4 / 44
騙されてないよね?
しおりを挟む
翌日、約束の10時ぴったりにレイワ不動産の滝崎はやって来た。
近くのコーヒーショップにはいり、雇用契約はあっさりと完了。給料がよくてびっくりした。
「こんなに頂いていいんですか?」
「それなりに働いていただきますから」
そう言って滝崎はにっこりと営業スマイルをみせた。しかし、そこに親しみやすはなく、どこか作りものめいて見える。
そしてやはり彼はイケメンなようで、周りの席の人たちがちらちらと滝崎に視線を送る。昨晩はもう少し地味な雰囲気があったような気がするが、今日は数倍素敵に見える。昨日はお腹がすきすぎて彼の魅力がわからなかったのだろうかと葵は首をひねる。
「どうかされましたか?」
じっと滝崎を見てしまい。不思議そうに声をかけられた。
「いえ、すみません。何でもありません」
慌てて真っ赤になる。初対面も同然の人に不躾なまねをしてしまった。
契約した仕事内容はレイワ不動産での電話・来客対応、相談・調査業務、それからアパート「レジデンス一ツ木」の管理、排水管清掃の手配。そのほか住民の要望にできうる限りこたえると。
葵が求められているのは雑用で、不動産業務ではないとのことだ。元々不動産は経験がないし、仕事さえあれば内容など拘らない。働かせてもらえるならばそれだけでありがたい。
最後にレジデンス一ツ木で見聞きしたことは社長以外には一切に漏らさない問う項目があった。これは住民のプライバシーを守のためのものだと言う。当然のことだし、派遣会社でも守秘義務に関しての書類はかかされた。
しかし、仕事は一年ごとの更新。つまり契約社員だ。
「なぜ、一年ごとなのですか?」
どうせならずっと雇って欲しい。一年できられたら、また職と住処を探さなくてはならない。
「疲弊される方が多くて、だいたい皆さん更新されませんね。それどころか途中で逃げ出す人もいます」
滝崎が美しい眉間にしわをよせ、苦々しく言う。
「え? そんなに大変なお仕事なのですか?」
一瞬びくりとする。これほどの好条件でやめるとはいったい何があったのだろう。
「いえいえ、たしたことありませんよ。こちらの指示通りに動いて頂くだけです。おそらくあなたには適性があると思いますよ。他に質問はありませんか?」
滝崎が微笑みながら言う。
「そうですね。相談とこの調査業務というのは?」
「住人の相談にのって、場合によっては調査もするということです。最近では、騒音問題とか、水漏れですかね。他に何かご質問は?」
なるほどどと葵は頷いた。きっとクレーム対応の事だろう。だから、これほど給料がよくても疲弊してやめてしまうのか。
「いえ、大丈夫です」
住み込みなどめったにある話ではない。葵は腹をくくった。明日も知れずひもじいい生活をするくらいならば、苦情くらいでやめるつもりはない。
「ではまた質問が出てきたらそのときにでも」
とんとんとコーヒーテーブルの上で滝崎は書類をまとめ、カバンにしまう。
「そうだ。仕事の事ではないのですが、あとひとつだけ」
「はい、なんでしょう」
「占い師は滝崎さんの副業ですか?」
「違います。あれはただのスカウトです」
あっさりと答える。街で占い師を装って、従業員をスカウトするなど随分変わっている。最近はそういう手法がやっているのだろうか? テレビもなく、スマホも手放してしまったのでよくわからない。
「でも、占いすごくあたっていましたよ。それに私本当に住む場所と仕事まで貰えて、本当に助かりました。才能あるんじゃないですか?」
すると滝崎がくすくす笑う。
「そりゃあね。キャリーバッグを一つ持った若い女性が、あの時間の繁華街で、悲壮な顔をしてさまよっていれば、訳ありかなと、だいたいの事情は察しますよ」
滝崎はこくりとカップに残ったコーヒーをこくりと飲みほした。
「え? あれ占いではないのですか?」
「ええ、もちろん、当て推量です」
「そうだったんですか。びっくりした」
といいつつすごく恥ずかしい。そして少しショックだった。それほどひどい状態だったのだろうか。そういえば、電気もガスも止められて、昨日二日ぶりのシャワーにはいった。臭かったかも知れない。
「ああ、それから、あなたは騙されやすい人だから、気を付けた方がよいですよ。仕事は明日からお願いします。今日はゆっくり休んでくださいね」
連絡用にとスマホを貸し出してくれて、食事代と一万円くれた。至れり尽くせりだ。
まさか、騙されていないよね?
近くのコーヒーショップにはいり、雇用契約はあっさりと完了。給料がよくてびっくりした。
「こんなに頂いていいんですか?」
「それなりに働いていただきますから」
そう言って滝崎はにっこりと営業スマイルをみせた。しかし、そこに親しみやすはなく、どこか作りものめいて見える。
そしてやはり彼はイケメンなようで、周りの席の人たちがちらちらと滝崎に視線を送る。昨晩はもう少し地味な雰囲気があったような気がするが、今日は数倍素敵に見える。昨日はお腹がすきすぎて彼の魅力がわからなかったのだろうかと葵は首をひねる。
「どうかされましたか?」
じっと滝崎を見てしまい。不思議そうに声をかけられた。
「いえ、すみません。何でもありません」
慌てて真っ赤になる。初対面も同然の人に不躾なまねをしてしまった。
契約した仕事内容はレイワ不動産での電話・来客対応、相談・調査業務、それからアパート「レジデンス一ツ木」の管理、排水管清掃の手配。そのほか住民の要望にできうる限りこたえると。
葵が求められているのは雑用で、不動産業務ではないとのことだ。元々不動産は経験がないし、仕事さえあれば内容など拘らない。働かせてもらえるならばそれだけでありがたい。
最後にレジデンス一ツ木で見聞きしたことは社長以外には一切に漏らさない問う項目があった。これは住民のプライバシーを守のためのものだと言う。当然のことだし、派遣会社でも守秘義務に関しての書類はかかされた。
しかし、仕事は一年ごとの更新。つまり契約社員だ。
「なぜ、一年ごとなのですか?」
どうせならずっと雇って欲しい。一年できられたら、また職と住処を探さなくてはならない。
「疲弊される方が多くて、だいたい皆さん更新されませんね。それどころか途中で逃げ出す人もいます」
滝崎が美しい眉間にしわをよせ、苦々しく言う。
「え? そんなに大変なお仕事なのですか?」
一瞬びくりとする。これほどの好条件でやめるとはいったい何があったのだろう。
「いえいえ、たしたことありませんよ。こちらの指示通りに動いて頂くだけです。おそらくあなたには適性があると思いますよ。他に質問はありませんか?」
滝崎が微笑みながら言う。
「そうですね。相談とこの調査業務というのは?」
「住人の相談にのって、場合によっては調査もするということです。最近では、騒音問題とか、水漏れですかね。他に何かご質問は?」
なるほどどと葵は頷いた。きっとクレーム対応の事だろう。だから、これほど給料がよくても疲弊してやめてしまうのか。
「いえ、大丈夫です」
住み込みなどめったにある話ではない。葵は腹をくくった。明日も知れずひもじいい生活をするくらいならば、苦情くらいでやめるつもりはない。
「ではまた質問が出てきたらそのときにでも」
とんとんとコーヒーテーブルの上で滝崎は書類をまとめ、カバンにしまう。
「そうだ。仕事の事ではないのですが、あとひとつだけ」
「はい、なんでしょう」
「占い師は滝崎さんの副業ですか?」
「違います。あれはただのスカウトです」
あっさりと答える。街で占い師を装って、従業員をスカウトするなど随分変わっている。最近はそういう手法がやっているのだろうか? テレビもなく、スマホも手放してしまったのでよくわからない。
「でも、占いすごくあたっていましたよ。それに私本当に住む場所と仕事まで貰えて、本当に助かりました。才能あるんじゃないですか?」
すると滝崎がくすくす笑う。
「そりゃあね。キャリーバッグを一つ持った若い女性が、あの時間の繁華街で、悲壮な顔をしてさまよっていれば、訳ありかなと、だいたいの事情は察しますよ」
滝崎はこくりとカップに残ったコーヒーをこくりと飲みほした。
「え? あれ占いではないのですか?」
「ええ、もちろん、当て推量です」
「そうだったんですか。びっくりした」
といいつつすごく恥ずかしい。そして少しショックだった。それほどひどい状態だったのだろうか。そういえば、電気もガスも止められて、昨日二日ぶりのシャワーにはいった。臭かったかも知れない。
「ああ、それから、あなたは騙されやすい人だから、気を付けた方がよいですよ。仕事は明日からお願いします。今日はゆっくり休んでくださいね」
連絡用にとスマホを貸し出してくれて、食事代と一万円くれた。至れり尽くせりだ。
まさか、騙されていないよね?
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする
九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる