職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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新生活スタート1

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 そして翌朝に連れていかれたのが、アパート「レジデンス一ツ木」。アパートいうよりも小さなマンションといった具合で、築五十年近いと言う割には良く手入れされている小奇麗な建物だ。
 
 二階建てで現在、四つの部屋が埋まっているという。一階は入口管理人室と賃貸の部屋が三つそのうち二つはうまっている。そして、2階は4部屋ありそうち3部屋うまっていた。

 一階入り口部分にある管理人室に葵が新しく入居する。
 受付にはチャイムがあり、常時ここに座っている必要はなく、ようがあれば住民がチャイムを押すからと教えられた。


 受付にはガラス戸の前にテーブルと椅子が一脚あり。日報やそのほかの書類は引き出しに入っている。受付の奥にある扉を開けると、そこはもう葵の住処だ。

 洋室二間にダイニングキッチン、奥の洋間にはウォークインクローゼットが付いていて驚いた。新しくタンスを買う必要もなさそう。それ以前に服がないのだが。まずは冬用の温かいコートがほしいとおもっていたら、支度資金として10万円くれた。
 至れり尽くせりで、こわいくらいだ。

 不思議なのはこれだけ設備が整っているのにバスタブがなく、シャワーのみ設置されていることだ。しかし、不満はない。風呂に入りたければ、近くにスパかサウナをさがしてはいればよいのだから。

「そうそう、風呂はこの地下にありますから、住人の方と一緒にお使いください」
と瀧崎。
「え? 地下にお風呂があるのですか?」
「はい、外湯なので、ときおり、アパートの住人以外の方も入ることはありますが、気にせずに。風呂に関してはあなたの管理の範疇ではありませんので。風呂への出入りは自由ですが、水原さんがここの地下を管理する必要はありません」

「はあ」

 外湯って、銭湯のようなもの? 不思議な話があるものだ。外湯があるなど看板も何もない。小さなものなのだろうか。

「ああ、それから、風呂にはペンキ絵があって、それがなかなかリアルでして、時々絵が変わります。くれぐれも触れたりそばによったりしないでくださいね」
「ペンキ絵って、昭和の銭湯にあった富士山とかですか?」

 それならば、以前何かのテレビ番組で見たことがある。「ふふふ」と滝崎が笑う。

「触ると汚れますし、汚れはなかなか落ちません。折角風呂に入るのに汚れるのはいやでしょう」
「もちろんです」

 子供ではあるまいし、ペンキ絵に触るなどそんなことはしない。




 キャリーバッグを管理人室に置くと、葵はそのままレイワ不動産に連れていかれた。「通勤経路を覚えた方がいいでしょう」と言われ、電車で一駅移動した。

 駅から歩いて徒歩5分。レイワ不動産は古い雑居ビルの三階にあった。小さな不動産屋で、従業員は四人、一番年かさで部長の勝田恒夫さん五十代だろうか、妻帯者でお子さんはもう巣立っているという。
それから主任の山本彰浩さん、今年三十になるといっていた。彼には綺麗な奥さんと可愛らしい息子さんがいる。写真を見せてくれた。

 それから、女性社員の水町亜子。年齢は言わないのでわからないが、多分二十代半ばくらいだろうか。気が強そうで派手な感じの美人だ。
 初対面の葵の事を上から下まで値踏みするように見る。上手くやって行けるのか少し不安を感じた。しかし、後がないので、頑張るしかない。

 小さな会社とはいえ、ちゃんと更衣室がありロッカーもある。女子ロッカーは水町亜子が案内してくれた。ロッカーを開けると制服がかかっていて、着るも着ないも自由らしい。

「でも今日のあなたの服装は着替えた方がいいんじゃない?」

 確かにジーンズにフリース姿だ。それにもともと手持ちの服も少ないので、ありがたく制服に着替えさせて貰うことにした。制服は白シャツに紺のチェックのベストと紺色の無地の膝下丈のスカートだ。



 最後に外回りから戻ってきた20代半ばの斎藤圭太という男性社員を紹介された。ここでは彼が一番若く新しい社員だそうだ。
 見た目はさわやかな感じのサラリーマン風だけれど、地下アイドルオタク。初対面の葵に自分推しを熱く語り、推しと同じ色の靴紐を自慢する。それを冷たい目で見る水町亜子。人間関係が少し不安だ。

 でも大丈夫、ご飯が食べられればそれで幸せ。葵にとってはそれがすべてだ。



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