職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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騙されてないよね?

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 翌日、約束の10時ぴったりにレイワ不動産の滝崎はやって来た。
 近くのコーヒーショップにはいり、雇用契約はあっさりと完了。給料がよくてびっくりした。

「こんなに頂いていいんですか?」
「それなりに働いていただきますから」

 そう言って滝崎はにっこりと営業スマイルをみせた。しかし、そこに親しみやすはなく、どこか作りものめいて見える。

 そしてやはり彼はイケメンなようで、周りの席の人たちがちらちらと滝崎に視線を送る。昨晩はもう少し地味な雰囲気があったような気がするが、今日は数倍素敵に見える。昨日はお腹がすきすぎて彼の魅力がわからなかったのだろうかと葵は首をひねる。

「どうかされましたか?」

 じっと滝崎を見てしまい。不思議そうに声をかけられた。

「いえ、すみません。何でもありません」

 慌てて真っ赤になる。初対面も同然の人に不躾なまねをしてしまった。


 契約した仕事内容はレイワ不動産での電話・来客対応、相談・調査業務、それからアパート「レジデンス一ツ木」の管理、排水管清掃の手配。そのほか住民の要望にできうる限りこたえると。

 葵が求められているのは雑用で、不動産業務ではないとのことだ。元々不動産は経験がないし、仕事さえあれば内容など拘らない。働かせてもらえるならばそれだけでありがたい。

 最後にレジデンス一ツ木で見聞きしたことは社長以外には一切に漏らさない問う項目があった。これは住民のプライバシーを守のためのものだと言う。当然のことだし、派遣会社でも守秘義務に関しての書類はかかされた。


 しかし、仕事は一年ごとの更新。つまり契約社員だ。

「なぜ、一年ごとなのですか?」

 どうせならずっと雇って欲しい。一年できられたら、また職と住処を探さなくてはならない。

「疲弊される方が多くて、だいたい皆さん更新されませんね。それどころか途中で逃げ出す人もいます」

 滝崎が美しい眉間にしわをよせ、苦々しく言う。 

「え? そんなに大変なお仕事なのですか?」

 一瞬びくりとする。これほどの好条件でやめるとはいったい何があったのだろう。

「いえいえ、たしたことありませんよ。こちらの指示通りに動いて頂くだけです。おそらくあなたには適性があると思いますよ。他に質問はありませんか?」

 滝崎が微笑みながら言う。

「そうですね。相談とこの調査業務というのは?」
「住人の相談にのって、場合によっては調査もするということです。最近では、騒音問題とか、水漏れですかね。他に何かご質問は?」

 なるほどどと葵は頷いた。きっとクレーム対応の事だろう。だから、これほど給料がよくても疲弊してやめてしまうのか。

「いえ、大丈夫です」

 住み込みなどめったにある話ではない。葵は腹をくくった。明日も知れずひもじいい生活をするくらいならば、苦情くらいでやめるつもりはない。

「ではまた質問が出てきたらそのときにでも」

 とんとんとコーヒーテーブルの上で滝崎は書類をまとめ、カバンにしまう。

「そうだ。仕事の事ではないのですが、あとひとつだけ」
「はい、なんでしょう」
「占い師は滝崎さんの副業ですか?」
「違います。あれはただのスカウトです」

 あっさりと答える。街で占い師を装って、従業員をスカウトするなど随分変わっている。最近はそういう手法がやっているのだろうか? テレビもなく、スマホも手放してしまったのでよくわからない。

「でも、占いすごくあたっていましたよ。それに私本当に住む場所と仕事まで貰えて、本当に助かりました。才能あるんじゃないですか?」

すると滝崎がくすくす笑う。

「そりゃあね。キャリーバッグを一つ持った若い女性が、あの時間の繁華街で、悲壮な顔をしてさまよっていれば、訳ありかなと、だいたいの事情は察しますよ」

 滝崎はこくりとカップに残ったコーヒーをこくりと飲みほした。

「え? あれ占いではないのですか?」
「ええ、もちろん、当て推量です」
「そうだったんですか。びっくりした」

といいつつすごく恥ずかしい。そして少しショックだった。それほどひどい状態だったのだろうか。そういえば、電気もガスも止められて、昨日二日ぶりのシャワーにはいった。臭かったかも知れない。

「ああ、それから、あなたは騙されやすい人だから、気を付けた方がよいですよ。仕事は明日からお願いします。今日はゆっくり休んでくださいね」

 連絡用にとスマホを貸し出してくれて、食事代と一万円くれた。至れり尽くせりだ。

 まさか、騙されていないよね?

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