」
黄白が感嘆の声を上げる。
「シロガネに、よろしく伝えてくれるかな」
「うん、青龍」
「気をつけて、ね。ムリ、しては、ダメ。だよ」
「うん、玄武」
「困った子よね。彼のことを頼みましたよ」
「うん、朱雀」
「見ない内に立派になったのぉ。シロガネこと任せたぞ」
「うん、白虎」
四神たちがシロガネの為に心を配る。
神使たちが恭しく祈るように拝礼した。
「さて、白桜の神使たちよ」
黄白が改まって言葉を告げる。
「先ほどの契約はまだ有効だ。白桜はいない。四神にその身を預けるが良い。千草と勿忘は玄武。緋色と青鈍と珊瑚は朱雀。竜胆は青龍、桔梗は白虎だったね」
一拍置いて、黄白が浅葱と山吹を見つめる。「浅葱、山吹。このままでは、振う力が半分以下になる。それは心元ない。出来れば、麒麟の眷属になって欲しい」
「俺はお前の憂いを晴らす。離れていても、この心はお前と共に」
浅葱が真剣な眼差しで口元を一直線にする。
「浅葱、ありがとう」
「俺は俺の役目を果たそう。心配などしてやらんが待っているぞ」
山吹が優しい眼差しで口角を上げた。
「ありがとう、山吹」
「今生の別れじゃないってのに、大袈裟だなぁ。ぼくはすぐ帰ってくると思うよ」
麒麟が呆れた素振りで戯ける。
「それじゃあ。竜胆、桔梗よろしくね」
竜胆と桔梗が、呪を唱えて舞い踊る。この世とあの世の狭間に続く道を繋ぐ。
空に大きな空間が現れた。
ナデシコとスミレが、麒麟に捧ぐ歌うを綺麗な声を響かせた。軽やかな舞を捧げた。
麒麟が黄白を背に乗せて空を翔ける。空間の中へと飛び込んで、空間は形跡を消した。
この世とあの世の狭間。
満天の星空のように美しいけど、寂しさを感じる場所だった。
音が無い。匂いも無い。
前も後ろも上も下も分からない。どこまで果てしない終わりの無い場所だ。
麒麟の背に乗る黄白の姿が、みるみるとコハクの姿になっていく。
麒麟が舞い翔ける。
先の方で光りを見つけた。
「アレだ」
黄白が指を指す方へ、麒麟は速度を速めて目的の所に向かう。
氷のように冷たい水晶の塊の中にシロガネがいた。
目を閉じて眠っている。
コハクが麒麟から降りて水晶に触れた。
「シロガネ、みーつけた」
泣きそうなのを我慢しながらコハクは笑って戯けた。
「僕のおかげなのを忘れないでよね」
「うん、麒麟ありがとう」
「この結界は、かなり手強そうだね」
「水晶の結界は創世神とシロガネが作ったモノだからね」
「ふーん。その姿って事は、呪力も残り少ないって事でしょ。どうするの」
麒麟が心配していない素振りで尋ねる。
黒烏の微かな気配を辿り、シロガネの元へ行くには、黄白よりもコハクの姿の方が効率が良かった。
「心配してくれてありがとう。コハクの姿なら呪力の消耗が少ないからね。それに呪力ならここにある」
コハクが胸に手を当てて、服の中から月の雫のペンダントを出した。
「月の雫ね。コハクなら大丈夫かな。それじゃあ、僕の役目はここまでだ」
「皆んなによろしくね」
「しないよ。どうせすぐ帰って来るんだから」
麒麟はヒィーンと鳴いて翔けて行く姿をコハクは見送った。
静寂が訪れる。
コハクは、水晶の中にいるシロガネに声をかけた。
「シロガネの馬鹿。一人で決めて、一人で実行して、勝手にいなくなるなんて酷いよ。シロガネの嘘つき。一緒ならどんな世界でもいいって言ったけど。こんなの一緒じゃないからね。シロガネなんて嫌いだ……ウソ、きらいじゃないよ。……大好きだよ」
コハクの瞳から雫がポトリと落ちた。
頬に涙が流れて溢れている。
「ずっとひとりで寂しかったんだ。神だって人と同じ心があっていいんだ。黒烏を認めてあげて、白桜のことをもっと知ってあげて。だってどっちも大切な心だから」
コハクが泣きながら創世神の心に訴える。
黒烏と繋がった時に、コハクの中に負の感情と痛みの景色が流れて来た。
黒烏はひとりで泣いていた。
人たちの仕打ちに対してだけではなく、己だけが背負う事になった心に苦しんでいた。
「黒烏にも白桜の景色が見えるよね。楽しいことばかりじゃなかったって分かるかな。それに、ボクの心も見えたよね。寂しくて悲しくて、泣いて怒って羨んだ。とても我がままな心でしょ。ねぇ、シロガネの心も見えるよね。ボクも見てみたいなぁ。だから、シロガネと同化している黒烏がね。羨ましいって思うなんて、可笑しいよね」
コハクがフフッと声を出して笑う。
「ボクはシロガネと一緒にいるよ。それってね。黒烏と白桜も一緒にいるってことなんだ。楽しいことも悲しいことも、皆んなで一緒に共有していく。それってよくないっ」
コハクが、思いの丈を晒して、これからの話しをした。
「その方法を考えてみようと思う」
コハクは、水晶に寄り添うに座った。
「だけど、少しだけ……眠くなって……、あたま、回らない……」
そのまま、コハクは目を閉じた。
現世と常世の狭間では、呪力の補給が出来ない。
だからこそ、封印に適している。
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